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虞美人草 十四 (16)

时间: 2021-04-20    进入日语论坛
核心提示: 先生は襦袢(じゅばん)の袖(そで)から手を抜いて、素肌の懐(ふところ)に肘(ひじ)まで収めたまま、二三度肩をゆすって「どうも、
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 先生は襦袢(じゅばん)(そで)から手を抜いて、素肌の(ふところ)(ひじ)まで収めたまま、二三度肩をゆすって
「どうも、ぞくぞくする」と細長い(ひげ)(えり)のなかに(うず)めた。
御寝(おやす)みなさい。起きていらっしゃると毒ですから。私はもう御暇(おいとま)をします」
「なに、まあ御話し。もう小夜が帰る時分だから。寝たければ(わたし)の方で御免蒙(ごめんこうむ)って寝る。それにまだ話も残っているから」
 先生は急に胸の中から、手を出して(ひざ)の上へ乗せて、双方を一度に打った。
「まあ(ゆっ)りするが好い。今暮れたばかりだ」
 迷惑のうちにも小野さんはさすが気の毒に思った。これほどまでに自分を引き留めたいのは、ただ当年の可懐味(なつかしみ)や、一夕(いっせき)無聊(ぶりょう)ではない。よくよく行く先が案じられて、亡き後の安心を片時(へんじ)も早く、脈の打つ手に握りたいからであろう。
 実は夕食(めし)もまだ食わない。いれば耳を傾けたくない話が出る。腰だけはとうから宙に浮いている。しかし先生の様子を見ると無理に洋袴(ズボン)の膝を(のば)す訳にもいかない。老人は病を(つと)めて、わがために強いて元気をつけている。親しみやすき蒲団(ふとん)は片寄せられて、穴ばかりになった。温気(ぬくもり)は昔の事である。
「時に小夜の事だがね」と先生は洋灯(ランプ)()を見ながら云う。五分心(ごぶじん)蒲鉾形(かまぼこなり)(とも)火屋(ほや)のなかは、(つぼ)(みつ)る油を、物言わず吸い上げて、穏かなの舌が、暮れたばかりの春を、動かず守る。人(わび)(さみ)しき(よい)を、ただ一点の(あか)きに(つぐの)う。燈灯(ともしび)希望(のぞみ)の影を招く。
「時に小夜の事だがね。知っての通りああ云う内気な性質(たち)ではあるし、今の女学生のようにハイカラな教育もないからとうてい気にもいるまいが、……」まで来て先生は洋灯から眼を放した。眼は小野さんの方に向う。何とか取り合わなければならない。
「いいえ――どうして――」と受けて、ちょっと句を切って見せたが、先生は依然として、こっちの顔から(ひとみ)を動かさない。その上口を()かずに何だか待っている。
「気にいらんなんて――そんな事が――あるはずがないですが」とぽつぽつに答える。ようやくに納得(なっとく)した先生は先へ進む。
「あれも不憫(ふびん)だからね」

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