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品川四郎熊娘の見世物に見とれること

时间: 2023-09-04    进入日语论坛
核心提示:品川四郎熊娘の見世物に見とれること青木愛之助は東京に別宅を持っていて、月に一度位ずつ、交友や芝居や競馬の為に出京しゅっき
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品川四郎熊娘の見世物に見とれること


青木愛之助は東京に別宅を持っていて、月に一度位ずつ、交友や芝居や競馬の為に 出京 しゅっきょう して、一週間なり十日なり滞在して行く例であった。愛妻の 芳江 よしえ は同伴することもあり、しないこともあった。
ず最初は東京での出来事である。
大学以来の友達に(愛之助は東京大学を出たのだ) 品川四郎 しながわしろう という男があった。貧乏人の息子であったから、大学を出るとすぐ職を求め、ある通俗科学雑誌社へ 這入 はい ったが、いつの間にかその雑誌を自分のものにして、自分の計算で発行する様になっていた。相当利益も上るらしい。
彼も商売が商売だから、猟奇を好まぬではなかったが、どちらかと云えば正常な男で、青木の 出鱈目 でたらめ な生活を非難していた。 こと に猟奇倶楽部という様なものには反対で、そんな馬鹿馬鹿しいことをいくらやったって、退屈が治るものかと、軽蔑していた。彼は実際家であった。
彼の猟奇は実際談であって、青木とレストランで飯を食う時など、よく しら べた最近の犯罪談などを話して聞かせた。
愛之助の方では、品川のその実際的な所を軽蔑した。犯罪実話なんて退屈だからよせと云った。そして彼の好きな、 荒唐無稽 こうとうむけい な怪奇の夢を語るのであった。
つまり彼等はお たがい に軽蔑し合いながら、どこかしら合う所があって、変らぬ まじわ りを続けていたのである。
ところが、ここに、そう云う性質の彼等の、どちらもが、非常に昂奮して、夢中になってしまう様な、怪事件が おこ った。青木にはそれの神秘で奇怪な所が気に入った。品川はそれが生々しい現実の出来事であったが故に心をひかれた。何と不思議なことには、その事件と云うのは、非常に現実的であって、しかも、同時に探偵小説家の夢も及ばぬ、奇怪千万なものであった。
先ず順序を追ってお話ししましょう。
秋、招魂祭で 九段 くだん 靖国 やすくに 神社が、テント張りの見世物で充満している、ある昼過ぎのことであった。
青木愛之助は、例の いかもの 食いで、招魂祭と云うと、九段へ行って見ないでは承知の出来ぬ男であったから、(彼はこの九段の見世物見物も、その月の上京中のスケデュルの一つに加えていた程だ)時候としては蒸し暑く、ほこりっぽい、いやな天気であったけれど、薄いインバネスにステッキという支度で、電車を降りると、九段坂をブラブラと上って行った。
一寸余談に わた るが、彼はこの九段坂というものに、変な興味を抱いていた。と云うのは、彼の非常に好きな村山槐多という死んだ画家があって、その槐多に探偵小説の作が三つばかりあるのだが、ある探偵小説の主人公は、舌に肉食獣の様なギザギザのある、異様な男で、その男が遺言状か何かを、この九段坂の石垣の石のうしろへ隠して、その場所を暗号で書いて、誰かに渡すという様な筋なのだ。
で、青木は、九段坂を上る度に、槐多の小説を思い出し、現在では当時とはまるで変っているけれど、道路のわきの石垣を、変な感じで眺めないではいられぬ次第であった。
「あの石の形が、少し他のと違う様だが、 しや今でもあの下に何か隠してあるんじゃないかな」
愛之助は事実と小説を混同して、そんな妄想を楽しむ てい の男なのである。
九段の見世物風景は、誰でも知っていることだから 細叙 さいじょ することもないが、現在ではすたれてしまって、どこかの片田舎で わず かに余命を保っている様な、古風な見世物を日本中の隅々を探し廻って寄せ集めた、と云う感じであった。
地獄極楽からくり人形、 大江山酒天童子 おおえやましゅてんどうじ 電気人形、女剣舞、玉乗り、猿芝居、曲馬、因果物、熊娘、牛娘、 角男 つのおとこ 、それらの大 天幕 てんと 張りの 間々 あいだあいだ には、おでんや、氷屋、みかん すい 薄荷水 はっかすい 、十銭均一のおもちゃ屋に、風船屋などの小屋台が、ウジャウジャとかたまっている。その中を、何の気か、ほこりを吸って、上気して、東京中の人間が、ウロウロ うごめ いているのである。
ある因果物の小屋の前、そこには、時々幕を上げてチラリと中を見せるものだから、黒山の人だかりで、その群集の一番うしろの列が、反対側の 食物 くいもの 屋台とすれすれにまで、ふくれているので、そこの道は、人一人、やっと通れる程の隙間しかない。その間を、右から左からと、肩で押し合って、絶え間なく人通りが続くのだから、実に不愉快である。
青木愛之助が、その 親不知 おやしらず みたいな細道を通り抜けようとした時だ。
実に不思議なことに、そのほこりっぽい群集の中に、冬物の黒い 中折 なかおれ をあみだに かぶ って、真赤に上気した顔を汗に光らせて、背広服の品川四郎が、人にもまれているのが見えた。
何故 なぜ 不思議だと云うと、品川四郎は決して愛之助の様な いかもの 食いでなく、古風な見世物なんかに興味を持たぬ男なのだ。独身者 ゆえ 、子供に連れられて来た訳でもない。そうかと云って商売物の雑誌の種を取りに来たにしては、 編輯 へんしゅう の人を同伴している様にも見えぬ。どうも、社長様が種取りをする はず はないのだ。
しかも、びっくりしたことには、品川四郎は、見世物の熊娘にひきつけられた てい で、 くしまき に、 唐桟 とうざん 半纏 はんてん で、 咽喉 のど に静脈をふくらませて、真赤になって 口上 こうじょう しゃべ っている、汚い 姉御 あねご の弁舌に、じっと聞き惚れているんだ。不思議なこともあるものだ。
よく見直したが、決して人違いではない。
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