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虞美人草 十五 (1)

时间: 2021-05-05    进入日语论坛
核心提示: 部屋は南を向く。仏蘭西式(フランスしき)の窓は床(ゆか)を去る事五寸にして、すぐ硝子(ガラス)となる。明(あ)け放てば日が這入
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 部屋は南を向く。仏蘭西式(フランスしき)の窓は(ゆか)を去る事五寸にして、すぐ硝子(ガラス)となる。()け放てば日が這入(はい)る。(あたた)かい風が這入る。日は椅子(いす)の足で留まる。風は留まる事を知らぬ故、容赦なく天井(てんじょう)まで吹く。窓掛の裏まで渡る。からりとして朗らかな書斎になる。
 仏蘭西窓を右に避けて一脚の机を()える。蒲鉾形(かまぼこなり)に引戸を(おろ)せば、上から(じょう)がかかる。明ければ、緑の羅紗(らしゃ)を張り詰めた真中を、斜めに低く手元へ(けず)って、背を平らかに、書を開くべき便宜(たより)とする。下は左右を銀金具の抽出(ひきだし)に畳み卸してその四つ目が床に着く。床は(くす)の木の寄木(よせき)仮漆(ヴァーニッシ)を掛けて、礼に(かな)わぬ靴の裏を、ともすれば危からしめんと、てらてらする。
 そのほかに洋卓(テエブル)がある。チッペンデールとヌーヴォーを取り合せたような組み方に、思い切った今様(いまよう)華奢(きゃしゃ)な昔に忍ばして、(へや)の真中を占領している。周囲(まわり)に並ぶ四脚の椅子は無論同式(どうしき)構造(つくり)である。繻子(しゅす)の模様も(つい)とは思うが、日除(ひよけ)白蔽(しろおい)に、卸す腰も、(もた)れる背も、ただ心安しと気を楽に落ちつけるばかりで、目の保養にはならぬ。
 書棚は壁に片寄せて、(けん)の高さを九尺(つら)ねて戸口まで続く。組めば重ね、離せば一段の棚を喜んで、亡き父が西洋(むこう)から取り寄せたものである。いっぱいに並べた書物が紺に、黄に、いろいろに、ゆかしき光を闘わすなかに花文字の、角文字(かくもじ)の金は、縦にも横にも奇麗である。
 小野さんは欽吾(きんご)の書斎を見るたびに(うらやま)しいと思わぬ事はない。欽吾も無論(きら)ってはおらぬ。もとは父の居間であった。仕切りの戸を一つ明けると(すぐ)応接間へ抜ける。残る一つを出ると内廊下から日本座敷へ続く。洋風の二間は、父が手狭(てぜま)住居(すまい)を、二十世紀に取り(ひろ)げた便利の結果である。趣味に(かな)うと云わんよりは、むしろ実用に(せま)られて、時好の程度に(おの)れを委却(いきゃく)した建築である。さほどに(うれ)しい部屋ではない。けれども小野さんは非常に羨ましがっている。
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