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虞美人草 十一 (2)

时间: 2021-04-16    进入日语论坛
核心提示: 岡は夜(よ)を掠(から)めて本郷から起る。高き台を朧(おぼろ)に浮かして幅十町を東へなだれる下(お)り口(くち)は、根津に、弥生
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 岡は()(から)めて本郷から起る。高き台を(おぼろ)に浮かして幅十町を東へなだれる()(くち)は、根津に、弥生(やよい)に、切り通しに、驚ろかんとするものを(ます)(はか)って下谷(したや)へ通す。踏み合う黒い影はことごとく(いけ)(はた)にあつまる。――文明の人ほど驚ろきたがるものはない。
 松高くして花を隠さず、枝の隙間(すきま)に夜を照らす宵重(よいかさ)なりて、雨も降り風も吹く。始めは一片(ひとひら)と落ち、次には二片と散る。次には数うるひまにただはらはらと散る。この間中(あいだじゅう)は見るからに、万紅(ばんこう)を大地に吹いて、吹かれたるものの地に届かざるうちに、(こずえ)から後を追うて落ちて来た。忙がしい吹雪(ふぶき)はいつか尽きて、今は残る樹頭に嵐もようやく(おさま)った。星ならずして夜を()る花の影は見えぬ。同時にイルミネーションは()いた。
「あら」と糸子が云う。
「夜の世界は昼の世界より美しい事」と藤尾が云う。
 (すすき)の穂を丸く曲げて、左右から重なる金の(きらめ)く中に織り出した半月(はんげつ)の数は分からず。幅広に腰を(おお)う藤尾の帯を一尺隔てて宗近(むねちか)君と甲野(こうの)さんが立っている。
「これは奇観だ。ざっと竜宮だね」と宗近君が云う。
糸子(いとこ)さん、驚いたようですね」と甲野さんは帽子を(まゆ)深く(かぶ)って立つ。
 糸子は振り返る。夜の笑は水の中で詩を吟ずるようなものである。思う所へは届かぬかも知れぬ。振り返る人の(きぬ)の色は黄に似て夜を(あざむ)くを、黒いものが幾筋も(たて)に刻んでいる。
「驚いたかい」と今度は兄が聞き直す。
貴所方(あなたがた)は」と糸子を差し置いて藤尾(ふじお)が振り返る。黒い髪の陰から(さっ)と白い顔が()す。頬の端は遠い火光(ひかり)を受けてほの赤い。
「僕は三遍目だから驚ろかない」と宗近君は顔一面を明かるい方へ向けて云う。
「驚くうちは(たのしみ)があるもんだ。女は楽が多くて仕合せだね」と甲野さんは長い体躯(からだ)真直(ますぐ)に立てたまま藤尾を見下(みおろ)した。
 黒い眼が夜を射て動く。
「あれが台湾館なの」と何気なき糸子は水を横切って指を()す。
「あの一番右の前へ出ているのがそうだ。あれが一番善く出来ている。ねえ甲野さん」

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