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黄金豹-绝世珍宝

时间: 2021-12-01    进入日语论坛
核心提示:稀代(きだい)の宝玉「わたしは、昭和信用金庫の社長をやっているものですが、わたしが、命のつぎにだいじにしているダイヤモンド
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稀代(きだい)の宝玉


「わたしは、昭和信用金庫の社長をやっているものですが、わたしが、命のつぎにだいじにしているダイヤモンドが、盗まれそうになっているのです。」
 松枝という紳士は、ないしょ話でもするように、声をひそめていいました。
「どうして、盗まれそうだということが、おわかりになったのです。」
「電話です。あいつから電話が、かかってきたのですよ。」
「あいつとは?」
 そのとき、松枝さんは、グッとからだを前にのり出して、いっそう声をひくめました。
「黄金豹です。あの恐ろしい魔ものが、きょうの昼ごろ、電話をかけてきたのです。そして、いまから二日のあいだに、おまえのもっているインドの宝石を、もらいにいくから、待っていろというのです。」
 黄金豹と聞いて、明智探偵と小林少年は、「さては!」というように、目を見あわせました。さきほど、黄金豹のほうから近づいてくることがおこるといった、名探偵のことばが、早くも事実となってあらわれてきたのです。
「で、そのことを警察に、おとどけになりましたか?」
 明智がたずねますと、松枝さんは、首をふって、
「いや、まだとどけておりません。それよりも、まっ先に、先生に相談したかったのです。といいますのは、わたしはあの金むくの豹のおきものを、盗まれかけた園田君と友だちでして、あのとき小林君のおかげで、ぶじにすんだことを聞いていました。
 小林君に知恵をおさずけになったのは、むろん明智先生です。ですから、怪物黄金豹をふせいでくださるかたは、先生のほかにないと思って、こちらへ、かけつけたわけです。」
「わかりました。およばずながら、お力になりましょう。しかし、そのインドの宝石というのは、いまどこにおいてあるのですか。」
「じつは、ここに持っているのです。」
 松枝さんは、そういって、またあたりを見まわしてから、チョッキのうちポケットに手をいれると、小さなかわの宝石箱を取りだして、パチンと、ふたを開きました。
 箱の中から、パッと五(しき)(にじ)がたちました。
 びっくりするほど大きな、青みがかったダイヤモンドです。
「十カラットの青ダイヤです。これにはゆいしょがあります。戦争後、ある外国人から、ゆずりうけたのですが、もとはインドの奥のほうにあるお寺の本尊(ほんぞん)のひたいに、はめこんであったもので、それが、いまから一世紀もまえに、イギリス人の手にわたり、それから、いろいろな人の手をへて、戦争後日本へやってきたある外国人が、わたしに、ゆずりわたしたものです。
 わたしは、宝石きちがいのような男ですから、全財産をなげだして、それを買いました。
 お金よりも、宝石がだいじです。これをとられたら、わたしはもう、生きている気がしないほどです。明智先生、この宝石を、あなたに、あずかっていただきたいのです。そうすれば、黄金豹はあなたをねらうかもしれませんが、先生ならばそんなことは、へいきだろうと思いまして……。」
 それをきくと、明智はニッコリ笑いました。
「ぼくをそこまで信用してくださって、ありがとう。よろこんでおあずかりしますよ。じつは黄金豹が近づいてくるのを、待っていたのですからね。けっして、盗まれるようなことはしません。ぼくの書斎には、ふしぎな金庫がそなえつけてあります。ふつうの金庫ではありません。いろんなしかけのある、魔法の金庫です。この中へ、いれておけば、けっして盗まれる心配はありません。すぐに、そこへいれておきましょう。こちらへ、おいでください。」
 明智はそういって、立ちあがると、さきにたって、松枝さんを書斎へ案内しました。小林君も、あとからついていきます。
 そこは、四ほうの壁が、本でぎっしりつまった、りっぱな書斎でした。その一ぽうの壁に、人間でもはいれるような大きな金庫が、すえつけてありました。
「わたしはお金もちではありません。ですから、お金をいれる金庫ではないのです。ここには、わたしがひきうけた、いろいろな事件の重要書類がはいっています。みんな、たいせつな秘密の書類なので、盗まれては、たいへんですからね。」
 明智はそう説明して、金庫を開くと、ずらっと並んでいる(きり)のひきだしの一つをあけて、松枝さんの宝石箱をしまい、またピッタリと、金庫の扉をしめました。
「さあ、これでもう、だいじょうぶです。いまもいうとおり、この金庫には、ふしぎなしかけがありますから、どんな金庫やぶりの名人でも、この中のものを盗むことはできないのです。どうか、ご安心ください。」
 松枝さんは、それからしばらく話をして、かならず宝石をまもってくれるようにと、たびたび、ねんをおして帰っていきました。
 明智探偵は、客間の窓から、松枝さんの自動車が遠ざかっていくのを、見おくっていましたが、そばにいた小林君に、そっと、ささやきました。
「ごらん、あの大通りのむこうがわを、へんな男が歩いていくだろう。あいつは、さっきから同じところを、行ったり来たりしていたんだよ。ネコじいさんの仲間にきまっている。それとも、ひょっとしたら、ネコじいさんが変装しているのかもしれない。いずれにしても、黄金豹は今夜あたり、金庫やぶりに、やってくるよ。それこそ、こっちののぞむところなんだがね。」
 明智探偵はそういって、ニコニコと笑うのでした。

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