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虞美人草 十一 (4)

时间: 2021-04-16    进入日语论坛
核心提示:「あの横に見えるのは何」と糸子が聞く。「あれが外国館。ちょうど正面に見える。ここから見るのが一番奇麗だ。あの左にある高い
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「あの横に見えるのは何」と糸子が聞く。
「あれが外国館。ちょうど正面に見える。ここから見るのが一番奇麗だ。あの左にある高い丸い屋根が三菱館。――あの恰好(かっこう)が好い。何と形容するかな」と宗近君はちょっと躊躇(ちゅうちょ)した。
「あの真中だけが赤いのね」と妹が云う。
(かんむり)紅玉(ルビー)()めたようだ事」と藤尾が云う。
「なるほど、天賞堂の広告見たようだ」と宗近君は知らぬ顔で俗にしてしまう。甲野さんは軽く笑って仰向(あおむ)いた。
 空は低い。薄黒く大地に(せま)る夜の中途に、煮え切らぬ星が路頭に迷って放下(ぶらさ)がっている。柱と(つら)なり、甍と積む万点の(さか)しまに天を(ひた)して、寝とぼけた星の(まなこ)を射る。星の眼は熱い。
「空が()げるようだ。――羅馬(ロウマ)法王の冠かも知れない」と甲野さんの視線は谷中(やなか)から上野の森へかけて大いなる(けん)(えが)いた。
「羅馬法王の冠か。藤尾さん、羅馬法王の冠はどうだい。天賞堂の広告の方が好さそうだがね」
「いずれでも……」と藤尾は澄ましている。
「いずれでも差支(さしつかえ)なしか。とにかく女王(クイーン)の冠じゃない。ねえ甲野さん」
「何とも云えない。クレオパトラはあんな冠をかぶっている」
「どうして御存じなの」と藤尾は鋭どく聞いた。
「御前の持っている本に絵がかいてあるじゃないか」
「空より水の方が奇麗(きれい)よ」と糸子が突然注意した。対話はクレオパトラを離れる。
 昼でも死んでいる水は、風を含まぬ夜の影に()し付けられて、見渡す限り平かである。動かぬはいつの事からか。静かなる水は知るまい。百年の昔に掘った池ならば、百年以来動かぬ、五十年の昔ならば、五十年以来動かぬとのみ思われる水底(みなそこ)から、腐った(はす)の根がそろそろ青い()を吹きかけている。泥から生れた(こい)(ふな)が、(やみ)を忍んで(ゆる)やかにを働かしている。イルミネーションは高い影を(さかし)まにして、二丁(あまり)の岸を、尺も残さず真赤(まっか)になってこの静かなる水の上に倒れ込む。黒い水は死につつもぱっと色を()す。泥に(ひそ)む魚の(ひれ)は燃える。

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