四、蜃気楼
『蜃気楼』という呼称は、「幻像」の意味として、また極東の寓話の仙境、蓬来の別名としても使われる。日本の神話の様々な存在が、蓬来の蜃気楼を造り出す死にいたる欺きの力を持つと信じられた。古い絵のひとつに、蝦蟇が口から蓬来の形をした幻影の靄もやを吐き出す行為をする表現を見ることができる。しかし、とりわけこの幻影を生じさせる習慣のある生き物は、蛤はまぐりである──二枚貝によく似た日本の軟体動物のひとつ。その殻を開け、紫がかった霧の息を空気中に送ると、その霧は真珠層の色彩の中に蓬来と龍王の宮殿の輝く映像の形を明確にとる。
はまぐりの
口あく時や、
蜃気楼
世に知られけん
龍たつの宮姫みやひめ
〔蛤が口を開く時──見よ!蜃気楼が出現する……その時は皆が龍宮の乙姫を明瞭に見られる。〕
蜃気楼──
龍の都の
雛型?を
潮干の沖に
見するはまぐり
〔見よ!引き潮の沖を、はまぐりが蜃気楼で小規模な幻の映像を作っている──それは龍の首都!〕