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黄金豹-林中小屋

时间: 2021-12-01    进入日语论坛
核心提示:森の一けん家 明智探偵が、きびしくたずねますと、運転手は、こんなふうに答えました。「いや、わたしは、けっして、あやしいも
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森の一けん家


 明智探偵が、きびしくたずねますと、運転手は、こんなふうに答えました。
「いや、わたしは、けっして、あやしいものじゃありません。東京タクシーの運転手です。きょうは徹夜の番で、麹町のへんを流していますと、ひとりの紳士が、ここの横丁にとまっていて、おれがあいずをしたら、うしろのドアをあけたままで、大通りの方へ車を出せといい、二千円くれましたので、つい金に目がくれて、その人のいうとおりにしたのです。
 ま夜中に、その人が、さあ車を出せといいますので、うしろのドアを開いて、大通りへ出ました。すると、どうでしょう。いきなり金色の豹がとびこんできたのです。そして、いまにもかみつきそうな、恐ろしいかっこうで、フル=スピードで走れというではありませんか。人間のことばで、そういったのです。
 わたしは、さては、こいつが、うわさにたかい黄金豹だなと思いました。黄金豹は千年のこうをへた怪物で、人間のことばをしゃべるということを、聞いていたからです。わたしは、ふるえあがってしまいました。それからはもう、むが夢中でした。豹がうしろから、さしずするとおりに、めちゃくちゃに車を走らせたのです。
 ところが、つい五、六分まえ、うしろから声をかけなくなったのです。それまでは、右へまがれ、左へまがれとさしずしていたのが、ぱったり、やんでしまったのです。へんだなと思って、うしろを見ると、黄金豹は眠っているようでした。わざと車をでこぼこ道へいれて、ガタガタやってもおきません。それで、だんだんスピードをおとして、どうしようかと考えていると、あんたの車が追いこして、通せんぼうをしてしまったのです。」
 そう聞くと、この運転手は、黄金豹の仲間でないようにも、思われました。
「そうか。それじゃ、五、六分まえに、黄金豹の中にはいっていたやつが、皮だけのこして、とびおりたんだな。もう、いまから捜してもまにあうまい。よろしい。きみはガレージへ帰りなさい。ぼくらも、いちおう、ひきかえすことにする。……この豹の皮は、あずかっておくよ。」
 そういって、明智探偵は、豹の皮を持ったまま、小林少年をつれて、自分の自動車にもどりました。
「きみ、さきに乗りたまえ。」
 いわれるままに、小林君が、さきに乗りますと、明智はあとから運転台にはいってきて、小林君の耳に口をつけるようにして、みょうなことを、ささやきました。
「きみは、そっちがわのドアをあけて、そっと、おりるんだ。そして、そこの大きな木の(みき)にかくれて、あの自動車を見はっていたまえ。わたしも、この自動車を、ここから見えぬところにとめて、じきにもどってくる。いいかね。もし、あの車の中から、へんなやつがあらわれたら、そっと、あとをつけるんだよ。わかったかね。」
 そういって、小林君を、はんたいがわのドアから、そとへつき出すようにしました。
 小林君は、なぜ明智先生が、そんなことをいうのか、よくわかりませんでしたが、いわれるままに、そとに出て、大きな木のかげに身をかくしました。あたりが暗いうえに、自動車がじゃまをしているので、むこうの運転手には、小林君が車をおりたことは、すこしもわからなかったのです。
 やがて、明智の運転する自動車が動きだして、もときた方へ走りさっていきました。あとにのこった小林少年は、木のかげから、そっとのぞいています。
 しばらくすると、むこうの運転手が、あたりを、キョロキョロ見まわしたあとで、自動車のうしろの席に、上半身をいれて、なにか、ごとごとやっているのが見えました。
「オヤッ、へんだな。あいつ、やっぱりあやしいやつだぞ。」
 小林君は、そう思って、息をころして、見つめています。
 運転手は、なお、しばらく、ごとごとやっていましたが、やがて、仕事をおわったようすで、上半身を、車のそとに出して、二、三歩あとに身をひきました。
 すると、車の中から、パッととび出してきたものがあります。人間です。ぴったり身についた、黒いシャツとズボンしたのすがたです。顔はよく見えませんが、たしかに、くっきょうな男です。
「ああ、わかった。あいつが黄金豹の皮をかぶっていた悪者にちがいない。途中でとびおりたと見せかけて、ほんとうは、自動車のこしかけの下に、かくれていたのだ。あの自動車には、ちゃんとそういうしかけがしてあったにちがいない。そうして、明智先生にいっぱいくわせようとしたんだ。なんて、悪知恵のはたらくやつだろう。だが、さすがは、明智先生だ。とっさに、それを見ぬいて、ぼくをここへ残したんだ。やっぱり先生はえらいなあ!」
 小林君は、そんなことを考えながら、悪者のすがたから、目をはなしませんでした。
 黒シャツの男は、運転手と、なにかひそひそ、ささやきあっていましたが、やがて、運転手は、自動車に乗り、どこかへ走りさっていきました。
 あとに残った黒シャツの男は、あたりを、キョロキョロ見まわしてから、むこうの森の中へはいっていきます。小林君は、こっそり、そのあとをつけました。
 それは、杉並区にこんな森があるのかしらと、びっくりするような、深い森でした。男は、立ちならぶ大きな木のあいだをくぐって、森のまん中へはいっていきます。そのへんは、街灯の光もささず、うっかりすると、相手を見うしなうほど、まっ暗です。
 でも尾行しているうちに、だんだん目が闇になれてきて、いくらか、あたりのようすが、わかるようになりました。森のまん中に、まっ黒な四角なものが、そびえています。それはレンガづくりの西洋館のようでした。黒シャツの男は、いそぎあしで、その建物に近づいていきました。

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