女物長着の一種で、準礼装として用いる。正式に他家を訪問するとき、また宴会、観劇などのおりに着る絵羽(えば)模様の晴れ着。明治時代の礼装は紋付、裾(すそ)模様の無垢(むく)仕立てに、対(つい)下着を重ねた。大正期になり女性の社交の場が広がると、需要に応じて格式ばらずに華やかさのある社交服が売り出され、昭和に入ると、これが訪問着という名で一般に普及した。生地(きじ)は縮緬(ちりめん)、綸子(りんず)、夏には絽(ろ)などが用いられ、下着は重ねず、変り裾(表と同色の裾回しが多い)をつける。柄づけには総模様、裾模様、胸肩と裾に模様を入れたものがある。また、振り違いといって、右後ろ袖(そで)と左前袖に模様を置いたものもある。染物のほか、お召、紬(つむぎ)などに、絵羽風の模様を織り出した略装もみられる。昭和の初めまでは、三つ紋、一つ紋の染め抜きか、縫い紋をつけたが、現在はほとんど無紋で、袖丈(そでたけ)も振袖より短く、軽快である。付け下げは訪問着をさらに簡略化したものである。
訪問着