[書き下し文]柳下恵(りゅうかけい)、士師(しし)と為り、三たび黜け(しりぞけ)らる。人の曰く、子未だ以て去るべからざるか。曰く、道を直くして人に事うれ(つかうれ)ば、焉(いず)くに往くとして三たび黜けられざらん。道を枉(ま)げて人に事うれば、何ぞ必ずしも父母の邦(くに)を去らん。
[口語訳]柳下恵が司法の官職に任命されたが、三度も罷免されてしまった。ある人が言った。『あなたはなぜこんな扱いを受けているのに、この国を去らないのですか?』。柳下恵が言った。『まっすぐに道理に従って人に仕えようとすれば、どの国に行っても三度罷免されるでしょう。道を曲げて仕えるのであれば、どうして父母の国を去らなければならないのですか?(正しい道を曲げて仕えるならば、この国でも私は罷免されることはないのですよ)』
[解説]高潔な理想と良心に従って職務を尽くした柳下恵についての章である。賢人であった柳下恵は罷免・降格されると知っていながら、自己の道理や良心を曲げていい加減な仕事をすることはなかった。不正や汚職を嫌った潔癖な官吏の代表として柳下恵は表現されている。