斉が燕を征伐して、勝った。
宣王は孟子に問うた。「燕を併合してはならないと言う者もいるし、逆に併合すべきだという者もいます。小生思いますに、たった五十日で大国が大国に完勝したのです。これは人力だけでできたとはとても思えません。併合しなければ、かえって天のわざわいがあるのではないでしょうか。だから併合しようと思うのですが、先生の意見はどうでしょうか。」
孟子は答えた。「併合して燕の人民が喜ぶのならば、併合しなさい。いにしえの人でこれを行ったのは、周の武王です。だが併合して燕の人民が喜ばないのならば、併合するべきはない。いにしえの人でこれを行ったのは、武王の父である周の文王です。大国が大国に完勝して、その人民が食べ物や飲み物を勝った軍に提供したから天意があると言うのですか?それは単に水攻め火攻めの戦禍を免れたいからそうしたのです。併合した後に水攻め火攻めの苦しみがもっとひどくなったならば、人民は王を見捨てるだけです。」