日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

死体は眠らない20

时间: 2018-09-14    进入日语论坛
核心提示:20 お札《さつ》の舞《まい》 玄関を入って、僕は仰《ぎよう》天《てん》した。 銀行で三千万をおろして、戻《もど》って来た
(单词翻译:双击或拖选)
 20 お札《さつ》の舞《まい》
 
 玄関を入って、僕は仰《ぎよう》天《てん》した。
 銀行で三千万をおろして、戻《もど》って来たのは、やがて十一時になろうという時だったのだが、ともかく、一歩中へ入って、新《しん》宿《じゆく》駅か渋《しぶ》谷《や》駅のラッシュアワーの中へ間違って入り込んだのかと思ったほどだった。
 そんなはずがないのは分り切っているが、しかし、家の中は、廊《ろう》下《か》から居間まで、何十人——いや、百人はいようかという、制服警官で埋《うま》っていたのだ。
 もちろん、座る所なんかありゃしないから、みんな手もちぶさたに立って話をしている。
 急にここで〈全国警官親《しん》睦《ぼく》会《かい》〉でも開くことになったのかしら?
 「帰ったの?」
 と祐子が二階から降りて来た。
 「うん。しかし、これは——」
 「上に行きましょう。ともかく上に」
 と、祐子が僕の手を引く。
 寝室へ入ると、祐子がホッと息をついて、「びっくりしたでしょう?」
 と言った。
 「当り前だよ。どうなってるんだい?」
 「あの刑事さんたちが、応《おう》援《えん》を呼んだの。そしたら、一人ずつ、バラバラに電話したものだから、あっちこっちから、警官がワァワァやって来て……」
 「ひどいもんだな」
 僕は金の入った鞄を、ベッドの上に置いて言った。「一体何を考えてるんだろう?」
 「ともかく、絶対逃げられない、ってことを大倉に見せて、自首させようってことなんでしょ」
 「それにしたって、やり過ぎだよ!」
 「仕方ないわ。ここは任せておきましょ」
 「吉野や住谷秀子は?」
 「下にいるわ。住谷さんなんて、見逃してなるもんか、ってワクワクして待ってるのよ」
 「何を?」
 「大倉が警官の弾《だん》丸《がん》を浴びてやられるのを、よ」
 「あれでも女か! 全く!」
 僕は呆れて、ベッドに腰をかけながら言った。
 「女って、残酷なところがあるのよ」
 と、祐子は僕の傍《そば》へ座った。「私にも……。分ってるでしょ?」
 「うん……」
 「私のことなら何でも分ってるわよね」
 「隅から隅までね」
 「フフ……。何だか変ね」
 祐子の方からキスして来る。僕らはベッドへ倒《たお》れ込《こ》んだ。ドスン、と何か音がした。
 金の入った鞄が落ちたのだ。構やしない。祐子の方が大切なのだから。
 「こんなことしてちゃいけないわ……」
 僕の腕の中で、祐子が言った。
 「そうだね……」
 「今後のことを検討しなきゃ……」
 「電話は……かかって来た?」
 「いえ……まだよ」
 「三千万で……手を……打つかな?」
 「だめ……じゃ……ない?」
 「そう……かな」
 やたらに「……」が入るのは、この間、僕と祐子の間で、親密な打ち合せが行われたことを示しているのである。
 ドアがノックされて、僕らは、はね起きた。——祐子が髪《かみ》を直しながら、ドアを開ける。
 「どうも、お騒《さわ》がせして」
 と刑事が入って来た。
 「下の方はどんな具合ですか?」
 「はあ。——いよいよあと三十分しかありませんので、覚《かく》悟《ご》を決めなくてはなりません」
 覚悟を決めるのは、添田たちの方だろう。
 「じゃ、突《とつ》入《にゆう》するんですか?」
 と、祐子が言った。
 「ええ。百人の警官が一《いつ》斉《せい》に突っ込めば、きっと……」
 あの狭《せま》い階段に百人もの人間が入るわけがない。やたらドタバタするだけで、大倉は結構どさくさに紛《まぎ》れて、逃げちまうかもしれない。
 「添田さんは大丈夫ですか?」
 「さっきも、『金と車はどうした!』と、怒鳴ってました。全く、心臓をえぐられる思いですよ」
 と、刑事は言って、「あ、ところで、ハンバーガーの方は……」
 心臓をえぐられた人間の言うことじゃないような気がした。
 「この鞄の中に。——札束の上に入ってます」
 と僕は鞄を開けてやった。
 「どうも。——しかし、百人もいるんじゃ、奪い合いになるな。ここで一ついただいて行きます」
 と刑事はハンバーガーにかみついた。
 「ねえ……こうしたらどうかしら?」
 と、祐子が言い出した。
 「何です?」
 「大倉が要求してるのは三千万円でしょ? ここにちょうど三千万円あるわ」
 「それで?」
 「これを大倉に見せるんです。車の方は、どうせ地下からじゃ見えないんですもの。金だけ渡せば、きっと車も用意されたと思いますわ」
 「なるほど」
 「大倉は安心して上って来る。そこを一斉に飛びかかって押えるんです」
 祐子は僕の方を見て、「社長さんは、人情味の厚い方ですから、きっと、このお金を使わせて下さいますわ」
 僕はぐっと胸を張って、
 「もちろんです。この金がお役に立つのなら、どうぞ」
 「いや、ありがとうございます!」
 と刑事はハンバーガーを無理に口へ押し込んで、目を白黒させて、「——必ず——取り戻してお返しします!」
 当り前だ! 返してくれなきゃ大変だ。
 刑事が出て行くと、祐子が言った。
 「あんな出しゃばったこと言ってごめんなさい。——怒《おこ》った?」
 「怒るもんか。すばらしいアイデアだと思うよ」
 「本当? あなたってすてきだわ!」
 祐子がキスして来る。——このキスのためなら、三千万円、なくなっても——やっぱり惜《お》しいや。
 
 「あと五分だぜ!」
 大倉の声がした。「どっちを殺すか、ジャンケンさせてるところだ」
 「おい、お前はパーを出せ!」
 と添田が言っている。
 「いやです! チョキを出すんでしょう」
 「俺はお前を助けようと、グーを出すつもりなんだぞ!」
 「当てになりません!」
 「この俺が信じられないのか!」
 「いつか、ラーメン代を踏み倒したじゃありませんか!」
 ぜひともテープに取っておきたいやりとりである。
 「おい、大倉!」
 と、刑事が声をかける。
 「何だ?」
 「やっと用意ができたぞ!」
 「金も車もか?」
 「ああ、もちろんだ!」
 「本当だろうな」
 「だから出て来い! 手は出さん!」
 「金をここへよこせ」
 僕は、鞄を刑事に渡した。
 「——今、投げるぞ」
 鞄が放り出され、階段を転り落ちて行った。
 しばらく、沈黙がある。調べているのだろう。
 「——よし、どうやら本当らしいな」
 大倉の声がした。「上って行くぞ。その辺から人を遠ざけろ」
 「分った!」
 「この年食った方の刑事《デカ》を連れてく。妙な真似すると、こいつを殺すぞ!」
 百人の警官が隠れるところなんか、とてもないので、九十人は表で待つことになった。
 十人だって、見えないように隠れているのは大変である。おまけに、住谷秀子が、
 「ここにいる!」
 と頑《がん》張《ば》って動かない。「機《き》関《かん》銃《じゆう》は? ショットガンは?」
 戦争じゃないんだぞ、と言いたいのを、こらえていた。
 「——行くぞ!」
 と、大倉の声。
 ピーン、と空気が張りつめた。僕は祐子と一緒に居間の入口の所にうずくまっていた。
 「——うまく行くかしら?」
 「さあね。あの刑事は死ぬかもしれないな」
 「気の毒ね」
 「そうかい?」
 「そうでもないわね」
 コツ、コツと足音が上って来る。
 「こら! ちゃんと歩け!」
 と、大倉にこづかれているのは添田だろう。「しっかりしやがれ!——何だと?——腰が抜けた?」
 ズドン、と銃声がした。
 「これで歩けるか?——よし。さあ、行くんだ!」
 添田が、這《は》うようにして上って来た。その後から大倉が。
状《じよう》況《きよう》はかなり難しい。警官たちが身を隠している所から大倉の方へ駆け寄るのに、少しは時間がかかる。
 その間に大倉の手にある拳銃は、充《じゆう》分《ぶん》に添田の頭を吹っ飛ばせるに違いない。
 「さあ歩け」
 と大倉がぐい、と添田を押す。右手に拳銃、左手には金の入った鞄を持っている。
 僕はジリジリと居間の中へ後退した。
 「——フン、隠れてやがるのは分ってんだぜ!」
 と大倉が、先手を打った。「一人でもちょこっと動いてみろ、こいつの頭はなくなるぜ」
 こう言われては、動きが取れないだろう。——大倉という男、なかなかの奴である。
 大倉と添田が、玄関の方へ、少しずつ歩いて行く。
 僕は居間のドアをそっと閉めて、細い隙《すき》間《ま》から、覗《のぞ》いていた。
 添田はもう、生きた心地がしないという顔で、完全に怯《おび》え切っている。冷《ひや》汗《あせ》も、出切ってしまったのかもしれない。
 大倉の、ふてぶてしい横顔が見えた。——憎らしい奴ではあるが、あの落ち着きと、度胸の良さには、感心しないわけにはいかなかった……。
 そのとき、頭の上で、何だかピュッという音がしたと思うと、
 「アッ!」
 と、大倉が顔を押えてうめいた。
 鞄が落ちる。——一《いつ》斉《せい》に、警官たちが飛びかかった。
 その後はもう——大混乱だ。外の警官たちもドッとなだれ込んで来て、玄関前のホールは、満員電車の中みたいになってしまった。
 「——札だ!」
 と誰かが叫んだ。
 「一万円札だ!」
 僕は目を見張った。鞄が口を開けたのに違いない。けられ、はね飛ばされて、札が空中に舞い上ったのだ。
 お札の舞は、しばし続いた……。
 
 「申し訳ありません」
 添田刑事は頭を下げて、「必ず足りない分は補《ほ》償《しよう》させますので」
 「よろしく」
 と僕は言った。
 添田は、すっかり元の通り、平然たる様子に戻っていた。大倉は逮捕され、もちろん、池山刑事も無事である。
 ただ無事でなかったのは、僕の三千万円だった。
 今、刑事たちが、回収した札を数えているのだが、どうみても、何百万円か足りないのである。
 「空中に分子になって散っちゃったのかもしれませんな」
 などと、添田は笑ったが、僕が笑わないので、ハタと真顔に戻った。
 「でも、大倉はなぜ顔を押えたんでしょうね?」
 と僕が言うと、
 「これですわ」
 と祐子が答えた。
 祐子の手から、ヒュッという音と共に、何かが飛んだ。——池山が拾い上げて、
 「輪ゴムじゃありませんか!」
 と声を上げた。
 「ええ、輪ゴムだって、命中すればかなり痛いんですよ」
 祐子がニッコリ笑った。
 誰もが、言葉もなく、祐子を見ていた。さすがは祐子だ!
 「いや、何とお礼を申し上げていいのか——」
 と、添田が、オーバーに頭を下げる。
 「あなたは女神ですよ!」
 と、池山が祐子の前に跪《ひざまず》いた。
 何とも大時代的な光景である。
 そのとき、電話が鳴った。僕が取ると、
 「池沢さんかね」
 と、あ《ヽ》の《ヽ》声《ヽ》が聞こえて来た。
 「——僕だよ」
 「一億円は用意できたか?」
 と男の声が訊く。
 刑事たちが、あわてて逆探知用の機械へ飛びついた。
 事件はまだまだ、これからなのである。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%