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带电人M-秘密箱子

时间: 2022-01-30    进入日语论坛
核心提示:秘密の箱 明智は事務所を出る前に、警視庁に電話をかけ、親友の中村警部を呼びだして、なにか打ちあわせをしました。そして、遠
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秘密の箱


 明智は事務所を出る前に、警視庁に電話をかけ、親友の中村警部を呼びだして、なにか打ちあわせをしました。そして、遠藤博士にも、これから、おじゃますると電話をしてから、アケチ一号の自動車に乗って、博士邸へ急いだのです。
 博士は待ちうけていて、ふたりを応接室に通し、今までのことを、くわしく話して、名探偵の力を借りたいと、頼みました。
「それでは、これから、家の中を調べさせていただきましょう。ところで、助手の木村さんという方は、おいでになるでしょうね。」
「ええ、自分の部屋におります。その部屋は研究室のすぐ前にあるのです。」
「そうですか。では、あちらで、木村さんにもお会いしましょう。」
 そして、遠藤博士の案内で、明智と小林少年は、まず、研究室にはいって、すみずみまでも、くわしく調べ、はしごを持ってきて、天井までも調べたのです。
 それから、みんなは木村助手の部屋に、はいっていきました。
 木村助手は椅子から立ち上がって、びっくりしたような顔で、みんなを迎えました。博士は木村助手を明智探偵にひき合わせました。
「木村さん、きょうは、家じゅうを、全部調べるのです。いま研究室を調べたところです。ちょうど、すぐ前なので、こんどは、あなたの部屋を調べさせてもらいますよ。」
 明智探偵はそう言って、部屋の中を、あちこち歩きまわって、調べはじめました。
「このなぞを解くかぎは、四角な窓と、秘密の箱です。窓から、お化けがとびだす。箱からもお化けが出てくる。ぼくは、その窓と箱を捜しているのです。」
 明智探偵がみょうなことを言いました。
「窓ですって。研究室も、この部屋も、窓には、みんな鉄格子がはまっていますが……。」
 博士がふしぎそうに、聞きかえします。
「いや、その窓ではありません。もっと別の窓があるのです。いまに、わかりますよ。それから、秘密の箱です。ぼくは、それを、この部屋から捜しだしたいと思っているのです。箱根細工(はこねざいく)の秘密箱のようなものが、この部屋にあるにちがいないのです。」
 いよいよ、へんなことを言います。
「え、この部屋に? ここには、ベッドと机のほかには、なにもありません。戸棚がありますが、ごらんください、中には、がらくたばかりです。」
 木村助手が、その戸棚の戸を開いて見せました。
「いや、そんな、すぐにわかるような場所ではありません。箱根細工ですよ。その箱はとんでもないところに、かくしてあるのです。お見せしましょう。ここですよ。」
 明智探偵は、つかつかと、ベッドのそばへ、近よりました。そして、いきなりベッド・カバーをめくり、毛布をめくり、敷布団まで、はねのけてしまいました。
「あっ、なにをなさるのです。それはぼくの寝ているベッドです。なにもあやしいことはありません。」
 木村助手が、驚いて、明智の手を止めようとしました。
「ところが、このベッドに秘密があるのです。きみは知らなかったかもしれないが、これが、箱根細工の秘密箱ですよ。」
 明智探偵は布団をみんなはねのけてしまって、そこにあらわれた板のようなものをグッと持ち上げました。すると、その板が(ふた)になっていて、下に大きな箱のような空洞(くうどう)があることがわかりました。つまり、クッションの中に、大きな箱がつくりつけてあったのです。
 その長さ一メートル二十センチもある箱の中に、みょうなものがはいっていたのを、明智探偵がとりだして、みんなの前にひろげました。
「あっ、電人Mだっ!」
 小林少年が、さけびました。
 そうです。それは電人Mのぬけがらだったのです。セミのぬけがらのように、電人Mの外がわだけが、そこに丸めてあったのです。プラスチックの大きな顔、黒くてうすい鉄でできたロボットの着物のようなもの。やっぱりそうでした。これを人間が着て、ロボットに化けていたのです。それが木村助手のベッドの中から、あらわれたのは、いったい、どういう意味なのでしょうか。
 みんながあっけにとられていると、ちょうどそのとき、コツコツと、ドアにノックの音が聞こえました。
 ドアの近くに立っていた遠藤博士が、ドアを開きますと、外に三人の背広姿の人が立っていました。
「あ、中村君、いいところにきてくれた。いま、秘密をひとつ発見したところだよ。」
 明智探偵が、にこやかに、呼びかけました。
「おお、明智君、さっきの電話でやってきた。きみの指図のとおり、この家の表と裏に、三人ずつ見張りの刑事を立たせてある。ここにいるふたりも、ぼくの課の刑事だ。」
「うん、よくやってくれた。きみたちは、ここにいてくれたまえ。犯人はこの家の中にいるんだ。」
「えっ、この家の中に?」
「うん、いまにわかる。部屋にはいって、ドアのところに、がんばっていてくれたまえ。」
 明智探偵は、中村警部たちのために、電人Mのぬけがらを、発見したことを話したあとで、ベッドの箱の中においてある、もうひとつのものを、指さしました。
「これはテープ・レコーダーだ。コードが箱のすみからベッドの下に出ている。そして、床板の隙間をつたって、むこうの柱の横から、天井の空気穴まで、つづいている。コードが、柱とかべのすきまに、うまくかくしてあるから、ちょっと見たのではわからない。
 遠藤さん、さっきぼくが四角な窓といったのは、この天井の空気ぬきの穴ですよ。この部屋ばかりではありません。研究室やあなたの寝室にも、おなじ空気穴があります。そして、このテープ・レコーダーのコードは、その両方の部屋の空気穴の上まで、ひっぱってあるのです。少年探偵団のポケット小僧が、今朝、天井裏にしのびこんで、すっかり調べたのですよ。」
「あっ、そうだったのか。じゃ、わたしの寝室で聞こえた声も、研究室で電人Mと治郎が争っていた声も、このテープ・レコーダーから出ていたのですね。空気ぬきの穴の上に、スピーカーが仕掛てあるのですね。」
 博士が、すっかりわかったというように、うなずきながら、いうのでした。
「そうです。このテープ・レコーダーに電人Mの声も治郎君に似せた声も吹きこんであって、それを、都合のよいときに、回転させたのです。これで密室のなぞが解けました。電人Mと治郎君が争う声がしていたとき、研究室にはだれもいなかったのです。スピーカーの声だけが聞こえていたのです。」
「それじゃ、そのとき治郎は、どこにいたのでしょう?」
「秘密の箱の中ですよ。」
「えっ、それじゃあ、この……。」
「そうです。このベッドに仕掛た、秘密の箱の中に、入れられていたのです。おそらく、さるぐつわをはめられたうえでね。」
「そうでしたか。そして、さわぎが静まったあとで、外に連れ出し、あの自動車に、乗せたのですね。しかし、まだわからないことが、いろいろあります。最初の晩、電人Mが階段からおりてきたとき、あいつは、たしかに研究室の方へ来たのです。この廊下は行き止まりの一本道です。どこも逃げるところはありません。それでいて、あいつは、廊下をもどってこなかった。きえてしまったのです。」
 博士がいぶかしげに言いました。
「あのとき、電人Mが研究室の方へ行って、しばらくすると、この助手部屋から、木村君が出てきたということですね。あなたがピストルを持って、待ちかまえているところに、電人Mではなくて木村君があらわれたのですね。」
「そうですよ。すると……。」
 博士はびっくりしたような声をたてました。
 そのとき木村助手が、サッとドアの方へかけだしました。そして、待ちかまえていた中村警部たちに、抱き止められてしまったのです。
 みなさん、木村助手はなぜ逃げようとしたのでしょう。かれは犯人の仲間だったのでしょうか。それとも……。
「木村君には、後で話すことがある。しばらくそこに、待っていたまえ。ところで遠藤さんや中村君には、もうすこし説明しておきたいことがある。まだ、なぞが残っているからです。
 研究室のかべや、自動車のヘッド・ライトにMという字があらわれた秘密。これはもうおわかりでしょう。遠藤さんが研究室を出られたときに、中に残っていた木村君が呼びとめたのです。部屋にもどってみると、かべにMの字が大きくあらわれていました。ね、おわかりでしょう。あれを書いたのは木村君でした。黒のクレヨンで大急ぎで書きなぐったのです。
 自動車のヘッド・ライトのMの字は、遠藤さんが会の帰りに、お友だちを、そのうちまでお送りになった。そのとき、自動車がとまっている隙に、ガラスにあの字を書いたのです。友だちをお送りになることは、前もってわかっていたので、たぶん木村君が先まわりをして、待っていたのですね。夜のことですから、運転手にも気づかれないように、地面をはっていって、あれを書いたのでしょう。」

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