日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂 魔女の宅急便
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 魔女の宅急便 » 正文

魔女の宅急便5-3.六月のベール

时间: 2026-09-30    进入日语论坛
核心提示:魔女の宅急便-
(单词翻译:双击或拖选)
2 六月のベール
 花の色でぼーっとけむっているように見える景色がおわると、コリコの町の木たちは、「さあ、つぎはこっちの出番だぞ」とでもいうように葉を茂らせはじめました。はじめは金色をまぜたようにつやつやと光っていた葉がしだいに濃い緑色にかわっていきます。おとどけもので飛んでいるキキのまわりの空気もしめり気がとれて、きりりとすんできました。するとキキの仕事がにわかにいそがしくなっていきました。
「魔女の宅急便屋さんですか? あのー、六月の三日、『幸せのベール』はあいているでしょうか? 結婚式におかりしたいんですけど」
 こんな注文が多くなったのです。つぎつぎと予約がはいってきます。それも六月に集中しているのです。三日に始まり、もう十八も予約がはいりました。
「花嫁さんの大行列だわ、はー」
 おとどけに飛び回るキキは胸をおさえて、わざと「はーはー」として見せました。
「人間の女の子って、六月じゃないと花嫁さんになれないとでも思ってるのかな」
 ジジがあきれたようにいいました。
「そりゃあ、青い空、緑の木、風はそよそよ、レースのベールはやさしくゆれる……ってね」
 キキは歌うようにいいました。
「ね、なにもかも花嫁さんの幸せにぴったりでしょ。あら、それなら猫の結婚はいつが多いの?」
「二月かな。猫はさむがりだからね、なるべくくっついて仲よしするんだ。ひとりより、いっしょがあったかいもん」
 ジジはいいながら自慢そうに目をうっとりとつぶってみせました。
「いそがしいのはいいけどさ。お祝いだからって、おすそわけをたくさんくれるのも、いいけどさ。それにおまけに、いつも結婚式のケーキがついてくるでしょ。あれはちょっとまいるよな。口があまくなっちゃってさ」
「ジジ、いただくものに文句をいわないのが、魔女のくらしよ」
 キキはジジをにらみました。
「キキの魔女のくらしだってふらふらしてるよ。この間、今日はお花だったわっていってたじゃない。うれしそうにはきこえたけど」
「わかっちゃった?」
 キキは首をすくめて、舌をぺろりとだしました。
 この花嫁さんの幸せのベールは町のはずれのじゃがいも畑のとなりに住んでいるララ・オーパさんが、ずっと昔にご主人から贈られた物でした。編まれてから百八十年はたつという白いレースのベールです。花や鳥が、細かく編みこまれています。たいせつに、たいせつにつかわれていたので、こんなにながく時間がたっても、ほころびもなく、輝くような白さをたもっています。タンスにしまっておいたのではもったいないと、ララ・オーパさんは知り合いの娘さんが結婚するときに貸していたのです。でも一年半ほど前、だいじな姪めいの娘さんが結婚するとき、ララ・オーパさんは足を痛めてしまい、もっていけなくなりました。それでキキが代わりにとどけたのが、このベールとのお付き合いの始まりでした。名付けて、『ララとキキの幸せのベール宅急便』です。
「ひとりでも多くのお嫁さんにかぶってほしいわ。遠い北国の娘さんが十八歳のときから三十歳まで十二年間、幸せなくらしを夢見て編んだ物なんですもの。一目一目に願いがこめられているのよ。だからこのベールには人を幸せにする力があるとわたしは信じてるの。その娘さん、どんな人だったのかしら。一度会ってみたかったわ。物って命がないみたいだけど、人よりずっと長生きで、心も通うものなのね」
 ララ・オーパさんはキキがベールを運ぶとき、まるでお祈りの言葉のように、こうつぶやいたりします。
『結婚式の始まる直前に魔女さんがどこからともなくあらわれて、空からベールを、まるで幸せが降ってくるように花嫁さんの頭にかけてくれるんですよ。すてきでしたわ』
 結婚式に参加した人からこんな評判がひろまっていきました。ほんとうをいうと、このやりかたはちょっとした偶然から生まれたことでした。でもよろこばれたので、雨でも降らないかぎり、それからずっとこの方法でベールを運んでいます。結婚式の始まるちょうどそのときにあうように空を飛んで、空中から花嫁さんの頭にふんわりとのせるのです。このちょうどぴったりは、なかなかむずかしい仕事でした。それでなくっても結婚式というのは、いろいろなことがおこるのです。
「失敗したら大変。一生に一度のおめでたい日なんですもの」
 キキはとても神経をつかいます。
 ルルルルー ルルルルー
 電話が鳴りました。
「あのー、幸せのベールの魔女さんですか? 明日、十時にお願いしているハラリですけど。どうか時間厳守していただきたいんです。わたしたち、式のあとすぐ新婚旅行にでかけるので、汽車の時間も決まってて、遅れるわけにはいかないんです。ほんとよ、時間厳守。大丈夫でしょうね、大丈夫でしょうねえ」
「はい、大丈夫ですよ。ご心配なさらなくても。結婚式は、たしか『噴水公園』でしたね」
「たしかもなにも、噴水公園よ。清水公園じゃないわよ。あそこの結婚式は、今、人気なの。場所はごぞんじよね。大丈夫よねえ」
「ええ」
「ところで雨、降るかしら……どう思う?」
(どう思うといわれても……)
 それでもキキは元気をだしてこたえることにしました。
「さあ……、きっと大丈夫ですよ。今日はこんなにいいお天気ですから」
「絶対? ほんとのほんと?」
「……多分……」
 キキは口ごもりながら、くりかえしました。「大丈夫ですよ」
 このこたえ以外にどんな言葉があるというのでしょう。
 この際、なにはともあれ、安心してもらったほうがよさそうです。
「でも、心配だわ。約束してくれる?」
「ぐっく……やくそく……あっ、ええ、お祈りしますね」
 キキは思わず笑いそうになってしまいました。
 花嫁さんは、だれでも結婚式の前は、瞬間強烈心配性になるようです。この人も今や心配のかたまり。ちょっとした言葉一つにも泣きだしてしまいそうです。
「絶対よ。十時よ。時間厳守よ。ぴかぴかのお天気よ。わたしはハラリです。いいわね、ハラリです」
 電話は念をおすように力をこめてくりかえしていうと、切れてしまいました。
(気持ちはわかるけど……時間のほうは絶対大丈夫としても……でもお天気はねえ、空の神様のご機嫌しだいだわ。それにしても結婚が決まっても心配、決まらなくても心配。うれしいことには、心配ってつきものなのね。つくづく大変)
 キキは、雨が降ってもしょうがないじゃない、お天気まで責任もてないわという気持ちでした。ところが、そう思いつつもだんだんと心配になってきました。できることなら、飛んでいって、ほうきで空の雲を追いはらってあげたいくらいです。でもいうまでもなく魔女にも、魔女のほうきにも、そんな力はありません。
 キキは夜になっても気になって、何度も窓から空をのぞきました。星もでています。すこしある雲も雨雲ではなさそうです。でも、でも、キキの耳の底には「絶対よ」という電話の言葉がこびりついてはなれないのです。
「ジジ、明日の朝、ちゃんとおきてね。わたしがもし寝坊したらおこしてよ」
「はい、はい、かしこまりました。ご心配なく」
 キキはあまり寝られずに朝をむかえました。でも心配することはありませんでした。見事な六月のすみきった空がひろがっています。
「六月ってやっぱりすてきだわ。さ、急いで出かけましょう」
 キキはジジに声をかけました。
「ねえ、まだ時間あるよ。ぴったりに行くのが、キキの技でしょ。約束は十時だよ」
「そう、十時よって、あの人、何回もいってたわ」
「間違えたら大変だよね」
「はい、ジジさま、念のため、念のため予定表を」
 キキは首をのばして、壁にはってあるカレンダーをのぞきました。
「あっ、そうだわ。思い出した。今日はもう一つ、約束してるのよ。ツボミさんっていう人と。あっ、あれ!! まさか、まさか! おんなじ十時よ……そんなぁ……でもここに書いてある! どうしよう!」
「昨日のハラリさんのは?」
「ハラリさんのは……、十一時に印がついてるの、どうしてかしら。昨日、はっきり十時っていってたわよね」
 キキはあわてて、カレンダーをまた見ました。
「そうだわ、思い出したわ。ツボミさんが予約に来たとき、ハラリさんのは十一時にはいっていたんだけど、おなじ噴水公園だから、一時間違えばなんとかなるって、わたし、思ったのよ。どうしても、どうしてもって、ツボミさんにたのまれて。でもハラリさんは、昨日たしかに十時っていってたわよね。重なっちゃった。どうしよう。わたし、間違えちゃったのよ。どうしよう、どうしよう」
 きれいにたたんだベールの包みをかかえながら、キキはあちこちうろうろ歩き回って、もう泣きそうです。
「書きまちがえちゃったんだよ」
 ジジはまだキキより冷静です。「あわててもしょうがないよ。まず行ってみようよ。なんとかなるよ」
 ベールの包みをかかえてふたりは大急ぎ、ほうきに乗り、噴水公園を目ざしました。
 上から見ると、公園の中央にある花に飾られた会堂の前には、花嫁さんを中心に、晴れ着を着た人たちが、二つのかたまりになって集まっています。キキは目立たないように裏門でおりて、走っていきました。
「あら、魔女さん、走ってきたらだめじゃないの。飛んでベールをかけてくれるんでしょ」
 どうじにハラリさんと、ツボミさんがあっちとこっちからさけびました。
「すいません」
 キキは両方にむかって、深く深く頭をさげました。
「申し訳ありません。勘違いしてしまって。お約束の時間が重なっちゃったのです。わたしの責任です。すいません。どちらかがすこしずらしてくださる訳にはいきませんでしょうか?」
 キキはふたりを必死で見つめました。
「たいせつなご結婚の日なのに、失敗をしちゃって、すいません」
「あら、気にしないで。わたしなら、十一時からよ。魔女さんに遅れられたら大変だと思って、じつはね、さば読んだのよ」
 ハラリさんが首をつぼめて、あっさりといいました。
 とたんにキキはくにゃんと倒れるようにすわりこみました。
「キキ、大丈夫?」
 ジジがそばに飛んできました。
「よかったー。どきどきして死ぬかと思った」
 キキはふーっと息をはいて、ふらふらと立ち上がりました。
「ごめん。心配で、心配で、それではやめにいっとけば安心だと思って」
 ハラリさんは、もう一度、「ごめん」と小さくつぶやきました。
「でも、よかった」
 キキはまだどきどきしている胸に手をあてていいました。
「それでは、もう時間ですから、ツボミさんからはじめてよろしいですか。ご心配なく。わたし、ちゃんとむこうの空から飛んできて、ベールをふんわりとおかけしますから」
「それがねえ、わたしのお婿さんがまだ来てないのよ」
「えっ」
 ほんとです。花婿さんがいません。
「じゃ、ハラリさんのほうをさきにさせていただきましょうか?」
 キキがいいました。
「わたしのお婿さんもまだきてないわ。だって彼は十一時だと思ってるもの」
 お婿さんにはさばを読んでいなかったとは……。なんと花嫁さんがふたりいて、花婿さんがふたりともいないのです。しかも時間もありません。
「ツボミさんのお婿さんはいつお着きになりますか?」
「もう来ると思うけど。自転車がパンクしてなきゃね」
「えっ、自転車?」
「ええ、わたしたち式のあとすぐ、新婚旅行に自転車で行くの。それもふたり乗りよ」
 ツボミさんは得意そうにいいました。「新婚用自転車っていうのを買ったの」
 そのとき、キキの頭のなかでなにかがピピッピと動きました。
「わたし、ちょっと飛んで、お婿さんがどのへんを走ってるか、見てきます。どっちの方面でしょうか?」
「北きた山やま街道のほうよ。いくらなんでも、もう町にははいってると思うけど」
「それでは」
 キキは、急いで肩にしがみついたジジといっしょに、飛び上がりました。
「キキ」
 ジジの声が低く耳もとで響きました。
「お説教なら、やめて」
 キキはそれだけいうと、まっすぐ北山の方向にすすみました。つんのめるように下をのぞきながら、飛んでいきます。
 あっ、いました、いました。ツボミさんの花婿さんでしょう。町にはいる手前の上り坂を、うんうんといいながら、ふたり乗りの自転車をこいでいます。結婚式の洋服は、風で後ろになびき、ネクタイも肩に乗っかっちゃっています。それに花婿さんだというのに汗びっしょりです。キキは近づいて声をかけました。
「ツボミさんがおまちですよ。急いでください」
 お婿さんはちらりとキキを見て、足に力を入れました。でも、これからどんなに速度をあげても、まだまだ時間がかかりそうです。
 キキはすとーんと地面におりると、駆け寄っていいました。
「わたしが自転車をおとどけしますから、あなたはタクシーに乗って、式場に急いでください」
 びっくりしているお婿さんから、キキは自転車に手をかけてひっぱりました。
「は、はっ、はい」
 お婿さんは、ズボンをぐいっとひきあげると、「ほんとに、ほんとに、来てくださいよ」とさけびながら、タクシーをさがして走りだしました。
 キキは荷台にからまっているひもをはずすと、自転車をほうきに結びつけました。
「むりじゃない。これ、重すぎるよ」
「なにいってるのよ。わたしはカバだって運んだ、魔女ですよ」
 でも、自転車、しかもふたり乗りの長い自転車は、ハンドルがきゅりきゅりと勝手に動いて、まるで飛ぶのをいやがっている生きものみたいです。キキはほうきにまたがり、いっしょに自転車にもまたがって、ペダルをこぎだしました。
「ジジ、あんたも後ろに乗って、ちゃんとハンドルをにぎって、助けてよ」
 ジジも必死でハンドルにすがりつきました。
 自転車はよろけながらも、浮き上がりました。キキはしっかりほうきの柄と、自転車のハンドルをにぎり、前方をにらみつけながら、噴水公園をめざしました。下を見ると、お婿さんはタクシーに乗りこむところです。
(ああ、これでなんとか……)
 キキはほっとしました。あとは速度をあげて飛ぶだけです。
 噴水公園にキキが無事に到着すると、タクシーから転げるように飛びだした、お婿さんが花嫁さんのとなりにならぼうとしていました。
 キキは大急ぎで、ひもをほどいて自転車をはなすと、今度は、ひばりのような勢いで、空にまいあがり、ベールをひろげて、花嫁さんの上に、ふんわりとかけました。会堂のなかから、音楽がひびいてきました。花嫁さんと、お婿さんは、腕をくんではいっていきました。
 ツボミさんたちの式は無事おわり、ふたりは自転車に乗り、新婚旅行に出発していきました。ツボミさんは走りだすと、すぐベールを空中のキキにむかって、さーっとなげました。もちろんキキもさっと受け取りました。
 そのあと、十一時ぴったりにハラリさんのお婿さんはあらわれました。
「ほらね、この人は心配いらないのよ。ちゃんと約束まもってくれるもの」
 ハラリさんはキキに自慢げにいいました。
「くん」
 キキのなかで怒り爆弾が破裂しそうでした。
(魔女は信用できないってわけね。あ、そう)
 でもそんな気配はちょびっとも見せず、キキはとびっきり優雅にハラリさんの上にもベールをひらりっとかけました。
(でも魔女より、お婿さんのほうを信じるほうが幸せかもね)
 ハラリさんたちも、汽車の時間にゆうゆうまにあい、無事新婚旅行に出発していきました。
 つかれてへろへろしながら、帰ってきたキキから一部始終をきいて、おソノさんはいいました。
「たいしたものね。あなたって……みんなを幸せにして」
「そんな、やめてよう……わたし……もうひやひやだったんだから」
「そうだよ。こんなのほめられないよ」
 ジジはそばから口をだしました。「一歩間違えば、大騒ぎだよ。いろいろ予想して、さきを見るっていうのも魔女の役目なんだから」
「でも、ぎりぎり間に合うって、わたし案外すきかも」
 キキはにやっとおソノさんに笑いかけました。
「あいかわらずねえ、キキのおてんばは。でもそれだから、安心な魔女ってみんな思っているのよ。昔は、魔女は、ひどいことをする人っていわれてたじゃない。なにかいやなことがあると、魔女のせいにして。この町の人だってずっとそう思っていたのよ。でもキキの仕事を見ているうちに、人のせいにしたがる気持ちっていうのかしら……それがだんだんと消えていったみたい。おたがいさま。もちつもたれつが、気持ちがいいって思うようになったのね。これも魔法なのよ、きっと」
「身にあまる、おほめのお言葉」
 キキはうつむいて笑いました。でもキキもまったくおなじ気持ちでした。そう、今ではキキとコリコの町は二つだけど、一つなのです。
「一つの町とひとりの魔女、二つそろって、これまた一つ」
 ジジがおまじないみたいにいいました。
(そう、コリコの町がなかったら、わたしなんてぼーっとかすんだ影法師みたいなものよ)
 キキにとっても、もちつもたれつの安心な町なのでした。
「ところで、キキがキキに幸せなベールをとどける日がまちどおしいことね」
 おソノさんは肩をすくめました。
「さあ、いつかしら……? そんな日がくるのかしら……?」
 キキはまだ十九です。それはまだきっとさきのことかもしれません。
(でも、でもね、さきはさきでいいんだけど。今年は十代最後の年よ。だから二十代につながるようななにか……予感みたいなものがないものかしら)
 キキは思いました。そしてはなれた町の学校にいる、とんぼさんの顔を思いうかべ、電波が一本、ピピッと飛んでこないかなと、遠くに目を走らせました。
 はい、はい、おまちどおさまでした。六月の空をまちにまったとんぼさんからのピピッは飛んできましたよ。大きな封筒に、手紙と絵がはいっていました。
「とんぼさんの手紙はいつもおまけ付き。たのし、たーのしっ」
 キキははしゃいでいいました。
「しらける」ジジが小さくつぶやきました。
  「昨日、校庭の草取りをした。まだ六月なのに暑い。ちゃんと帽子をかぶったのに、鼻のてっぺんはまっかっか。肩もひりひりする。そのひりひり肩に冷たいタオルをのせて、この手紙を書いています。ちょっと見せられない姿だよ。とっくに花はおわっているけど、タンポポの葉っぱがいっぱいあってね、それを抜こうとしたら、太くて大変。まるで巨人と綱引きしているみたいだった。ぼくの腕じゃ、とても、とてもむり。それでシャベルで掘ることにした。掘りはじめたらとめられなくなっちゃった。草の根っこの行く先はどこまであるのか知りたくなってね。なるべく根っこを切らないようにまずまわりの土を掘ることから始めて、手もつかって掘り進んで、途中からはこの作業を完成させたいって、もう夢中になっちゃって。用心に用心して、ていねいに土をよけながら、格闘することなんと三十分。すっごい根っこだったよ。春にあのかわいい花を咲かしたタンポポは、びっくりするぐらい長い根っこを地下にもっているんだ。それもつぎつぎ枝わかれして、方々にのびている。魔法の手のようだった。
   やっと掘りだして、新聞紙の上にひろげてしみじみ見たら、ぼくは『あれ』って思った。それですぐ根っこをもって、研究室にとんでいった。そしてみんなで生態を観察しているアリのところにいった。そのアリたちはうすいガラス箱のなかで飼われていて、ガラスを通して、アリがどんな巣を作るか見られるようになっているんだ。これって、私生活をのぞき見するんだから、アリにはちょっと失礼なことなんだけどさ。その巣は地上にある穴から地中にはいると、いくつもに分かれていく。そして食料庫とか、卵室とかになるんだけど、びっくりするぐらい上手にできているんだ。二つを比べてみるとね、とっても形が似てるんだ。一つは植物、一つは昆虫なのに。これって二つの気持ちが似ているってことじゃないかな。二つとも生きようっていう気持ちなんだと思う。それが形になると、おなじようになるなんて。これって、おもしろいと思わない?
   キキだったらどんな巣をつくるんだろう。  では、また、とんぼより」
「似てるっていえば、似てるけど……」
 キキは二つの絵を前に、むっと口をつぐんでいました。
(魔女は飛ぶからっていっても、鳥じゃないのよ。巣なんて……)
 キキはこうつぶやきながら、でもだんだんとうれしい気持ちがひろがっていきました。
「巣だって」
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(10)
100%
踩一下
(0)
0%

热门TAG: