「人々が適切だと感じる」距離は、その人が属する文化によって著しく左右される。2人の人間が同じ文化の構成員であるときは、どのくらい相手の近くに立つべきかという問題で困ることはめったにない。しかし彼らが他者との間に必要とする空間について異なる考えを持つ文化の出身だと、様々な問題が生じることがある。
ヨーロッパの社会は、人々がどのくらい他人の近くに自分の位置を取るかによって、おおよそではあるが、三つの地域に分けることができる。
一つは、デズモンド・モリスが「エルボー・ゾーン」と呼ぶ地域で、この地域では人々は肘でお互いの体に触れることができるほど接近する。この地域にはスペイン・フランス・イタリア・ギリシャ・トルコのような国々が含まれる。
二つ目の地域は東欧の大半に及んでいて、ポーランド・ハンガリー・ルーマニアなどの国が含まれる。「リスト・ゾーン」と呼ばれるこの地域では、人々はそうしたいと思えば、自分の手首で相手の体に触れることができるように自分の位置を取る。
最後に、モリスが「フィンガーチップ・ゾーン」と呼ぶ地域がある。この地域には、イギリス・ベルギー・ドイツ・スカンジナビア諸国が含まれる。この地域では、人々は他人を腕の長さより近づけたがらず、お互いの体に触れる機会を持てなくてもまったく不満を感じない。
こうした他者との近接空間が異なる地域に関して最も目立つのは、その地理的配置である。「エルボー・ゾーン」はヨーロッパで最も温暖な地域に位置し、「フィンガーチップ・ゾーン」は最も冷涼な地域に位置している。そして「リスト・ゾーン」は、ほぼその中間に位置している。これにはいくつかの理由が考えられる。第一の、そして最も明白な理由は気候である。周囲の気温が人々の快適度や幸福度に影響を与えることはよく知られている。温暖な気候についてもう一つ言えることは、気候が温暖だと人々が野外で触れ合う機会が生まれるために、人々の社会的な習慣に影響を及ぼすことがあるのだ。地中海沿岸はどこも夏は雨が少なく暖かいし、冬の日でさえかなり過ごしやすい。そのため人々は、屋外でおしゃべりをして過ごす時間が他の地域の人たちよりもはるかに長い。こうした頻繁な接触が(他の地域の人たちよりも)人々をより密接に結びつけ、このことが、今度は人々をずっと相手の近くに立ったり座ったりする気にさせることは大いにありえる。
1、「人々が適切だと感じる」距離について述べた内容として正しいものはどれか。
①他者との適切な距離を気候と結びつけて三つの地域に分けて説明している。
②異文化の人々の間ではどのくらい接近空間を持つかで困ることはめったにない。
③接触が他の地域より頻繁な地域の人々は、他者を遠く立ったり座ったりする。
④他者との近接空間は自分が属する文化によって意識して考えなければならない。
2、「エルボー・ゾーン」の説明として、本文の内容と合わないものを一つ選びなさい。
①この地域では、人々は肘でお互いの体に触れることができるほど接近する。
②この地域にはスペイン・フランス・イタリア・ギリシャ・トルコのような国々が含まれる。
③ヨーロッパで最も温暖な地域に位置している。
④この地域では、人々は他人を腕の長さより近づけたがらない。
3、「リスト・ゾーン」の説明として、本文の説明と合わないものを一つ選びなさい。
①この地域の人々は、自分の手首で相手の体に触れることができるほど接近する。
②この地域には、イギリス・ベルギー・ドイツ・スカンジナビア諸国が含まれる。
③この地域には、ポーランド・ハンガリー・ルーマニアなどの国が含まれる。
④最も冷涼な地域と最も温暖な地域の、ほぼ中間に位置している。
4、本文の内容と合うものを一つ選びなさい。
①「エルボー・ゾーン」は、ヨーロッパで最も冷涼な地域に位置している。
②「フィンガーチップ・ゾーン」はヨーロッパで最も温暖な地域に位置している。
③「リスト・ゾーン」には、ポーランド・ハンガリー・ルーマニアなどの国が含まれる。
④イギリス・ベルギー・ドイツ・スカンジナビア諸国などが含まれる地域は「エルボー・ゾーン」と呼ばれる。