朝まだ眠っていた間に静かな雨が降っていた。久し振りの雨であった。日ごと吹きつづけていたはげしい風がやんで、しっとりと濡れたこずえを見れば、いかにも山の湯らしい気分をしみじみ感じさせられるのであった。
しばらく聞かなかった小鳥の声さえ、今朝は軒近く落ちついている。
近くの柴山には淡い霧が漂っている。なんとなしに春がきたような暖かさである。
私は、ふと天城をみた。そこには真っ白な雪がたにを埋めていた。今朝の雨が、天城では雪になったのであった。木の深いとこるだけが黒くとりのこされて、木の浅いところや、草山になっているあたりは、すっかり雪に被われてしまった。それが里ちかくになるにつれて草山を登っている道のみがはっきりと白く雪をあらわしているところもある。
雪に包まれた天城は昨日とは見違えるほどに尊くも、寂しく、高くも思われる。
たしかに雪をいただく山を見れば、私自身の魂までが遥かな世界に還ってゆくような気がする。
天城之雪
清晨,当我还在熟睡之际,外边下起了静悄悄的细雨。好久没有下雨了。平常日子天天刮得很猛的狂风也停了下来。望着那湿漉漉的树梢,仿佛使人觉得恰是置身于山中的温泉之中。
清晨,从屋檐处传来了小鸟的鸣叫声,就连这鸟鸣也显得分外悠闲。
附近矮树丛生的山上漂浮着淡淡的晨雾。天气暖洋洋的,好像春天到来了似的。我蓦然抬首朝天成山望去,原来白雪已填满了那里的沟壑。今晨的细雨,在天成山那里已变成了白雪。只有树木茂密之处仍留下处处黑影,而那些树木稀疏或是野草丛生的山坡则已被皑皑白雪覆盖的严严实实。随着山村得力临近,只有在那通往杂草丛生的矮山的山道上,残留着清清楚楚的白雪痕迹。
银装素裹的天成山与昨日相比,迥然不同,似乎给人一种神圣,孤寂与高大的感觉。
遥望那白雪覆盖的群山, 我仿佛觉得就连自己的灵魂也似乎回到了那遥远的世界。