題しらず
41 折られけりくれなゐにほふ梅の花けさ白たへに雪は降れれど
宇治前関白太政大臣
【通釈】
41 折ることができたよ、紅も鮮やかな梅の花を。今朝は真白に雪は降っているが……。○二·三句 「にほふ」は色美しく映えるの意。「春の園紅にほふ桃の花下照る道に出で立つをとめ」(万葉·巻一九·四一三九·大伴家持)。▽入道右大臣集の歌。新撰朗詠集や今鏡にも載る。白梅ならば「雪降れば木毎に花ぞ咲きにけるいづれを梅と分きて折らまし(古今·冬·紀友則)というように、雪中梅は折りにくいが、「有 色易 分残雪底」(和漢朗詠集·春·紅梅·兼明親王)というように、紅梅なので折ることができた喜びを歌う。