返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 夏目漱石 » 正文

虞美人草 八 (4)

时间: 2021-04-10    进入日语论坛
核心提示:「宗近と云えば、一(はじめ)もよっぽど剽軽者(ひょうきんもの)だね。学問も何にも出来ない癖に大きな事ばかり云って、――あれで
(单词翻译:双击或拖选)
「宗近と云えば、(はじめ)もよっぽど剽軽者(ひょうきんもの)だね。学問も何にも出来ない癖に大きな事ばかり云って、――あれで当人は立派にえらい気なんだよ」
 (うまや)鳥屋(とや)といっしょにあった。牝鶏(めんどり)の馬を評する語に、――あれは鶏鳴(とき)をつくる事も、鶏卵(たまご)を生む事も知らぬとあったそうだ。もっともである。
「外交官の試験に落第したって、ちっとも恥ずかしがらないんですよ。普通(なみ)のものなら、もう少し奮発する訳ですがねえ」
「鉄砲玉だよ」
 意味は分からない。ただ思い切った評である。藤尾は(なめ)らかな(ほお)に波を打たして、にやりと笑った。藤尾は詩を解する女である。駄菓子の鉄砲玉は黒砂糖を丸めて造る。砲兵工廠(ほうへいこうしょう)の鉄砲玉は鉛を()かして()る。いずれにしても鉄砲玉は鉄砲玉である。そうして母は()くまでも真面目(まじめ)である。母には娘の笑った意味が分からない。
「御前はあの人をどう思ってるの」
 娘の笑は、(はし)なくも母の疑問を起す。子を知るは親に()かずと云う。それは違っている。御互に喰い違っておらぬ世界の事は親といえども(から)天竺(てんじく)である。
「どう思ってるって……別にどうも思ってやしません」
 母は鋭どき(まゆ)の下から、娘を(きっ)と見た。意味は藤尾にちゃんと分っている。相手を知るものは騒がず。藤尾はわざと落ちつき払って母の切って出るのを待つ。掛引は親子の間にもある。
「御前あすこへ行く気があるのかい」
「宗近へですか」と聞き直す。念を押すのは満を引いて始めて放つための下拵(したごしらえ)と見える。
「ああ」と母は軽く答えた。
「いやですわ」
「いやかい」
「いやかいって、……あんな趣味のない人」と藤尾はすぱりと句を切った。(たけのこ)を輪切りにすると、こんな風になる。(はり)のある(まゆ)に風を起して、これぎりでたくさんだと締切った口元になお(こも)る何物かがちょっと(はため)いてすぐ消えた。母は相槌(あいづち)を打つ。
「あんな見込のない人は、(わたし)も好かない」

轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

热门TAG: