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虞美人草 九 (3)

时间: 2021-04-10    进入日语论坛
核心提示: 家は小野さんが孤堂(こどう)先生のために周旋したに相違ない。しかし極(きわ)めて下卑(げび)ている。小野さんは心のうちに厭(
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 家は小野さんが孤堂(こどう)先生のために周旋したに相違ない。しかし(きわ)めて下卑(げび)ている。小野さんは心のうちに(いや)住居(すまい)だと思った。どうせ家を持つならばと思った。袖垣(そでがき)辛夷(こぶし)を添わせて、松苔(まつごけ)葉蘭(はらん)の影に畳む上に、切り立ての手拭(てぬぐい)が春風に()らつくような所に住んで見たい。――藤尾はあの家を貰うとか聞いた。
御蔭(おかげ)さまで、好い(うち)が手に入りまして……」と誇る事を知らぬ小夜子は云う。本当に好い家と心得ているなら(なさ)けない。ある人に奴鰻(やっこうなぎ)(おご)ったら、御蔭様で始めて(うま)い鰻を食べましてと礼を云った。奢った男はそれより以来この人を軽蔑(けいべつ)したそうである。
 いじらしいのと見縊(みくび)るのはある場合において一致する。小野さんはたしかに真面目に礼を云った小夜子を見縊った。しかしそのうちに露いじらしいところがあるとは気がつかなかった。紫が(たた)ったからである。祟があると眼玉が三角になる。
「もっと好い(うち)でないと御気に入るまいと思って、方々尋ねて見たんですが、あいにく恰好(かっこう)なのがなくって……」
と云い()けると、小夜子は、すぐ、
「いえこれで結構ですわ。父も喜んでおります」と小野さんの言葉を打ち消した。小野さんは吝嗇(けち)な事を云うと思った。小夜子は知らぬ。
 細い(おもて)をちょっと奥へ引いて、上眼に相手の様子を見る。どうしても五年前とは変っている。――眼鏡は金に変っている。久留米絣(くるめがすり)は背広に変っている。五分刈(ごぶがり)光沢(つや)のある毛に変っている。――(ひげ)は一躍して紳士の域に(のぼ)る。小野さんは、いつの間にやら黒いものを蓄えている。もとの書生ではない。(えり)(おろ)し立てである。飾りには留針(ピン)さえ肩を動かすたびに光る。鼠の勝った(ひん)の好い胴衣(チョッキ)隠袋(かくし)には――恩賜の時計が這入(はい)っている。この上に金時計をとは、小さき胸の小夜子が夢にだも知るはずがない。小野さんは変っている。

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