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黄金豹-明智侦探事务所

时间: 2021-12-01    进入日语论坛
核心提示:明智探偵事務所 名探偵明智小五郎の事務所は、一年ほどまえから千代田(ちよだ)区にあたらしくたった麹町(こうじまち)アパートと
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明智探偵事務所


 名探偵明智小五郎の事務所は、一年ほどまえから千代田(ちよだ)区にあたらしくたった麹町(こうじまち)アパートという高級アパートに、移っていました。
 それは都営アパートなどよりも、ずっとりっぱな建物で、明智が借りているのは、二階の一区画で、広い客間、食堂、書斎、浴室、台所など、五つほどの部屋でした。名探偵はそこを、事務所と、住まいの両方につかっているのです。入口には、『明智探偵事務所』とほった金色の小さい看板が、かかっていました。
 明智夫人は、長い病気で、ずっと高原療養所にはいっていますので、いまは名探偵と少年助手の小林君と、ふたりきりなのです。ですから、ふたりは、まるで親子のような、したしいあいだがらでした。女中もおかず、食事は近くのレストランから、とりよせることになっていて、パンを焼いたり、コーヒーをいれたりするのは、小林君のやくめでした。小林君が、仕事でそとへ出ているときは、名探偵自身で、それをやるのです。
 黄金豹が東海道線の列車の中にあらわれた、あの事件があってから、十日ほどのちの、ある日の午後のことでした。アパートの二階の客間で、大通りを見おろす窓のそばに名探偵と小林少年とが、イスにこしかけて話しをしていました。
「先生、黄金豹は、あれっきり、すがたをあらわしませんね。どこにかくれているのでしょう。あのとき東京駅で、みょうなじいさんが、いまに、みんなのどぎもをぬくようなことを、やるだろうといったそうですね。先生、あのじいさんは、いったい、なにものでしょう?」
 小林君が、たずねました。
「あれは黄金豹と一心同体のやつだよ。きみは、ネコじいさんをおぼえているかい。ほら最初、黄金豹がとびこんだまま、消えてしまったあのうちに、へんなじいさんがいた。ネコを十六ぴきも飼っているネコじいさんがいた。あのじいさんと東京駅にあらわれたじいさんとは、同じかもしれない。いやまだあるよ。園田さんのうちに、助造(すけぞう)じいさんに化けて住みこんでいたのが、やっぱり、ネコじいさんの変装かもしれない。いずれにしても、あのネコじいさんさえ、つかまえれば、黄金豹の秘密がわかるだろう。ぼくは、警視庁の中村警部に、そのことを話しておいたから、警視庁でも、一生けんめいに、ネコじいさんを捜しているのだよ。」
「でも、まだ見つからないのですね。」
「うん、なにしろ魔法つかいみたいなやつだからね。あいつをつかまえるのには、こちらも魔法をつかわなければ、だめだよ。」
「エッ、魔法をですか?」
「うん、魔法をだよ。ぼくはその魔法を考えている。ぼくだって魔法くらい、つかえるからね。」
 明智探偵はそういって、ニッコリ笑いました。小林少年は、リンゴのようなほおを、いっそう赤くして、目を光らせて、たのもしそうに、先生の顔をみつめるのでした。
「先生なら、きっと、あいつを、つかまえられますね。」
「うん、つかまえられると思っている。……小林君、見ていたまえ、いまにきっと、あいつのほうから、ぼくに近づいてくるようなことがおこるよ。ぼくは、それを待ちかまえているのだ。」
 明智探偵はそういって、窓わくにひじをかけて、アパートの前の大通りを見おろしていましたが、そのとき、なにを見つけたのか、探偵の顔に、みょうな笑いが浮かんできました。
「いまアパートの前に自動車がとまった。ほら見たまえ、りっぱな紳士が出てきた。しかし、ひどくおどおどして、あたりを見まわしている。だれかに尾行されていやしないかと心配しているのだ。アッ、アパートへはいってくる。あの紳士は、きっと、この事務所へやってくるよ。なにか事件をもってきたにちがいない。」
 明智の想像は、あたっていました。まもなく入口のドアに、ノックの音がして、「おはいりなさい。」と答えると、さっきの紳士がはいってきました。
「明智先生はおいでですか。」
「ぼくが明智ですよ。まあ、おかけなさい。」
 探偵はそういって、そこの安楽イスをすすめました。
 紳士は、ソフト帽をテーブルの上において、そのイスにこしかけ、じろじろと、明智の顔を見ていましたが、やっと安心したように、
「ああ、あなたは明智さんにちがいありません。新聞でよくお写真を拝見しています。それから、そこにいるのは、先生の有名な少年助手の小林君でしょう。」
「そうです。ほかにだれもいませんから、安心してお話ください。」
「じつは、悪者に脅迫されていまして、そいつは恐ろしいやつですから、どこに先まわりしているかわかりません。明智さんにだって化けるかもしれないのです。それで、あなたのお顔をたしかめるまでは、安心できなかったのですよ。」
松枝(まつえだ)さん、あなたは宝石とゴルフがおすきのようですね。」
 明智探偵が、とつぜん名をよんだので、紳士はビックリして、目をみはりました。
「エッ、あなたはどうして、わたしの名をごぞんじです。一度も、お目にかかったことはないはずですが。」
「ははは……、名をかくしたければ、帽子をテーブルの上に上むきにおおきになってはいけませんね。その帽子のびんがわ(裏のかわ)に、ローマ字で Matsueda と金文字が、おしてあるじゃありませんか。」
「アッ、そうでしたか。わたしは、びっくりしましたよ。しかし、宝石とゴルフのことは、どうしておわかりになりました?」
「あなたの指輪のオパールは、ひじょうに質のいいものです。それから、ネクタイどめの真珠も、すばらしい品です。それだけでも、あなたが宝石を見る目のあるかただと、いうことがわかります。好きでなくては、それほど目がこえるものではありませんからね。それからゴルフのことですが、あなたは上流の紳士でいらっしゃるのに、ひどく日にやけて、色が黒くなっている。そう太っておられては、山のぼりや、ハイキングではありますまい。また、いまは海水浴の季節でもありません。そこで、あなたのご年配では、近ごろの流行のゴルフに、こっていらっしゃるのだと、想像したのですよ。あたりましたか?」
「あたりました。すっかりあたりましたよ。一目みて、そこまで、お察しになるとは、さすがに名探偵ですね。かぶとをぬぎました。ところで、お願いしたいのは、そのわたしの好きな、宝石のことなのですよ。」
 紳士はそういって、イスから、からだをのり出すようにするのでした。

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