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猫の事件19

时间: 2018-03-31    进入日语论坛
核心提示:幽霊をつかまえろ 僕等はいつものバーで酒を飲んでいた。ニシ君とキタ君と、そして僕。「じゃあ、その幽霊をつかまえてみようじ
(单词翻译:双击或拖选)
 幽霊をつかまえろ
 
 
 僕等はいつものバーで酒を飲んでいた。ニシ君とキタ君と、そして僕。
「じゃあ、その幽霊をつかまえてみようじゃないか」
 そう言い出したのは、たしかニシ君だったろう。
「大丈夫かなあ。そんなことして」
「お前も科学者の端くれだろ。本当に幽霊が出るものなら、つかまえるくらいの度胸がなくちゃあ」
「うん。やってみようか」
 こうして相談が始まった。
 キタ君は建築屋さん。古いお屋敷の取りこわし工事をゆだねられていて、その奥座敷に少女の幽霊が出没するというのだ。
 そのお屋敷はキタ君の知人の家なので、彼自身、以前にその幽霊を目撃したことがあるらしい。そのときは�奇妙だな�と思っただけだったが、解体工事をするにあたって噂を集めてみると、ほかにも見た人が何人かいる。キタ君は自分で見たことがあるだけに、魔物の存在を疑わなかった。
「もう少しくわしく話してみろ」
「因縁話めいたものは、なにもわからない。先月ばあさんがなくなって、あそこの一族はみんな死に絶えてしまったからね」
「ああ」
「とにかくここ十数年、人がほとんど出入りしたことのない奥座敷なんだ。そこに出るんだな、幽霊が……。床の間の前にただぼんやりとすわっているだけ。声をかけるとすぐに消えてしまう。オレが窓越しに見たときもそうだった」
 僕等は三人とも大学で理科を学んだエンジニア。幽霊なんかあまり信ずるほうではないけれど、キタ君がはっきりと眼で見たものならきっと実在するにちがいない。
「若い娘なんだって?」
「娘って言ったって少女だよ。長い髪を垂らして、白い着物を着て……。この世にどんな未練があるのか知らんけど、出る日時はいつも決まっている。十月三日の午後十時ごろ」
「明日じゃないか」
「うん。オレが見たときもそうだった。ちゃんと日記に書いてある。見たという人の噂を、くわしく尋ねてみると、みんなその日のその時刻だ。なんかこの日に理由があるらしい」
「ほかになにか特徴はないのかい」
「消えたあとにびっしょりと水のあとが残っている」
「へーえ、溺れて死んだ人なのかな」
「そうかもしらん」
「しかし、幽霊をつかまえる方法なんかなにを読めば書いてあるんだ。まさか投網《とあみ》でつかまえるわけにもいくまいし」
「今までにだれもやったことがないんだからな。独創的なアイデアが必要なんじゃないのか」
「うん。うまい方法があるぞ」
 ポンと膝を打ったのはキタ君だった。ニシ君を指さして、
「お前のところでできないか」
「なにが?」
「冷凍の専門家じゃないか。その幽霊は濡れているんだろ。瞬間的に凍らせてしまえば身動きができなくなるんじゃないのか」
 冷凍技師のニシ君は一、二分考えていたが、首を振った。
「むずかしい。姿を見せている時間はとても短いんだ。理論的にはできないこともないけれど、あの古い部屋にそれだけの条件を作るのはむずかしい。第一、明日の十時までじゃあ時間のゆとりがないし、金もかかりすぎる」
「なるほど」
 僕等はむっつりと押し黙って考えた。
「よし、これはどうだ」
 エンジニアは困難に直面すればするほどすばらしいアイデアが浮かんで来る。
「お前のところで開発した新しい接着剤、あれを使えばいいじゃないか」
 おはちは僕のほうにまわって来た。
「ペタリコンのことかい?」
「そう。なんだってくっつくんだろ」
「もちろん」
「幽霊だってくっつくんじゃないのか」
「うーん、そこまではわからんけど……わるくないかもしれん」
 僕はとっさに新製品ぺタリコンG剤を思い浮かべた。こいつは水中の土木工事などで使えるよう水気にあうととたんに粘着力を増すというシロモノだ。
「そいつはいい。幽霊のすわる位置はきまっているんだろ。そこにすわると水気がじっとりと垂れる。ペタリコンGが効力を発揮する。ドンピシャリじゃないか」
 衆議は一決した。
 
 準備には少しもむずかしいことはなかった。
 僕は研究室の倉庫からぺタリコンGを一壜取り出して現場へ急いだ。すでにニシ君もキタ君も来ていた。
 今までだれもやったことのない実験が始まる……。僕たちの胸は興奮で震えていた。
 十時五分前、床の間の前の——いつも幽霊が現われる地点にペタリコンGをぬった。
 わが社が自信を持って売り出す新製品。どんなものでも接着してしまうペタリコンG。幽霊だってくっつけずにおくものか。
 僕たちは窓の外に立って幽霊の出現を待った。
 腕時計が十時をまわった。
「おい……」
 そうささやいたのはだれだったか。
 床の間の前に白い靄《もや》が浮かび、それがみるみる人間の形を作った。白い着物。青い表情……。
 長い髪の少女が悄然とすわっている。
「出た……」
 声が震えた。
 幽霊は小さく首を曲げて声の方向を見た。そして立ちあがり、消えようとした。
 その瞬間、なにが起こったか……。
 ビリ、バリッ。着物の裂けるのが見えた。体がちぎれるのが見えた。そして上半身だけが宙に浮き、そのまま薄くなった。
 幽霊は意外に強い力で逃げようとしたのだった。だが下半身をペタリコンGがしっかり固定していた。
「…………」
 あとには着物のすそと義足とが残っていた。
 僕等は大切なことを一つ忘れていたんだ。幽霊には足がないことを……。やけに大きい足のように見えたのがただの模型であったことを。
 
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