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大金块-解开的谜题

时间: 2021-10-30    进入日语论坛
核心提示:とけたなぞ 四人はしばらくのあいだ、三つの岩のみごとさに、金塊のことなどすっかりわすれてしまって、ただ見とれているばかり
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とけたなぞ


 四人はしばらくのあいだ、三つの岩のみごとさに、金塊のことなどすっかりわすれてしまって、ただ見とれているばかりでしたが、やがて、宮瀬氏がやっと暗号のことを思いだして、明智に話しかけました。
「見たところ、烏帽子岩と獅子岩とは五十メートルもはなれているようですが、この獅子がどうして、あの烏帽子をかぶることができるのでしょう。暗号には『獅子が烏帽子をかぶる時』とありますが、大地震でも起こらないかぎり、この二つの岩がかさなりあうことなんて、思いもおよばないじゃありませんか。明智さん。あの暗号をどうお考えになります。」
「ぼくも今それを考えていたところです。あの暗号は、この獅子岩がほんとうにあの烏帽子岩をかぶるという意味じゃなく、何かもっと別のことだと思うのです。もう少ししらべてみましょう。」
 さすがの明智探偵にも、それだけがまだわからないのでした。
 それから、四人はごつごつした岩の道を歩いて、獅子岩、烏帽子岩、カラス岩の順に、一つずつそばへよってしらべてまわりました。近よって見ますと、三つとも見あげるような大岩で、なんだかおそろしくなるようでしたが、不二夫君は大喜びで、小林少年をさそって、岩の上へよじのぼって、下にいるふたりのおとなに「ばんざい。」などとさけんでみせたりするのでした。
 明智探偵はそれらの岩を、一つ一つたんねんにしらべているようすでしたが、べつにこれという発見もないらしく、四人はまた、もとの獅子岩のそばへもどってきました。
 島へ上陸したのは午後三時ごろでしたが、岩を見まわっているうちに、いつのまにか時間がたって、もう五時をすぎていました。太陽は西のほうの海面に近づいて、だんだん形が大きくなり、赤い色にそまっていくのでした。
 不二夫少年は、またしても獅子岩の上によじのぼって、ひとりではしゃいでいましたが、とつぜん大きな声でさけびました。
「やあ、すてきすてき、獅子の形があんなにのびちゃった。小林君、ごらん、獅子の頭がもう少しでむこうの烏帽子岩にとどきそうだよ。ぼくの影もあんなに長くなっちゃった。ほらほら……。」
 さけびながら、不二夫君は獅子岩の上で手をふってみせましたが、その手の影が、ずうっとむこうの岩のはだにうつって、ひらひらと動いているのです。
 不二夫君のいうとおり、獅子岩の影は、今にも烏帽子岩にとどきそうになっています。下に立っている三人は、不二夫君に教えられてその影をじっと見つめていましたが、やがて、明智探偵がハッと何ごとかを気づいて、うれしそうな声で宮瀬氏に話しかけました。
「宮瀬さん、わかりました。暗号のなぞがとけたのです。不二夫君のおかげですよ。今の不二夫君のことばで、すっかりなぞがとけたのです。」
「エッ、不二夫のことばで? わたしにはさっぱりわかりませんが……。」
 宮瀬氏はびっくりしたように、名探偵の顔を見つめました。
「ごらんなさい。不二夫君に教えられて気がついたのですが、獅子岩の影があんなにのびて、今にも烏帽子岩に、とどきそうになっているじゃありませんか。もう少し太陽がさがれば、影はもっとのびて、ちょうど獅子の頭が烏帽子岩の下のほうにうつるでしょう。すると、獅子が烏帽子をかぶるわけじゃあありませんか。暗号の意味は、獅子の頭の影が、烏帽子岩にうつって、ちょうど、烏帽子をかぶったように見える時ということだったのですよ。」
「ああ、なるほど、そうだ、そうだ、そうにちがいありません。やっぱりその場へ来てみなければわからないものですね。まさか影とは気がつかなかった。
 不二夫、おまえは、たいへんなてがらをたてたんだよ。おまえがなにげなくいったことばから、明智先生が暗号をといてくださったのだよ。」
 宮瀬氏はうれしまぎれに、岩の上の不二夫君に、大声に呼びかけるのでした。
「もう少しです。もう少し待てば、獅子が烏帽子をかぶった形になります。ちょうどそのときに、あのカラス岩の頭の影がどのへんにさしているか、それを見さだめなければなりません。その頭の影の頂上から、東へ三十尺はかり、それから北へ六十尺はかればいいのです。そこに戸のようになった岩があるわけです。」
 いっているうちに、太陽はみるみる西の水平線にちかづいて、獅子岩の影は、だんだんのびていきます。
「さあ、みんな、あの烏帽子岩の前へ行って、獅子が烏帽子をかぶるのを見ていてください。ぼくはカラス岩のむこうへ行って、カラスの頭の影がどこにさすか見さだめます。」
 明智のさしずで、宮瀬氏と不二夫君と小林少年の三人は、烏帽子岩のほうへかけだしました。明智はただひとり、カラス岩のむこうへ走っていきます。
 しばらくすると、烏帽子岩の前から小林少年のかんだかい声がひびきました。
「先生、今です。ちょうど、獅子が烏帽子をかぶった形になりました。」
 すると、カラス岩のずっとむこうから、明智の声が答えました。
「ようし、それじゃあ、みんなこっちへ来てくださあーい。」
 三人が大急ぎでかけつけますと、明智はカラス岩の頭の影をふんで、にこにこ笑いながら立っていました。
「さあ、小林君、きみのリュックサックから、巻尺をだしたまえ。いま、ぼくの立っているところから、東へ三十尺はかるのだ。」
 小林君が手ばやく巻尺を取りだしますと、明智は、その巻尺のはしを、くつでふんで動かないようにして、それから、時計のくさりについている磁石を見ながら、右手を上げて、東の方角をさししめしました。
 小林君はその指のさししめす方角へ、巻尺をのばして歩いていき、ちょうど、三十尺(九一メートル)のところで立ちどまりました。
「ここが三十尺です。」
「よし。それじゃ、そこに動かないで立っているんだよ。」
 明智がそういって、はしをふんでいた足をのけますと、小林君は巻尺のハンドルをまわして、もとのように巻きました。
 明智は大急ぎで小林君の立っているところへ行き、また巻尺のはしをふんで、こんどは、北の方角をさししめします。すると、小林君は巻尺をのばしながら北へ北へと歩いていきましたが、そのへんも、やはり、でこぼこになった岩ばかりの道で、それが急な坂になって、谷のようなくぼ地へくだっているのです。
「ここがちょうど六十尺(十八二メートル)です。」
 やがて、そのくぼ地の底から、小林君の声が聞こえてきました。
「何かあるかい?」
 明智がたずねますと、
「ええ、みょうなほら穴みたいなものがあります。」
という答えです。
 そこで、三人は急いで、小林君の立っているところへ行ってみましたが、いかにも、その谷底のようになった一方の岩はだに、大きなほら穴の口があいているのです。
 明智をさきに立てて、一同がそのほら穴の中へはいってみますと、五メートルほどで行きどまりになっていることがわかりました。
 あさい穴ですけれど、それでも、奥のほうはよく日がささないので、うすぐらくなっていて、目がなれるまでは、何があるのかよくわかりませんでした。
 明智はそのほら穴の中を、あちこちとしらべましたが、やがて、何か発見したらしく、
「あ、これだ、これだ、宮瀬さん、岩の戸を見つけましたよ。」
とさけびました。
 みなは、ハッとして、いきなりそこへかけよりました。
「ごらんなさい。この大きな岩がふたのようになって、穴の奥へ行く道をふさいでいるのです。ちょっと見たのではわからないけれど、この岩はここへはめこんであるのですよ。
 たしかに穴をかくすために、岩でふたをしたのです。暗号にある『岩戸』というのは、この岩のことにちがいありません。」
「なるほど、そうらしいですね。すると、この岩の奥に深い穴があるのでしょうか。」
「たぶんそうだと思います。ひとりではとても動かせませんが、みんなで力を合わせたら、この岩を取りのけることができるかもしれません。ひとつやってみようじゃありませんか。」
 そこで、四人は力を合わせて、エンヤエンヤとその大岩をゆり動かしはじめました。

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