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虞美人草 五 (2)

时间: 2021-03-29    进入日语论坛
核心提示:「ちょうどおれのようだな。だから、おれは寺へ這入(はい)ると好い気持ちになるんだろう」「ハハハそうかも知れない」「して見る
(单词翻译:双击或拖选)
「ちょうどおれのようだな。だから、おれは寺へ這入(はい)ると好い気持ちになるんだろう」
「ハハハそうかも知れない」
「して見ると夢窓国師がおれに似ているんで、おれが夢窓国師に似ているんじゃない」
「どうでも、好いさ。――まあ、ちっと休もうか」と甲野さんは蓮池(れんち)に渡した石橋(せっきょう)欄干(らんかん)に尻をかける。欄干の腰には大きな三階松(さんがいまつ)が三寸の厚さを()かして水に臨んでいる。石には(こけ)()が薄青く吹き出して、灰を交えた(むらさき)の質に深く食い込む下に、枯蓮(かれはす)()(じく)がすいすいと、去年の(しも)弥生(やよい)の中に突き出している。
 宗近君は燐寸(マッチ)を出して、煙草(たばこ)を出して、しゅっと云わせた燃え残りを池の水に棄てる。
「夢窓国師はそんな悪戯(いたずら)はしなかった」と甲野さんは、の先に、両手で(つえ)(かしら)を丁寧に抑えている。
「それだけ、おれより下等なんだ。ちっと宗近国師の真似(まね)をするが好い」
「君は国師より馬賊になる方がよかろう」
「外交官の馬賊は少し変だから、まあ正々堂々と北京(ペキン)へ駐在する事にするよ」
「東洋専門の外交官かい」
「東洋の経綸さ。ハハハハ。おれのようなのはとうてい西洋には向きそうもないね。どうだろう、それとも修業したら、君の阿爺(おやじ)ぐらいにはなれるだろうか」
「阿爺のように外国で死なれちゃ大変だ」
「なに、あとは君に頼むから構わない」
「いい迷惑だね」
「こっちだってただ死ぬんじゃない、天下国家のために死ぬんだから、そのくらいな事はしてもよかろう」
「こっちは自分一人を持て余しているくらいだ」
「元来、君は我儘(わがまま)過ぎるよ。日本と云う考が君の頭のなかにあるかい」
 今までは真面目の上に冗談(じょうだん)の雲がかかっていた。冗談の雲はこの時ようやく晴れて、下から真面目が浮き上がって来る。
「君は日本の運命を考えた事があるのか」と甲野さんは、杖の先に力を入れて、持たした体を少し(うし)ろへ開いた。

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