ゴールデンウイークまっただ中の5月上旬のとある夜、長瀬は愛車で都内を走っていた。助手席にAさんを乗せているせいか、ついつい笑顔がこぼれる。
そのまま車を1時間ほど走らせて行き着いた先は、郊外にある一戸建て。住宅街にあるその家まで続く一方通行の細い道を、長瀬は迷うことなくまっすぐ進んだ。その家は彼女の実家だった。
まず彼女が愛猫を抱えて自宅に入った。そしてそのすぐ後ろを、猫のゲージを持った長瀬が続く。「こんばんは~」。よく通る大きな声で彼女の両親にそう挨拶すると、長瀬は夜目にもよくわかるほどの笑顔を浮かべて家の中へと入っていった──。
長瀬とAさんの交際は1年ほどになるという。
「Aさんの父親はもう退職されていますが、長く大企業の重役を務められていたかたで、母親は音楽家。Aさんは東京芸大出の美人バイオリニストですから、このあたりでは有名なお嬢さんなんですよ。長瀬さんとは、音楽番組で共演したのをきっかけにつきあい始めたそうです。
Aさんは都内で暮らしているんですが、連休は実家で過ごすと言っていましたから、長瀬さんが猫も一緒に送っていくという話になったんでしょう。ご両親も礼儀正しい長瀬さんのことはすごく気に入っているそうですよ」
その夜、長瀬はしばらくAさんの実家に滞在すると、再び愛車に乗り自宅へと帰っていった。そして今度はバイクに乗り換えて、仲間たちと都内のカフェで合流。テラス席でコーヒーを飲みながら、バイク談議に花を咲かせていた。
【ついつい】不知不觉,无意中,不由得。
【話に花が咲く】话讲得热闹起来。