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魔女の宅急便6-18.チ、チ、チの世界

时间: 2026-09-30    进入日语论坛
核心提示:魔女の宅急便-
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17 チ、チ、チの世界
 ニニはとってもご機嫌です。やるなら派手に、徹底的に、と思いついたら、もう夢中です。
(かあさんはこの世に不思議があるのを信じない人が多くなってるってなげくけど、あります、あります、不思議はここに、わたしに、ありますですよ。びっくりしてもらいますよ。わたしの魔女の姿を見てもらうことが、そのままもちつもたれつ、おすそわけになるんだから、だいじなことよ! そうです、だいじなことです)
 ニニはもうすっかり舞い上がっています。ひそかにそろえた材料で、キキの古いドレスの改造にかかりました。
  「ドレスの裾すそには三段フリルはかかせない。
   もちろん袖そでにもフリル三段。
   ポケットにも、肩にもふりふりフリル。バラの花も満開で、ドレスの上に咲いている。
   ららら~~、巨大なリボンで頭をかざり、お星さまだって、キラキラ光る。
   めいっぱいのピカピカ魔女。ピカピカピッ。やるんだったらえんりょはしない。
   ほうきだって、靴だって、もちろんおしゃれをいたします。
   色はすべての黒のなかの黒。
   残念だけど、これだけはしょうがない。
   魔女だから、ららら~~」
 なんて、でまかせの歌を小声で口ずさみながら、背中を丸めて、いそがしそうです。
「ブブ、あんたもおしゃれしなくちゃね」
 そっと寄ってきては、脇にすわって、いささかあきれ顔で見ているブブにいいました。
「僕はいいよ、地味で。……派手ずきお姫様のおつきだから」
「ずいぶん、気のきいたこというわね。でもかわいい蝶ちようネクタイぐらい作ってあげるわよ。まかせて。わたしって作るのうまいでしょ。もしかしたら、飛ぶより上手かもよ」
 ニニは針をもった手をとめずにいいました。
 部屋の入り口の壁には、
「勉強中。読書中。立ち入り禁止。トトは出入りのとき、のぞき見禁止」の張り紙がはってあります。
「いったい何事が始まったの?」
 キキは見たくって、知りたくってたまりません。首をのばして、階段の下を、行ったり来たりしています。
「心配ご無用。魔女のお勉強でーす」
 ニニは、意味ありげに、くくくって笑いました。
「かあさん、わたしね、すてきな魔女になるからね、大丈夫よ。安心して。だから、かあさんも娘の心配しないで、自分の仕事をしっかりやってください。あなたの娘を信じなさいったら、信じなさい」
 キキは、あれっと立ちどまりました。どっかできいた言葉です。そう、昔そっくりそのまま自分もいった言葉でした。
(不思議……、教えたわけでもないのに……)
 こうなったらキキはもうなにもいえなくなりました。
 とんぼさんも、急にニニがなにかに夢中になっていることは気がついていました。
(トトとちがって、おしゃべりなニニがいつまで秘密にしておけるかな)
 でもめずらしく一つのことに夢中になっているのです。当分は見守るつもりでした。
 ニニはキキのドレスを改造して、豪華なドレスを作り上げました。自分でもおどろいてしまうほど、派手になりました。いざっていうときにほうきにつける、光る星も作りました。夜空にむけて飛び立つとき、くるくる回して、流れ星みたいに見せるつもりです。よそいきの靴にも星くずのようなビーズをつけました。
 ニニは、だれもいないときをえらんで、大きなバッグにつめて、家を出ました。
(やっぱり試してみなくっちゃ。試運転……試着飛び!)
 ニニは電車に乗り北山の麓ふもとまでいくと、人がいない森にはいって、上からすっぽりとお手製の魔女ドレスをかぶり、そっとズボンを脱ぎました。動かしてみると、裾は重たく、ゆっくりと波打っています。いい感じです。舞踏会の始まりみたいです。ニニはほうきにまたがりました。ズボンを脱いで、キキのドレスで試しても自転車ギコギコ飛びはなおらなかったのです。だから飾りをつけ、優雅なドレスにかわったとしても、なおるとは思えません。それはほぼあきらめています。でもこのかわいい服を着たら、すこしはかっこよく飛べるようになるかも……と大いに期待しているのです。
(かわいく!)
 いまではこれがニニの最大の目標です。
「さ、ブブ、いくわよ」
 ニニはいつものように地面を足でかるくけりました。ぷーっと浮いていきます。
(そうよ、この浮いていく瞬間が見せ場よね。ここをどうすてきに見せるか……だわ)
 ニニは胸をそらし、空のかなたに顔をむけ、よろこびの笑顔を作ってみました。ニニはちらちらと地上にうつる自分の影をうっとりと見ながら、浮いていきます。残念、やっぱり浮きつづけです。森の高さを抜けると、ニニは不満そうにちゅっと口をとがらせ、ゆっくりと足を動かしはじめました。
「いいじゃない、いいじゃない。あわてなければ、これは、これですてき。スカートがゆらゆら揺れて、かっこいいじゃない。ブブ、あんたも優雅にすわって、協力しなさいよ」
「ふーっ、ご心配なく。僕はね、男の優雅で、ぴっちりきめるよ」
 ブブはしっぽをぴーんと立てて、えらそうによこをむいてこたえました。
 まずは大成功と、ニニは満足です。それからいい気持ちで、北山の裾を、だれも見ていないのをいいことに、足こぎしながらでんぐりがえりとか、手ばなしとか、急降下とか、いろんなポーズを、あれやこれやと試し飛びしました。そのたびに風がひゅーひゅーとうずをまいて、ニニのそばを通りすぎ、その音がいっそうすてきに飛んでいるような気分にさせてくれました。
(見てなさいよ、きっとびっくりするから。かあさんだって、チロコだって、町の人もね、うふふ)
 ニニはすっかり満足して、地上におりると、魔女服を脱いで、バッグにつめて、来た道をもどっていきました。
 無口なトトのほうも毎日のように「ほうき楽器」をかついで、出かけていきます。
 そしてひとりになって、いつもいつも森で会った女の子のことを考えました。できたらもう一度会いたい。ぜひ会いたい。でも、この気持ちはずっと前に、同級生の女の子、サラミに感じたものとはまったくちがうものでした。森のあの子はただの女の子ではありませんでした。自分の気持ちが、女の子の姿になってあらわれたような、それに近い感じがするのです。
  「そらの たかいところから
   ちいさい かぜが おりてくる
   ふふふーふふふー
   おくりもののように
   ふふふーふふふー
   ほほを なぜて
   声ひびかせて
   さあ いきましょう
   これからの きみへ
   これからの きみへ」
 トトは何回も、何回も、歌いました。気持ちを乗せて、ゆらゆら揺れてくれるような音がいいと、トトは思いながら歌いました。
「おい、どうだい、この歌」
 いつもついてくるベベにもききました。
「ねえ、空ってさ、底ってあるの? 海みたいに」
 ベベが空を見上げていきなりききました。
「さあなあ……ないんじゃない」
「じゃ、おわりがないってこと?」
「うん、そうかな……どこまでも、ずっと先ってことかなあ。果てしないってことかなあ」
 トトはつぶやきました。そのとき、体がふーっとのびて、むこうの、むこうに目が走っていくようでした。とつぜんトトは、はっとして、もっと、もっと歌を作りたい、と強く思いました。
 あの子が「わたしの歌」っていってくれたので、もうこれでいい、これよりすてきな歌なんていらないと思いこんでいました。でも、「もっとわたしの歌になったわ」って、いってくれるかもしれないし、ほかの人、キキや、ヨモギさん、もしかしたらいつもおねえさん風吹かしてるニニだって、「これわたしの歌だわ」って、いってくれるかもしれません。トトの心がいろいろな人の心に住みはじめるかもしれないのです。トトはあの森の出来事ばかりを考えて、気持ちがずっとあそこにのこったままでした。
 トトはもうれつになにかを作りたくなりました。それはどこかに飛びこむような強い気持ちでした。あの女の子が、走っていたように、トトも走ってみたくなりました。
 そんなとき、ケケから手紙が来ました。
「トト、ああ、トト。元気?
 どうぞ気分屋のケケとよばないでください。あの森の家をはなれて、またまたひっこすことになりました。今度はこのあいだいった『パリパリ市』です。超大きい町ですよ。あたしは人のなかに飛びこんで、追いかけつづけようと思っているのです。なにを? ってききたいでしょ。それはいまだに不思議なないしょです。やるだけやってみるつもり。あたしの気まぐれ、トトにはわかってもらいたいな。
 いまだにあくせくしているケケより
 追伸、手紙はパリパリ市、中央郵便局の局留めにしてください」
(ケケおばさんも不思議を追いかけずにはいられないんだ。その気持ち、僕にもわかる。なにかを見つけたくって、とまれないんだ)
 トトは手紙を見つめながら、つぶやきました。
 ニニはさっきからだれかにつけられているような気がしていました。この数日何回もそんな気がするのです。それもあまり人の通らない道に来ると、感じるのです。
「だれ? だれなの?」
 ニニは立ちどまって、後ろをふりむきながら、思いきって大きな声でいいました。
「そんな、やめてよ。わたし、怖いよう」
 ニニは泣きそうな声をあげて走りだしました。
「あっ、まって、ごめん。怖くない、怖くないよ」
 後ろからあわてた声が追いかけてきます。
「ほんとうに、ごめん。だから、まって」
 わかい女の人がさけびながら、塀のかげから飛びだしてきました。体からさげた大きな荷物がぽんぽんと揺れています。
「おどかして、ごめん。ちょっと話、きいてほしいんだけど……おねがーい」
 ニニは思わず後ずさりしながら、立ちどまりました。大きな目が、ニニを見つめて近づいてきます。
「あなた……魔女さんでしょ。魔女さんのおじょうさんでしょ」
「………」
 ニニはぎくっと体をこわばらせました。
「そうよね、そうよね。絶対よね」
 女の人はいいながら、ニニのほうにじりじりっと寄ってきます。
「やだ、やめて。なにすんのよ」
 ニニは後ずさりしながら、どなるようにいいました。
「あー、ごめん。わたしって、いっつもこれで失敗しちゃうのよ。すぐ夢中になっちゃって、相手をこわがらせちゃう。あーあ、またやっちゃった」
 女の人は、(だめだー)っていうように、顔をしかめると、バッグを肩からおろして、地面におきました。
「わたし、ハリンっていうの。まずここから始めるべきよね、すいません。それで、何者かっていうとね、まだ何者でもないんだけどね。写真とってるのよ。いいかな……わたしの話きいてくれるかなあ」
 ハリンという女の人は汗のにじんだ顔をかるくかしげ、のぞくようにニニを見ています。その目はすんで、まっすぐにニニにむかっています。うすいお化粧のさっぱりとした顔は、悪い人ではなさそうです。
「わたし、あなたを見たとき、これだって、思っちゃったの。今度、編集長、雑誌のね、編集長からおおせつかった仕事はね、『不思議! でも、かわいい!』っていう写真をとってこいってことだったのよ。むずかしい注文でしょ。だって、『不思議』って、たいていちょっぴり怖いじゃない。でも、かわいいなんて……それがさあ、あなたはまったく、まったくもって、それにぴったりなのよ」
 ハリンは指で、バッグをさして、「ここにカメラがはいってるの。爆弾じゃないから……」と、笑いかけました。
(不思議な女の子なんていわれるの、もうききあきてるよ)
 ニニはむっとして、女の人をにらみました。
「わたしが仕事を始めた雑誌はね、『チ、チ、チの世界』っていうんだけど……しってる?」
 ニニはうなずきました。その雑誌なら、今、わかい女の子にとても人気です。おしゃれから、料理、短い物語なんかがのっているのです。写真も多く、出てくるモデルさんも、みんなのあこがれです。でも、それだけではないのです。ちょっと上をむいた雑誌というか、すてきな女の人をめざそうというところに力を入れているのが、魅力なのでした。
「このごろ、どんどん読者がふえているの。雑誌としては、今がだいじなときでね。そこで、あなた、かわいい魔女さんに登場してほしいのよ! あなたは魅力度ばつぐんよ。すごい話題になると思うわ。『コリコの町の不思議の黒バラ』なんて、題つけたら、あなたにぴったり」
「わたし、ニニっていうの」
「わ、名乗ってくれるのね。前から気になって、あとつけてたんだけど……ごめん。このところあなた、ますますかわいくなってるし、それになにより元気いっぱい。それ、とっても魅力よ。こっちもどきどきしてくるし、夢中になっちゃって。このあいだ森で飛んでたでしょ。すてきなドレスで。わたし、見てたの」
 ハリンはさらにじりじりと近づきながらいいました。
「そんなこといわれても……わたし、まだ本物の魔女じゃないし。これから修行しなけりゃならないのよ」
 ニニの頭をキキの顔がさっとよこぎっていきました。
「それがいいのよ。『チ、チ、チの世界』としては……成長過程っていうのが、重要なの。そうはいってもニニさんはもうすでにすでによ、特別の空気につつまれてる。一目で、不思議な存在ってわかる。そこがね、いいのよ。今の人たちへの贈り物になるわ。だってさ、今、不思議なんてあるわけないって考えてる人ばかりじゃない。人間がいばってるよね。このコリコの町はべつよ。あなたのおかあさんがいるから。でも、ほかの町では、みんな、目先の役に立つものばっかり追いかけて、あくせくあくせく、夢がないでしょ。あなたが思いっきりさわやかに飛んでくれたら、きっとすごいわよ。ああ、あんなかたいつぼみのような女の子にも、不思議がある。不思議って、あんなわくわくするものなんだって、人気になるわ」
 下をむいていたニニの目が細かく揺れて、
「それいいかも……」
 と、きこえるかきこえないかの声でつぶやきました。
「え、今、なんていったの?」
「うー、かあさんがね……」
「キキさんが?」
「いつもいってるの。この世にまだ不思議があることを知ってもらう役目も、わたしたち魔女にはあるんだって……」
「まあ、わたしたちが考えていることにぴったりじゃないの!」
「そうだけど……わたしはまだ旅立ち前で、一人前の魔女じゃないし……」
「そんな儀式が魔女にはあるっていうのは知ってるけど……でもね、一人前ってね、もうできあがっちゃっててさ、おどろきがすくないのよね。ふつうに感じちゃうのよね。これから……って、心がふるえてる、そしてちょっとおびえている、そこがいいのよ、今のあなたみたいに」
「でも、かあさんは、だめっていうと思う。ちゃんと決まりをすませてからじゃなくちゃ、だめって。かあさんは、そういうきちんとがすきなの」
「そうねえ……その気持ちもわかる。大人はいつもそうだから。でもさ、ニニさん、おどろきっていうのもたいせつよ。あなたがどきどきしながら、飛ぶと、その一生懸命な気持ちが伝わるのよ。あなたのおかあさんはすてきな魔女だけど、飛べるのはもう、ちょっと当たり前な感じになってるでしょ。
 だけどニニさんはまだはじまったばかり。だから、これからなにかをしようって、思ってる子たちには、上手より、ちょびっと失敗しそうなほうが、身近に感じるのよ。それだからこそあこがれる気持ちが生まれてくるの」
「そうなの?……」
 ニニは口ごもりながら、町で会ったときのチロコの姿を思いうかべていました。なにかにむかって、勇んでいたチロコ、目が輝いて、ほっぺたがぽーっと赤くなっていました。あのとき、ニニのなかで、自分も負けたくない! っていう気持ちが生まれてきたのです。
 ハリンはニニの気持ちにかぶせるように、早口でいいました。
「だからといって、だれでもが空を飛べるわけではないけど……でもそこで気がつくのよ、もしかしたら自分にもなにかいいことできるかもしれないって。魔法があるかもしれないってね」
「魔法?」
「そう、わたしはね、だれでも一つは魔法をもってるって思ってるのよ。わたしのかあさんは、掃除がすきで、しかもばつぐんに上手でね。ほうきをもたせたら、天下一品。いまじゃ、掃除の先生になってる。だいすきなんだってさ。信じられない。掃除がすきなんてさ。残念なことにわたしに遺伝してない! でもね、わたし、これって、かあさんの魔法だって思ってるの。ふふふふ、わたしのかあさんも、あなたとおなじほうきで勝負なんて、ちょっと笑えるね」
「じゃ、ハリンさんが、ここにいるのも魔法なの?」
「まあ……ね。でもまだまだ力よわいけどさ。力つけてる最中よ。だから、あなたの姿を見て、びりって来たのよ」
 ハリンは、重いバッグをもちなおして、大きくうなずきました。
「なんか、そのいいかた、うまくない?」
 ニニがいいました。
「魔法つかってるかな……ふふふ、わたしも」
 ハリンは肩をすくめて笑いました。
「でも、これだ! って、思っちゃったの、あなたのこと。だから協力してよ」
 ニニはうなずきかけて、やっぱりキキのことを考えていました。
(かあさん、気に入らないだろうなあ、きっと……)
 その気持ちを察したのか、ハリンはぐっとのりだしていいました。
「もし、『チ、チ、チの世界』で、ニニさんの姿を大勢の人が見たらよ、まずはいいものを見たって思うわ。さわやかで、かわいくて。わたし、絶対いい写真をとるから。全力をつくすわよ。それを見たら、だれだって力がわいてくる。年とった人だって、わかいっていいなって思うし、まだまだ自分もなにかできそうだぞって思うかもしれない」
「それって、大げさだわ、わたしにはそんな力ない」
 ニニはすこし不機嫌になってきました。
「ある!」
 ハリンは負けずに口をとがらせました。
「ない! まだ!」
「あなたって、世のなかの決まりにこだわるのね。不安なんだ。だけど力ってね、いつだって欲張りなのよ。もっと、もっとって、がんばるのが力よ。だからいつだってあるの、ないなんてことないの」
 ニニはなにかいいかけて、やめました。でもやっぱりキキの気持ちが気になります。
(いい子でいたい!)さんざんいいたいほうだいだったニニのなかにも、いい子の部分がちゃんと住んでいたのです。
 でも、チロコのように、自分で決めたいという気持ちもだんだんと大きくなってきました。
(かあさんの許可をとらなくちゃできないなんて……)
「協力してもいいわ」
 ニニはいいました。するりと口から出て、先に走りだした自分の言葉におどろいています。あっと、口をおさえました。
「ほんと? やった!!」
 ハリンはぎゅっと両手をにぎりしめました。
「まかせて、必死で、いい写真とるから。やってよかったって、絶対思わせるから」
「それは、絶対よ。ほんとよ。みんながよかった! って、いってくれなきゃ。それにかわいく! 宝物以上よ、約束よ」
 ニニは笑っていいました。
「わかった。そうと決まったら、はやいほうがいい。じつは締め切りが決まってるのよ。あさってじゃ、どお? お天気はつづきそうだし。今年の夏は、めずらしく海坊主風も来なかったものね」
「いいわ」
 ニニは、その日、キキがいないことを思い出しました。ヤアくんのお嫁さん、ノノちゃんのおなかに赤ちゃんができたので、キキがお見舞いにいくことになっていたのです。昔からの風習で、魔女にお腹をさすってもらうと、健康な赤ちゃんが生まれるといわれているのです。それで、ヤアくんのたってのたのみで、キキは泊まりがけでモリさんの田舎へいくことになっているのです。
「はやいほうがいいわ。約束破りたくなると悪いから」
 ニニはにやっと笑いました。
「じゃ、あさって。だれにも見られないほうがいいから、あなたが練習してた森のとこじゃどう? なにしろおどろきがたいせつだからね。でも最後にやっぱり時計台のとこを飛んでる写真もほしいな。うまくわからないようにとるから、安心して。わたしだって、絶対これは成功させたいもの。お昼ごろ、どう? あなたの影が地面にきれいにうつるから」
「わかった」
「じゃ、十二時。それからあの洋服がいい。もってきてね。かわいいね、あれ」
「わたしがかあさんの古いドレスを作りなおしたのよ。ほめられて、うれしいわ」
「へー、うまいのね。おどろきよ、おせじじゃないよ」
 ハリンは、ほんとうにおどろいたように、目を丸くしました。
「そんなことも、できるんだ!」
「じゃあ、あさって」
 ニニはそういうと、歩きだしました。なんだかうれしい気持ちでした。すっかりキキかあさんの重しは消えていました。
「じゃ、あさって、わすれないでよ」
 ハリンがまだすこし心配そうな声で後ろからいいました。
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