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虞美人草 十一 (6)

时间: 2021-04-17    进入日语论坛
核心提示:「阿爺(おとうさん)、大丈夫」と後(うしろ)から呼ぶ。「ああ大丈夫だよ」と知らぬ人を間に挟んだまま一軒置いて返事がある。「何
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阿爺(おとうさん)、大丈夫」と(うしろ)から呼ぶ。
「ああ大丈夫だよ」と知らぬ人を間に挟んだまま一軒置いて返事がある。
「何だか危なくって……」
「なに自然(じねん)に押して行けば世話はない」と(はさ)まった人をやり過ごして、苦しいところを娘といっしょになる。
「押されるばかりで、ちっとも押せやしないわ」と娘は落ちつかぬながら、薄い片頬(かたほ)(えみ)を見せる。
「押さなくってもいいから、押されるだけ押されるさ」と云ううち二人は前へ出る。巡査の提灯(ちょうちん)が孤堂先生の黒い帽子を(かす)めて動いた。
「小野はどうしたかね」
「あすこよ」と眼元で()す。手を出せば人の肩で(さえ)ぎられる。
「どこに」と孤堂先生は足を(そろ)える暇もなく、そのまま日和下駄(ひよりげた)の前歯を傾けて背延(せいのび)をする。先生の腰が中心を失いかけたところを、後ろから気の早い文明の民が()しかかる。先生はのめった。危うく倒れるところを、前に立つ文明の民の背中でようやく喰い留める。文明の民はどこまでも前へ出たがる代りに、背中で人を(たす)ける事を拒まぬ親切な人間である。
 文明の波は(おのず)から動いて(たより)のない親と子を弁天の堂近く押し出して来る。長い橋が切れて、渡る人の足が土へ着くや否や波は急に左右に散って、黒い頭が勝手な方へ(くず)れ出す。二人はようやく胸が広くなったような心持になる。
 暗い底に(あい)を含む()く春の夜を()かして見ると、花が見える。雨に風に散り(おく)れて、八重に咲く遅き()を、夜に()けん花の願を、人の世の(ともしび)が下から朗かに照らしている。(おぼろ)薄紅(うすくれない)螺鈿(らでん)()る。鐫ると云うと硬過(かたすぎ)る。浮くと云えば空を離れる。この(よい)とこの花をどう形容したらよかろうかと考えながら、小野さんは二人を待ち合せている。
「どうも(おそ)ろしい人だね」と追いついた孤堂先生が云う。怖ろしいとは、本当に怖ろしい意味でかつ普通に怖ろしい意味である。
「随分出ます」
「早く(うち)へ帰りたくなった。どうも(おそろ)しい人だ。どこからこんなに出て来るのかね」
 小野さんはにやにやと笑った。蜘蛛(くも)の子のように暗い森を(おお)うて至る文明の民は皆自分の同類である。
「さすが東京だね。まさか、こんなじゃ無かろうと思っていた。怖しい所だ」

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