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黄金豹-猫夫人

时间: 2021-12-01    进入日语论坛
核心提示:ネコ夫人 そのとき、ドアのむこうへ、三十歳ぐらいの美しい女の人があらわれました。りっぱな洋服をきています。むかしの夜会服
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ネコ夫人


 そのとき、ドアのむこうへ、三十歳ぐらいの美しい女の人があらわれました。りっぱな洋服をきています。むかしの夜会服(やかいふく)のような飾りのおおい、すその広い、ピカピカした洋服です。
 その女の人の顔は、どこか少女ににていました。そして、やっぱりネコの感じがします。これは『親ネコ』の感じなのです。
「あなた、どなたですか?」
 女の人が、西洋人が日本語をしゃべっているような、口のききかたをしました。
「ぼくは小林っていうんです。明智探偵の助手です。いま、ここのうちへ、黄金豹の皮をかぶっていたやつが、しのびこむのを見たので、おしらせにきたのです。だれか、うちの中へはいってきませんでしたか?」
 小林君がいいますと、女の人はニヤリと笑いました。なんだかネコが笑ったような感じでした。
「なにもはいってきませんよ。あなたのまちがいじゃありませんか。」
「いいえ、まちがいじゃありません。よくしらべてみてください。広いおうちですから、どこにかくれているか、わかりませんよ。」
 それをきいても、女の人は、だまっています。べつに驚いたようすもありません。すると、やっぱり、ここは黄金豹にばけた怪人のすみかで、この人たちは、仲間なのでしょうか。
「いまはま夜中ですが、あなたがたは、いまごろまで、おきておいでになったのですか?」
 小林君が、おもいきって、それをたずねてみました。すると女の人は、ネコのように、ニヤニヤと笑って答えます。
「わたしたちは、今夜、このネコたちと、宴会を開いていたのです。毎月一度、夜あかしをして、ネコの宴会を開くのです。ここはネコやしきですからね。」
 そのとき、少女が長イスからおりてきて、小林少年のそばに立ち、まるで子ネコがあまえるように、小林君に、からだをすりつけました。いくらかわいい子でも、べたべたくっつかれると、きみが悪いので、ソッと、からだをよけて、少女からはなれました。
「あなた、こちらへ、いらっしゃい。お見せするものがあります。」
 おかあさんのほうが、やさしい声でいいました。
 小林君は、このうちが、あやしいと思っているので、さそわれるのをさいわいに、奥へはいってみることにしました。
 小林君は、心の中で、少女のおかあさんを、『ネコ夫人』と名づけました。それほど、顔もからだの動かしかたも、ネコにそっくりなのです。そのネコ夫人が、さきにたって、廊下を歩いていきますので、小林君も、そのあとからついていきました。ネコどもも、ネコ夫人のおともをして、ぞろぞろ、ついてきました。
 ネコ夫人は、ある部屋のドアを開いて、小林君を手まねきしながら中にはいりました。その手まねきのやりかたが、また、ネコとそっくりなのです。
 小林君もその部屋にはいってみますと、それは書斎とでもいうような大きな洋室でピカピカ光った寄木細工(よせぎざいく)の床、壁には書棚があり、正面にたたみ一じょうもある、大きな机がすえてあります。
 ネコ夫人はネコの歩くようなみょうな歩きかたで、スーッとその大机のそばによると、こちらをむいて、やさしく笑いながら、また、手まねきをしました。
「ぼくに、なにを見せるのですか。」
 小林君が、入口に立ちどまって、たずねますと、ネコ夫人は美しいネコのような顔を、いっそう、やさしくして、ネコなで声でいうのです。
「いいものよ。あなたがびっくりするようなものよ。早く、ここへいらっしゃい。」
 それは、まるでマグネットのように、人をひきつける声でした。小林君は、ふらふらとその方へ歩いていきました。歩きながら、ふと気がついて、ポケットに手をあててみました。ネコ夫人が、なにか悪だくみをしているかもしれないと思ったからです。いざという時には、ピストルを出してぶっぱなすつもりです。それでポケットのピストルに、さわってみようとしたのですが、ポケットには、なにもありません。たしかに入れてあった右のポケットが、からっぽになっているのです。
「アッ、いけない。それじゃあ、さっきあのネコむすめが、からだにくっついたとき、ぬき出したんだなッ――。」
 小林君は、とっさにそこへ気がつきました。しかし、もうおそかったのです。それを半分も考えないうちに、足の下の床が、とつぜん消えてなくなってしまったからです。
 アッと思うまに、小林君のからだが、スーッと、下へ落ちていきました。まっ暗な穴の中へ、恐ろしいいきおいで、落ちこんでいきました。
 そこの床板が、一メートル四方ほど下に落ちこむようになっていて、それが、とつぜん落ちて、まっ暗な四角な穴ができたのです。
 小林君は、その穴の中へ落ちていく瞬間に、チラッとネコ夫人のほうを見ました。
 ネコ夫人はそのとき、大机によりかかって、ニヤニヤと、ネコの笑いを笑っていましたが、右手が、机の横をおしているのが見えました。きっと、そこにボタンがあるのです。そのボタンをおせば、落とし穴のふたが、下へ落ちるようになっているのにちがいありません。

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