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死体は眠らない19

时间: 2018-09-14    进入日语论坛
核心提示:19 ビューティフル・モーニング 朝になった。 コケコッコーというニワトリの声は、聞こえなかったが、代りに、 「アーア」 
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 19 ビューティフル・モーニング
 
 朝になった。
 コケコッコーというニワトリの声は、聞こえなかったが、代りに、
 「アーア」
 という欠伸の声が居間のあちこちで起こった。
 僕はボリボリと頭をかきながら、二階から降りて来た。すっかり寝不足なのである。
 「おはよう」
 と台所へ入って行く。
 「あら、早いのね」
 と祐子がニッコリと笑う。「よく眠れたの?」
 「まるきり、さ」
 と僕は祐子の首筋に素早くキスした。
 「くすぐったいじゃないの!——でも、それにしちゃ、元気そう」
 「君の顔を見ると元気が出るのさ」
 「上手いこと言って……。お尻《しり》なんてなでてちゃだめじゃないの、こんなときに」
 「こんなとき?」
 「そうよ。池山さんと添田さんが二人とも大倉の人質になってるっていうのに」
 「あ、そうか。どうして寝不足なんだろうって考えてたんだ。それで分った」
 「呑気ねえ」
 「だって、居間の刑事たちだって、みんなグーグー眠ってたんだぜ。ひどいもんだな、全く」
 ドアが開いて、
 「ああ、すみません。コーヒーを一《いつ》杯《ぱい》いただけますか」
 と刑事の一人が顔を出した。「何しろ、みんな眠気がさめなくて」
 「ええ、今お持ちしますわ」
 と祐子は肯いた。「下の三人にも、朝食を運ばないといけませんわね。お腹が空《す》くと、人間って苛《いら》々《いら》するものでしょ」
 祐子の深遠な洞《どう》察《さつ》力《りよく》には、全く感心する他《ほか》はなかった。
 「そうですね。まあ、下は後でもいいでしょう」
 添田のような上司の下には、さすがにいい部下が揃《そろ》っている。一人は仲良く凶悪犯の人質になり、他の部下は、先にコーヒーをよこせ、と言う……。世の中はこれでいいのだろうか?
 「——で、下の方はどうするんです?」
 と僕は訊いた。「大倉は三千万円と車を要求してますよ。応じるんですか?」
 「さあ、どうでしょうね」
 と、大して関心のない様子で、「ともかく、上の方に相談しませんとね」
 居間へ行くと、刑事たちは新聞をめくったり、TVを見たりしている。
 「こいつは必ず見るようにしてるんだ」
 などと言いながら、〈連続テレビ小説〉なんか見ているのだ。
 呆《あき》れたというか、何というか……。
 「ともかく、僕は銀行へ行って来なきゃならないんです」
 と僕は言った。
 「銀行ですか。電気代でもたまってるんですか?」
 「妻の身《みの》代《しろ》金《きん》をおろしに……」
 「あ、そうでしたね! どうぞ、我々に構わず行って下さい」
 拍《ひよう》子《し》抜けすること、おびただしい。大体、この刑事たち、なぜこの家に来たのか、忘れちゃってるのじゃないか?
 「社長」
 と声がして、振《ふ》りむくと、吉野である。
 「やあ、どこへ行ってたんだ?」
 「朝の散歩です」
 この野郎! とぼけやがって!
 僕はそう怒《ど》鳴《な》りたいのを、じっとこらえた。こんなとき、朝の散歩にのこのこ出て行く奴があるものか!
 「これから金をおろしに行くよ」
 「一《いつ》緒《しよ》に行きましょう。お一人じゃ、危いですよ」
 こんな手に乗るほど、僕はお人好しではない。一緒に来られちゃ、却《かえ》って危険だ。
 「いや、これは夫のつとめだからな。僕一人で行く」
 「さようですか」
 僕は内心ニヤッとした。吉野の奴、きっと心の中じゃ、畜《ちく》生《しよう》、と歯ぎしりしているに違いない。もっとも、心の中には歯はない。などと、うるさい人は言い出すかもしれないが……。
 「おはよう!」
 突然、凄い声が耳もとでして、僕は飛び上りそうになった。振り向くと、住谷秀子である。そういや、こいつもいたんだっけ。
 「今日は何が起こるのかしら?」
 と、舌なめずりせんばかり。
 「ともかく、地下室の三人を何とかしなきゃァね」
 と僕が言うと、秀子は声を低くして、
 「ね、もうどっちか一人は殺されたと思う? 私、あの若い方を生かしといてほしいわ。あなた、どっちが好き?」
 呆れて言葉もない。——血に飢《う》えた吸血女みたいだ。
 僕のように心優しい人間には、とても、そんな想像はできない。もっとも、そのくせ、女房を殺しはしたのだが。
 「あの——」
 と祐子が声をかけて来た。
 トーストやコーヒーポットなどをのせた、大きな盆を持っている。
 「やあ、悪いですね」
 と吉野が図々しく言った。「ちょうど、お腹が空いてたんです」
 「馬鹿、お前のじゃない!」
 と僕はたしなめた。
 社長をさしおいて、秘書が朝食をとろうとは、何たることだ!
 「そうなの。悪いけど、これは地下室へ持って行くのよ」
 僕はあわてて咳《せき》払《ばら》いした。
 「そ、そうとも。それが当然だよ。でも——君が持ってっちゃ危いよ。何しろ、相手が相手だ」
 「じゃ、誰が?」
 「もちろん刑事さんさ! 危いことは、あの人たちへ任せればいいんだよ」
 僕が刑事の一人を捕《つか》まえて、話をすると、
 「いや、しかし……それは危険だなあ」
 と、露骨にいやな顔をする。
 「だからお願いしてるんですよ」
 「大倉は警察に対して反感を抱《いだ》いてますからね。——却って女性の方が、危害を加えないかも——」
 「何かあったらどうするんです!」
 と僕は抗《こう》議《ぎ》した。
 「そうですねえ……。犬の背中にくくりつけるとか、リモコンの模型飛行機で運ぶとか、何とかして——」
 「彼女に行けとおっしゃるんですね? もし、大倉に捕えられ、強《ごう》姦《かん》されでもしたら、その責任はあなたが取ってくれるんですか?」
 僕のように、おとなしい男でも、恋《こい》人《びと》のためとなると、かくも強くなれるのである。気の弱い男性諸君は安心したまえ。
 「そ、それは……」
 と刑事が困って頭をかく。
 とかく、役人というやつは、「責任」という言葉を聞くと逃げ腰になるのである。
 「その件については、上の方と相談しませんと、私の一存では……」
 と言い出した。
 「私が行くわよ!」
 と、割って入ったのは、何と秀子だった。
 「しかし——危いですよ」
 と僕は言った。「何かあって、ご主人に恨まれちゃかなわない」
 「大丈夫よ!」
 と秀子は、祐子の手から盆を引ったくるようにして、「私、一度、そういうスリリングな体験してみたかったの。心配しないで」
 と、さっさと歩いて行く。
 一瞬、誰もが呆気に取られて立っていたが、すぐワッと後を追いかけた。しかし、秀子は、もう盆を手に、地下室への階段を降りて行くところだ。
 「——大丈夫でしょうか?」
 と吉野が言う。
 「僕が知るか」
 「しっ!」
 と祐子が遮る。
 みんな、階段の近くで、じっと息を殺していた。下のドアが開く。——秀子が盆を手に中へ入ったようだ。
 重苦しい沈黙。
 今にも、秀子の悲鳴と、服を引き裂《さ》く音が聞こえて来るんじゃないかと胸をときめかせて——いや、ハラハラしながら待っていた。
 少し間があった。静かである。
 「どうなってるのかしら?」
 と、祐子が低い声で言った。
 「どうにかなってるでしょう」
 と、怠《たい》慢《まん》な刑事が言った。
 ドアが開く。そして、階段を、秀子が上って来た。ムッとしたような顔だ。
 「だ、大丈夫?」
 と僕が訊くと、
 「頭に来るわ!」
 と、秀子は拳《こぶし》を振り回した。「私に何《ヽ》も《ヽ》しないのよ、あの男!」
 階段の下から、
 「おい! 誰かいるか!」
 と、声がした。
 まだ死んでいなかったらしい。添田の声である。刑事があわてて、
 「は、はい! 大丈夫ですか?」
 「どうなってるんだ! 金と車の用意はできたのか!」
 「それは、課長の許可がないと。——さっき電話したんですが、会議中だそうで」
 「馬鹿! 俺たちが殺されてもいいのか!」
 添田の声は、かなり、焦《あせ》りを感じさせた。奥で、大倉が笑っているのが聞こえる。
 「——おい、聞けよ」
 大倉が出て来たらしい。「正午まで待って、用意できなきゃ一人殺す。どっちにするかは、これからゆっくり決めるからな。今、九時半だ。二時間半の間に、何とかするんだ」
 「——分ったのか!」
 添田の叫びは悲痛だった……。
 
 「——三千万しかできない?」
 僕はため息をついた。「そこを何とかならないのかい?」
 考えておくべきだった。一億円などという大金は、支店ですぐには揃わないのだ。
 「——分った。いや仕方ない。今から行くから、三千万だけでも用意しといてくれ」
 僕は電話を切った。
 「だめなんですか?」
 と吉野が訊く。
 「うん。明日でないと一億は用意できないってさ」
 「犯人から電話があるといけませんから、早く行ってらした方が——」
 と祐子が言う。
 「そうするよ。——じゃ、僕は銀行へ行って来ます」
 と刑事に声をかける。「添田さんたちはどうなるんです?」
 「それがねえ……」
 と刑事は頭をかいて、「課長が二日酔いで機嫌悪くて。『そんな奴の言うなりになっては警察の恥《はじ》だ!』と、こうなんですよ」
 「じゃ、どうするんです?」
 「何としても逮捕しろ、という命令でしてね——」
 「でも、人質がいるんですよ」
 「分ってます。しかし、課長の命令ですからねえ」
 「はあ……」
 「宮仕えは辛いもんです」
 そんな呑気なこと言ってる場合か、と言ってやりたかったが、まあこっちの知ったことじゃない。
 いや、そうでもないのか。何しろ大倉は、美奈子の誘拐容疑で、ここへ連れて来られたのだから。
 「——それにしても妙ね」
 玄関の方へ出て来て、祐子が言った。「あの大倉って男、どうしてあんな無茶をしたのかしら?」
 「きっと他にも、何かやらかしてるんじゃないかな」
 「そうね。——これで、『誘拐犯』から、また電話がかかれば、大倉が少なくとも、奥《おく》さんを誘拐したんじゃないってことが分るわけね」
 「こっちにゃ、とっくに分ってるけどね」
 「しっ! 誰か聞いてたら大変よ」
 と祐子が周囲を見回す。
 「大丈夫さ。今は、みんな地下室の方に注意を取られてる」
 「じゃ、早く行って来て。例の犯人から、電話があるといけないわ」
 「そうだな。——キスしてくれよ」
 「だめよ、こんなときに」
 「ちょっとだけでいいからさ」
 祐子は、
 「悪い人ね……」
 とか言いながら、僕の唇にチュッとキスしてくれた。
 これでもう、昼食抜きでも大丈夫だ!
 出かけようと玄関のドアに手をかけると、
 「池沢さん!」
 と刑事が走って来た。
 「何でしょう?」
 「お願いがあるんですが」
 「というと?」
 「出られたついでに、ハンバーガーを十個ばかり買って来てください。ケチャップをつけて」
 ——添田の部下にふさわしいセリフだ、と僕は思った。
 十二時には、二人の刑事の内、一人が殺されるというのに、昼食の心配をしているのだから!——僕は、日本の警察の前《ぜん》途《と》に、暗雲がたなびいているのを嘆《なげ》かずにはいられなかった。
 玄関を開け、すばらしく明るい朝へと、足を踏み出す。
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