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虞美人草 八 (9)

时间: 2021-04-10    进入日语论坛
核心提示: ただ老人だけは太平である。天下の興廃は叡山一刹(いっさつ)の指揮によって、夜来(やらい)、日来(にちらい)に面目を新たにする
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 ただ老人だけは太平である。天下の興廃は叡山一刹(いっさつ)の指揮によって、夜来(やらい)日来(にちらい)に面目を新たにするものじゃと思い()めたように、として叡山を説く。説くは(もと)より青年に対する親切から出る。ただ青年は少々迷惑である。
「不便だって、修業のためにわざわざ、ああ云う山を(えら)んで開くのさ。今の大学などはあまり便利な所にあるから、みんな贅沢(ぜいたく)になって行かん。書生の癖に西洋菓子だの、ホイスキーだのと云って……」
 宗近君は妙な顔をして甲野さんを見た。甲野さんは存外真面目(まじめ)である。
阿爺(おとっさん)叡山の坊主は夜十一時頃から坂本まで蕎麦(そば)を食いに行くそうですよ」
「アハハハ(まさか)
「なに本当ですよ。ねえ甲野さん。――いくら不便だって食いたいものは食いたいですからね」
「それはのらくら坊主だろう」
「すると僕らはのらくら書生かな」
「御前達はのらくら以上だ」
「僕らは以上でもいいが――坂本までは山道二里ばかりありますぜ」
「あるだろう、そのくらいは」
「それを夜の十一時から下りて、蕎麦を食って、それからまた登るんですからね」
「だから、どうなんだい」
到底(とても)のらくらじゃ出来ない仕事ですよ」
「アハハハハ」と老人は大きな腹を()り出して笑った。洋灯(ランプ)(かさ)喫驚(びっくり)するくらいな声である。
「あれでも昔しは真面目な坊主がいたものでしょうか」と今度は甲野さんがふと思い出したような様子で聞いて見る。
「それは今でもあるよ。真面目なものが世の中に少ないごとく、僧侶(そうりょ)にも多くはないが――しかし今だって全く無い事はない。何しろ古い寺だからね。あれは始めは一乗止観院(いちじょうしかんいん)と云って、延暦寺となったのはだいぶ(あと)の事だ。その時分から妙な(ぎょう)があって、十二年間山へ(こも)り切りに籠るんだそうだがね」
「蕎麦どころじゃありませんね」
「どうして。――何しろ一度も下山しないんだから」
「そう山の中で年ばかり取ってどうする了見(りょうけん)かな」
と宗近君が今度は独語(ひとりごと)のように云う。

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