土御門内大臣の家に、梅香留 袖といふことをよみ侍りけるに
53 散りぬればにほひばかりを梅の花ありとや袖に春風の吹く
藤原有家朝臣
【通釈】
53 散ってしまったので袖には匂いだけが残り留まっているのに、まだ梅の花があるものと思ってか、袖に春風が吹くよ。本歌「折りつれば袖こそにほへ梅の花ありとやここに鶯の鳴く」(古今·春上·読人しらず)。○土御門内大臣 源通親 作者。○二─四句 ここで歌題「梅香留 袖」を表現する。▽建仁元年(一二〇一)三月十六日内大臣源通親家影供歌合での詠。