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带电人M-谜底揭穿

时间: 2022-01-30    进入日语论坛
核心提示:大発明の秘密 そのあくる日の夜明けごろ、月世界の見世物の大月球のまわりには、大ぜいの人が集まっていました。 名探偵明智小
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大発明の秘密


 そのあくる日の夜明けごろ、月世界の見世物の大月球のまわりには、大ぜいの人が集まっていました。
 名探偵明智小五郎、遠藤博士、少年探偵団長小林少年、ポケット小僧をはじめ、少年探偵団員二十三名、警視庁捜査一課の係長中村警部、制服警官三十名、背広の刑事十名、総勢七十人に近い人数です。それらの人たちをはこんできた、パトカーや、ふつうの自動車が、広っぱの端に、ずらっとならび、その中に、犯罪者をはこぶための大型の警察自動車が五台もまじっています。勇ましいとりものの、せいぞろいです。
「もう、爆発してから六時間以上たっています。大丈夫ですよ。わたしの発明した力は、爆発してから五時間たてば、まったく害がなくなるように、できているのです。そうするために、わたしはひじょうに苦心しました。作用を早くなくするということですね。敵を倒しても、こちらも近づけないのでは、どうすることもできませんからね。」
 遠藤博士が、説明しました。いま、遠藤博士と明智探偵と、中村警部の三人は、肩をならべて、大月球の裏がわの、プラネタリウムの入口に近づいて行くのです。
 入口の大とびらには、むろん、かぎがかかっていましたが、明智探偵が万能鍵をとりだして、なんなくそれを開きました。
「あっ、ここに倒れている。」
 中村警部が、大きな懐中電灯で、その男を照らしました。出入口の番人です。
 警部は入口の外にでて、手を振って、合図をしました。すると、大ぜいの警官たちが、かけよってきて、気を失っている番人を、警察自動車へ運んで行きました。
 それから、明智探偵、中村警部、遠藤博士の三人を先に立てて、全部の人びとが、プラネタリウムの中へ、はいって行きました。
 スイッチを捜すのに、てまどりましたが、やっとそれを捜しあてて、天井の電灯をつけました。プラネタリウムの中は、パッと、昼間のように明るくなったのです。
 二十面相や部下たちは、魚市場のマグロのように、ゴロゴロと、ころがっていました。
「あっ、こいつが二十面相だ。まるで将軍みたいな服を着ている。」
 明智探偵が、つぶやきました。
「みんな自動車へ運んでください。手荒くしても、大丈夫ですよ。こいつらは、百二十時間はけっして目をさましませんからね。いくら二十面相でも、もう、逃げだす力はありません。」
 それから、二十面相と百人に近い部下たちが、外に運びだされ、警察自動車に、グングンつめこまれました。
 しかし、いちばんだいじなのは、遠藤治郎君を助けだすことです。
 そのために、明智探偵と、遠藤博士と、中村警部と、小林団長と、ポケット小僧の五人が、秘密戸を開いて、階段をおり、二十面相のすみかへと、おりて行きました。
「爆発の力は、こっちのほうにも、作用しているのでしょうね。」
「そうです。治郎もやられているに、ちがいありません。あの銀色の玉には、上下左右、直径百五十メートルのなかにあるものは、みんなやられるような力が、仕掛てあったのですから、二十面相のすみかにも、むろん、作用しています。たとえ、部下のやつが、こっちのほうに、残っていたとしても、そいつらも、やられているのです。」
 ポケット小僧が、案内役です。狭いコンクリートの廊下を、ポケット小僧と大型の懐中電灯を持った中村警部が、さきにたって、歩いて行きました。
「あっ、ここが美術室です。」
 ポケット小僧がさけびました。そして、両方の腰に、手を当てて、グッとそりかえって、いかにも、もったいぶった姿勢になると、おもおもしい声で、
「ひらけ、ゴマ。」
と、唱えました。すると、スーッと、音もなく開くドア。カチンとスイッチをいれますと、宝石や金や銀でチカチカひかった、目もくらむようなガラス棚がならんでいました。
 むろん、これらの宝物は、ぜんぶ警察に運んで、それぞれの持ち主に、返すことになるのです。
 治郎少年のとじこめられている部屋は、ポケット小僧も知らないので、捜すのに、骨がおれましたが、ある場所で、「ひらけ、ゴマ。」を唱えますと、秘密のドアが開き、その小部屋のベッドの上に、治郎君が気を失っていました。すぐに、助けだして、自動車に乗せたことは、いうまでもありません。
 みんなは、つぎに、電気室へはいって行きました。タコのような火星人に、つぎつぎと、命を吹きこんだ、あの部屋です。明智探偵は、その部屋を念入りに調べたあとで、種明しをしました。
「むろん、いくら電気の力だって、命を吹きこむなんて、できるはずはありません。二十面相の好きな手品ですよ。火星人の型をつくって、箱にいれて、電気をかけたのですね。ごらんなさい。ここにその箱がある。みんな二重底ですよ。タコ入道の衣装をつけた部下のやつが、底にかくれていて、命を吹きこまれたようにみせかけて、箱から出てきたのですよ。
 こちらの鉄の小部屋へ、人間がはいると、からだがくずれて、骸骨になってしまった、というのですが、これは、鏡の奇術です。あらかじめ、骸骨を立ててある。それから、肉のくずれた人形が立ててある。ここにはいった人間にあたっている電灯を、だんだん暗くして、人形の方を明るくすると、肉がくずれたように見える。つぎには、骸骨を照らす電灯を明るくして、ほかの電灯を暗くすると、それが鏡にうつって、骸骨に変わったように見えるのです。」
 明智探偵はそう言って、自分が鉄の小部屋にはいると、電灯をつけたり、消したりして、だんだん骸骨に変わっていくところをみせるのでした。
 そのとき、どこかへ、いっていたポケット小僧が、とびこんできました。
「先生、わかりました。治郎君は、向こうの部屋で、何百という火星人にとりかこまれたといっていましたが、火星人に化けた二十面相の部下が、そんなにいるはずはないと、ふしぎに思っていたのです。そのわけが、わかりました。あそこは、かべに鏡をはりつめた部屋だったのです。鏡から鏡に反射して、十人ぐらいの火星人が、何百人にも見えたのです。」
 ここにも二十面相の奇術があったのです。ああ、二十面相は、なんという奇術好きなやつでしょう。
 こうして、すべてのなぞは解け、治郎君は無事にもどり、二十面相と全部の部下は、気を失ったまま、とらえられ、盗まれた美術品は、すっかり、取りかえすことができました。
 明智探偵たちが、プラネタリウムの外へ出たときには、たくさんの自動車が、もう出発の用意をととのえていました。少年探偵団の少年たちも、五台の自動車に乗って、その窓から顔を出して、こちらを見ていました。
 明智探偵と小林少年があらわれると、少年たちは、両手を上げて、声をそろえてさけびました。
「明智先生、バンザーイ。」
「小林団長、バンザーイ。」
 そして、自動車の行列は、パトカーを先に立てて、静かに、広っぱを出て行くのでした。
 中村警部も、小林少年も、ポケット小僧も、それぞれ、自動車に乗りました。そして、全部の自動車が出発してしまったあとに、小林少年とポケット小僧の乗った、「アケチ一号」の自動車だけが、残っていました。月球のねもとにもたれて、なにかヒソヒソと話し合っている、明智探偵と遠藤博士を、待っているのです。
 ふたりの頭の上には、月球の噴火口のような大きな穴が、いくつも開いていました。ふたりは、そこによりかかって、話をしているのです。
「博士、あなたの発明の意味がわかりました。じつに恐ろしい力です。あの力はコンクリートでもなんでも、つきぬけて作用するのですね。」
「そうです。鉄でも、ナマリでも、石でも、どんな鉱物でも、じゃますることはできないのです。原爆、水爆のためにつくった防空ごうでも、この力には、なんの効果もないのです。これを、わたしは遠藤粒子(りゅうし)と名づけました。仮死(かし)粒子といってもいいのです。
 わたしは、原爆、水爆に打ち勝つのには、どうすればいいかということを考えたのです。十数年の間、夜の目も寝ないで、研究をつづけました。そして、とうとう、これを発明したのです。これをなしとげるまでには、何百、何千の動物を殺しました。田舎の牧場の何百というヒツジの群れが、いっぺんに死んでしまったことが、いくどもありましたが、あれは、わたしの研究のぎせいになったのです。
 殺してしまってはいけない。生きかえらせなければならない。わたしの苦心は、そこにあったのです。
 しかし、とうとう、完成しました。もう、われわれは、一滴の血も流さないで、戦争に勝つことができるのです。
 仮死粒子のある分量をロケットに積んで、敵の大都会の上で爆発させれば、大都会の何百万の人が、一瞬に、仮死状態におちいるのです。なんの苦痛もありません。百二十時間の間、ぜったいにさめることのない、深い眠りにおちいるのです。
 この粒子爆弾を十発とばせば、大きな国の人民を、全部仮死させることができます。
 そして、政府と軍隊のおもな人たちをひっくくって、とじこめてしまい、原水爆などの武器を、全部、こちらで保管してしまえば、その国はこちらの思うままです。百二十時間たてば、人民たちは目ざめますが、もうなんの力もないのです。
 遠藤粒子によって、全世界を思うままにできるのです。もし、わたしが、ナポレオンだったら、あるいはヒトラーだったら、この力で世界を征服し、世界の帝王になろうとしたかもしれません。」
「ああ、恐ろしいことだ。」
 明智探偵が、思わず、つぶやきました。
 ふたりは、顔を向き合わせて、じっとおたがいの目の中をのぞきこみました。たっぷり一分間、そうしたまま、身動きもしないでいました。
「二十面相が、この発明に目をつけたのは、いかにも、あいつらしいですね。あいつはヒトラーになりたいのです。あいつは、人を殺したり、傷つけたりして、血を見ることが、大嫌いですから、この発明は、あいつにはもってこいだったわけですね。」
「そうです。わたしとあいつとの考えは、その点では同じでした。あいつが、これを盗むために、あれほど一生けんめいになったのも、無理はありません。」
「で、あなたは、この発明をどうするつもりですか。」
 明智探偵が、心の底を見ぬこうとするような、するどい目で、遠藤博士を見つめました。
「滅ぼします。」
「えっ、滅ぼすとは?」
「仮死粒子の原理を滅ぼすのです。わたしの頭の中の墓場にうずめてしまうのです。いま、それを決心しました。ある国が、この仮死粒子を手にいれたら、世界は思うままになります。しかし、その国がかならずよい政治をするとはかぎりません。人間の心には悪があるからです。たとえ日本のためにでも、わたしはこの秘密を、打ち明けないことを、かたく決心しました。
 わたしが死ぬまでは、わたしの頭の中の墓場へ、そして、わたしが死ねば、この秘密は永遠の秘密となるのです。」
 遠藤博士は、そう言って、よく晴れた朝の青空をみあげました。そのおだやかな顔には、聖者のようなにこやかな笑いが、ただよっているのでした。

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