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黄金豹-地底的黄金豹

时间: 2021-12-01    进入日语论坛
核心提示:地底の黄金豹 ガクンと、おしりがかたい床にぶっつかって、気をうしなうほどのいたさでしたが、さいわい、ぶつかったのが、肉の
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地底の黄金豹


 ガクンと、おしりがかたい床にぶっつかって、気をうしなうほどのいたさでしたが、さいわい、ぶつかったのが、肉のあついおしりだったので、骨がおれたり、(すじ)がちがったりするようなこともなく、しばらくして、立ちあがることができました。
 まっ暗で、なにもわかりませんが、床をなでてみると、コンクリートのようでした。手さぐりで歩いていくと、これもコンクリートらしい壁に、ぶっつかりました。ここは地下室なのです。
 小林君は壁をつたって、ズーッとまわってみました。四方ともコンクリートの壁で、ひとつドアのようなものがありますが、鍵がかかっているのか、おしても、ひいても開きません。小林君は地底の密室に、とじこめられてしまったのです。
 ネコむすめも、ネコ夫人も、敵の仲間だったのです。それは、はじめから、かくごしていましたけれど、うっかりして、ネコむすめに、ピストルをとられてしまったのは大失敗でした。もう、身をふせぐためには、知恵を働かせるほかに、なんの方法もないのです。
 小林君は、しかたがないので、コンクリートの壁によりかかって、足をなげだして、じっとしていました。小林君は、いろいろな事件で、こんなめには、たびたびあっていますので、すこしも、あわてません。おちつきはらって、考えているのです。うまい知恵を、しぼりだそうとしているのです。
 しばらくすると、むこうの方で、カチッという音がしました。だれかが、ドアを開こうとしているのかもしれません。小林君は、すぐに立ちあがって、身がまえました。
 ギイーッと、ドアの開く音がして、ピカッと、大きな目だまのような光が、あらわれました。しかし、それは怪物の目ではなくて、懐中電灯であることが、すぐにわかりました。
 その目だまのような電灯が、ジリジリとこちらへ近づいてきます。もしピストルがあれば、こんなとき、それをかまえて相手をおどかすのですが、そのピストルもないので、小林君は、こぶしをにぎって、じっと立っているほかはありませんでした。
 電灯の光で、敵はこちらのすがたを、はっきり見ているのでしょうが、こちらからは、むこうのすがたが、すこしも見えません。まっ暗な中に、なにか、もやもやしたものが動いているばかりです。
「ウフフフフ……、とうとう、わなにかかったね。え、ちんぴら探偵、おれはきみなんかの手にあう相手じゃないよ。ウフフフ……。」
 男の声です。豹に化けていた、あのあやしい男にちがいありません。
「きみはだれなの? ぼくのほうからは、きみのすがたが見えないんだよ。」
 小林君が、へいきな声でたずねました。
「ウフフフ……、ちんぴらのくせに、いやにおちついていやがるな。おれの顔が見たいのか。ほら、見るがいい。」
 そういって、懐中電灯の光を、じぶんの顔にあてました。
 それは、きみの悪いじいさんの顔でした。太い黒ぶちのめがねをかけ、白いあごひげがたれています。めがねの中から、まんまるな大きな目が、のぞいています。人間の目ではなくて、豹の目のように感じられました。ぴったり身についた、黒いシャツのようなものをきています。
 小林君はネコじいさんにあったことはありませんが、この老人は、うわさにきいているネコじいさんと、そっくりです。
「やっぱり、きみはネコじいさんだね。そうだろう?」
 小林君が、すこしも悪びれない声で、たずねました。
「そのとおり、おれはネコじいさんだよ。ところで、きみは、ネコじいさんが、なにものだか知っているかね。ウフフフ……、おれは千年のこうをへた、魔物の豹を使う、豹使いのじいさんだよ。せけんでは、わしのつかう豹を『黄金豹』といっている。見ろ! その黄金豹は、ここにいるんだッ!」
 そういって、じいさんは、懐中電灯を、パッと、じぶんのうしろの方にむけました。
 アッ! こんなことが、あるものでしょうか。じつにふしぎです。ピカッと光りました。金色の毛です。それが動いているのです。ふたつの目が、電灯の光をうけて、まっ青に光りました。ガッと赤い口が開いて、白い牙があらわれました。……それは黄金豹だったのです。じいさんのうしろから、黄金豹が歩いてきたのです。
 小林君は、ほんとうに、びっくりしてしまいました。黄金豹の皮は、さっき明智探偵が、持っていったではありませんか。その皮をかぶっていた男は、この西洋館へ逃げこみました。その男が、このじいさんに、ちがいないのです。それに、もう一ぴき、生きた黄金豹がいるなんて、おもいもよらぬことでした。
 じいさんは、懐中電灯で、豹の頭から、しっぽまで、ズーッとてらして見せました。すると、ますます、驚くべきことが、わかってきたのです。
 これはほんものの豹でした。けっして、人間が豹の皮をかぶっているものではありません。足を見れば、わかります。あんな細い足の人間なんてあるはずがありません。ことに、あと足のまがりかたが、人間では、あんなになるはずがないのです。
「ウフフフ……、わかったかね。ちんぴら先生、いまに、こいつにきみを食わせてしまうから、かくごするがいい。」
 さすがの小林少年も、それをきくと、まっ青になってしまいました。そして、「ああ、ピストルがほしい。」と思いました。しかし、ピストルは、あのネコむすめに、とられてしまったのです。もうどうすることもできません。小林君は、だんだん、あとずさりして、うしろの壁に、ぴったり、からだをつけました。あとは、ジリジリと、横のほうに、いざっていくほかはないのです。
「それ、おまえのすきな人間の子どもだ。パックリやってしまえ!」
 じいさんが、はげしい声で、どなりました。
 パッと、金色の大きなかたまりが、とびかかってきました。小林君の洋服の肩のところが、ばりばりと音をたてました。黄金豹が、あと足で立って、前足を小林君の肩にかけたからです。するどい爪で、服が破かれたからです。
 ムッとするような、くさい動物の息が、顔に吹きつけてきました。黄金豹の顔は、小林君の顔に、くっつくばかりに近よっているのです。らんらんとかがやく、まっ青な二つの目が、小林君の目のすぐ前に、近よっているのです。
 ああ、小林少年の運命は、いったい、どうなるのでしょうか。

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