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九 夢にも思わなかったこと(1)

时间: 2024-07-30    进入日语论坛
核心提示:九 夢にも思わなかったこと 恐ろしい事件がおこった。だれ一人夢想もしなかったことだ。われわれはどこまで行っても事件につき
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九 夢にも思わなかったこと
 恐ろしい事件がおこった。だれ一人夢想もしなかったことだ。われわれはどこまで行っても事件につきまとわれるらしい。この不思議な、近寄りがたい土地で、一行全部が死に絶える運命にあるのだろうか。わたしは頭が混乱してしまって、目の前にある事実についても将来の希望についても、正確な判断を下せない状態だ。途方にくれたわたしにとって、現在は恐ろしく、未来は夜のように暗い。
 これほどの窮地に追いこまれた人間はかつてないだろうし、現在位置を知らせて救援を乞うのも無駄なことだ。かりに救助隊が派遣されたにしても、それが南アメリカへ到着するずっと前に、われわれの運命は決定されているだろう。
 実際のところ、ここは月の表面ぐらい人間世界から遠い。だから難局を切り抜けるには、自分たちの能力に頼るより手がないのだ。わたしには三人の同志がいる。知力にすぐれ、不屈の勇気を持つ人々だ。これだけが唯一の頼みの綱である。彼らの平然たる顔つきを見るときだけは、わたしも暗闇の中で一条の光明を見出した思いだ。わたしも外見だけは彼らと同じように平然としていることだろう。だが内心ではどうしようもないほど不安なのだ。
 われわれをこの破局に導いた一連の出来事を、できるだけ詳細に報告しよう。
 前便の結びの部分で、赤い断崖のはてしないつらなりから七マイルの地点にいると書いたが、これは疑いもなくチャレンジャー教授の語った断崖だった。そばに近づくにつれて、崖がところによっては教授の話よりもなお高そうで――少なくとも千フィートはありそうなところもある――たぶん玄武岩層の隆起の特徴だと思われる奇妙な筋が認められた。エジンバラのソールズベリ介砂層でもこれと似たものが見られる。台地の上は植物が生い茂っているらしく、崖の縁には灌木の茂み、内部には無数の巨木が見えた。動物の姿は全然見かけなかった。
 その夜は崖の真下の、荒涼とした場所にテントを張った。頭上の崖は垂直どころか、てっぺんがオーヴァーハングしているので、そこを登るのは問題外だった。すぐ近くに、この手記の前のほうで述べたはずの鋭い三角岩が高々とそびえている。それは教会の巨大な赤い尖塔のようで、てっぺんは台地と同じ高さだが、その間には広い裂け目が口をあけていた。てっぺんに一本の巨木がはえている。このあたりは崖も比較的低く、およそ五、六百フィートぐらいかと思われる。
「あの木の上に」チャレンジャーが言った。「翼手竜がとまっていたのだ。わしは岩の中ほどまで登ってそいつを射ちおとした。わしぐらい岩登りが上手なら、あの岩ぐらい頂上まで登れそうだ。もっともそうしたところでいっこうに台地に近づくわけじゃないがね」 チャレンジャーが翼手竜の話に熱中している間に、わたしはサマリー教授の顔色をうかがってみた。はじめてかすかな信用と後悔らしきものが認められた。薄い唇にもはや冷笑はなく、むしろ逆に興奮と驚きの表情が、灰色のしかめっ面に浮かんでいた。チャレンジャーもそれに気がついて、満足そうに勝利を味わっているようだった。
「もちろん」彼は慣れない不器用な皮肉をこめて言った。「わしの言う翼手竜とはコウノトリのことだが、それはサマリー教授もおわかりだろう。ただしこのコウノトリには羽根がなく、全身皮でおおわれ、膜のある翼を持ち、口に歯がはえているがね」彼がニヤリと笑って目くばせし、気どって頭を下げたので、サマリーは居たたまれなくなって逃げだした。
 翌朝、コーヒーとマニァ’(ブラジル原産のタカトウダイ科の植物。根から良質のでんぷんがとれる)の簡単な朝食をすましたあと――食糧を倹約する必要があった――崖を登る最上の方法を検討するために作戦会議を開いた。
 チャレンジャーが法廷の裁判長もどきに、いかめしく司会役をつとめた。岩の上にチョコンと坐って、子供っぽい滑稽こっけいな帽子をあみだにかぶり、垂れさがったまぶたの下から尊大な目でわれわれをにらみつけ、黒いひげをふりたてながら現在位置とこれからの進路を説明するチャレンジャーをご想像願いたい。
 彼より一段低いところにわれわれ三人が坐っている。太陽の下の旅ですっかり日にやけて元気そうになった若いわたし、片時もパイプをはなさず、真剣な表情だが依然として批判的なサマリー、かみそりのように鋭く、しなやかで機敏な体をライフルにもたせかけ、鋭い目でじっと話し手を見つめているジョン卿。われわれのうしろには二人の混血土人とインディアンたちが控え、前方には巨大な赤い岩の壁がそびえ、目的地との間に立ちふさがっていた。
「言うまでもないが」と、隊長は言った。「この前のとき、わしは崖をのぼるためにあらゆる方法を試みた。登山家としてはかなり腕におぼえのあるこのわしにして成功しなかったのだから、ほかの者が同じ方法でやっても失敗するのは目に見えておる。前回は岩登りの道具を持たなかったが、今回は手まわしよくそれを持ってきた。それさえあれば三角岩の頂上までは登れるだろう。だがかんじんの崖がオーヴァーハングしている以上、そこを登ろうとしてもまず見込みはない。前回は雨期が近かったし、食糧も底をつきかけていたから、ぐずぐずしておれなかった。まあそんなわけで時間の余裕がなかったから、正直なところここから東へ六マイルほどの範囲を調べてみたにすぎんが、少なくともその間には登れそうなところが見当たらなかったというわけだ。となると、今度はどうすべきかな?」「考えられることは一つしかない」と、サマリー教授、「きみが東を調べたのなら、今度は崖にそって西側を調べ、登れそうな場所を探すことだな」「その通りだ」と、ジョン卿、「この台地はそれほど広くなさそうだから、周囲をたどっているうちに楽な登り口を発見できるかもしれないし、発見できなければ一まわりしてまたここへ戻ってくるわけだ」「この若い友人にはすでに説明してあるが」とチャレンジャーが言った。(彼はわたしのことをまるで十歳かそこらの小学生のように扱うくせがある)「どこを探しても楽な登り口などあるはずがない。そんなものがあるとすれば、台地が外界から孤立して、自然の生存法則に不思議な影響を及ぼす特殊な条件が保たれるはずがないからだ。しかしながら、熟練した登山家ならどうにか頂上にたどりつけるが、図体の大きい重い動物には降りられないという場所がどこかにあるかもしれん。つまり登はん可能な場所はきっとある」「なぜそんなことがわかるのかね?」と、サマリーが鋭くたずねた。
「先駆者であるメイプル?ホワイトというアメリカ人が、実際に登っているからだ。さもなければスケッチブックに描かれたあの怪獣の姿を見られたはずがない」「きみの主張は単なる仮定にもとづくものだ」と、サマリーは頑強に言いはった。「なるほどきみの言う台地は、現に目の前にあるから認めざるをえない。だがこの上に動物が棲んでいることまで納得したわけではないぞ」「きみが認めようが認めまいが、そんなことはなんの値打ちもない。ただ台地そのものがきみのぼんくら頭にも入りこんだのは喜ばしいかぎりだがね」そう言って彼は台地を見上げ、驚いたことに、やにわに岩の上からとびおりてサマリーの首根っこをつかまえ、力づくで上を向かせて、いきりたったしゃがれ声で叫んだ。「さあ! 台地に動物がいるかいないか、しっかり目をあいて見ていただこうか」
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