孟子は斉の宣王に言った。
「たとえば大きな建物を作ろうとしたならば、必ず工匠の親方に命じて大木を調達させるでしょう。そこで親方が大木を調達できたならば、王は喜んで親方がよく任務を果たしたと評価するでしょう。だがその大木を配下の工匠が削って小さくしてしまったならば、王は怒ってその工匠が任務に違反したと評価するでしょう。さて、人にして幼い頃よりすすんで学にいそしみ。大人になって今やその学んだ成果を発揮しようとしているとします。そのとき、王がその者に『汝の学んだことはとりあえず置いておけ。余の言うことに従え』と申し渡したならば、それは大木を削って小さくすることを命じることに相違ないのではありませんか?今ここに玉(ぎょく、ヒスイの仲間の宝石)の原石があるとします。ものすごい価値があったとしても、必ず玉匠に命じてこれを磨かせるでしょう。それと同じです。国家を治めようというのに、そのための人物に『汝の学んだことはとりあえず置いておけ。余の言うことに従え』と申し渡すのは、それは王が玉匠に玉の磨き方を指図しようというのと何ら違いはないのです。」