返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 夏目漱石 » 正文

虞美人草 十 (9)

时间: 2021-04-10    进入日语论坛
核心提示:「阿爺(おとっさん)のものばかり縫って、ちっとも兄さんには縫ってくれないね。狐の袖無(ちゃんちゃん)以後御見限(おみかぎ)りだ
(单词翻译:双击或拖选)
阿爺(おとっさん)のものばかり縫って、ちっとも兄さんには縫ってくれないね。狐の袖無(ちゃんちゃん)以後御見限(おみかぎ)りだね」
「あらいやだ。あんな(うそ)ばかり。今着ていらっしゃるのも縫って上げたんだわ」
「これかい。これはもう駄目だ。こらこの通り」
「おや、ひどい襟垢(えりあか)だ事、こないだ着たばかりだのに――兄さんは(あぶら)が多過ぎるんですよ」
「何が多過ぎても、もう駄目だよ」
「じゃこれを縫い上げたら、すぐ縫って上げましょう」
「新らしいんだろうね」
「ええ、洗って張ったの」
「あの親父(おとっさん)の拝領ものか。ハハハハ。時に糸公不思議な事があるがね」
「何が」
「阿爺は年寄の癖に新らしいものばかり着て、年の若いおれには御古(おふる)ばかり着せたがるのは、少し妙だよ。この調子で行くとしまいには自分でパナマの帽子を被って、おれには物置にある陣笠(じんがさ)をかぶれと云うかも知れない」
「ホホホホ兄さんは随分口が達者ね」
「達者なのは口だけか。可哀想(かわいそう)に」
「まだ、あるのよ」
 宗近君は返事をやめて、欄干(らんかん)隙間(すきま)から庭前(にわさき)の植込を頬杖(ほおづえ)に見下している。
「まだあるのよ。一寸(ちょいと)」と針を離れぬ糸子の眼は、左の手につんと(つま)んだ合せ目を、見る()()けて来て、いざと云う指先を白くふっくらと放した時、ようやく兄の顔を見る。
「まだあるのよ。兄さん」
「何だい。口だけでたくさんだよ」
「だって、まだあるんですもの」と針の針孔(めど)障子(しょうじ)へ向けて、可愛(かわい)らしい二重瞼(ふたえまぶた)を細くする。宗近君は依然として長閑(のどか)な心を頬杖に託して庭を(なが)めている。
「云って見ましょうか」
「う。うん」
 下顎(したあご)は頬杖で動かす事が出来ない。返事は咽喉(のど)から鼻へ抜ける。
「あし。分ったでしょう」
「う。うん」

轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

热门TAG: