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马戏团里的怪人-绝招

时间: 2021-12-13    进入日语论坛
核心提示:奥の手 中村警部は、懐中電灯の一つを受けとって、立ったり、しゃがんだりしている警官のすがたを、つぎつぎと照らしていきまし
(单词翻译:双击或拖选)

奥の手


 中村警部は、懐中電灯の一つを受けとって、立ったり、しゃがんだりしている警官のすがたを、つぎつぎと照らしていきました。
 ところが、光の中にあらわれたのは、明智探偵と警官ばかりで、二十面相のあのガウンすがたは、どこにもありません。
「諸君! みんなもとにもどって、両方の入口をかためてくれたまえ。ぼくと明智君だけで、もういちど、念いりに捜してみる。」
 中村警部はそういって、警官たちを、両方の入口へたちさらせ、明智とふたりが、一つずつ懐中電灯を持って、トンネルの中を、ずっと歩いてみました。しかしどこにも、あやしいすがたはないのです。
「消えてしまった。あいつ、また忍術をつかったな。明智君、いったいこれは、どうしたことだろう。」
 中村警部が、残念そうにいいました。
「ともかく、そとへ出てみよう。ぼくは、あいつの魔法の種が、わかったような気がする。」
 明智はそういって、さきに立って、鉄のとびらのほうへ歩いていきました。
 とびらのそとに、コンクリートの階段があって、それをのぼると、原っぱの草むらのなかに出ました。
 穴の入口は、人間ひとり、やっとくぐりぬけられるほどの、せまいもので、それが草におおわれているのですから、地下道の入口とは気がつきません。この入口をつかわないときは、ふたがしてあるとみえて、それらしいひらべったい石が、そばにおいてありました。
 その原っぱには、七人の警官が立っていました。さっきトンネルの中へはいってきた五人と、見はりばんをしていたふたりです。
 もう夕がたで、あたりはうす暗くなっていました。
「きみたちのうち、ここに残って見はりをしていたのは、だれだね。」
 明智がたずねますと、ふたりの警官が前に出てきました。
「きみたちは、ずっと、この入口を見はっていたのだね。」
「はい、そうです。」
「で、さっき、中へはいったのは何人だったね。」
「五人か、六人です。アッ、そうです。たしか六人でした。」
「六人だって。しかし、ここには、きみたちのほかに、五人しかいないじゃないか。」
「いえ、もうひとり、さきに出てきた人があります。」
「ああ、それは懐中電灯を捜しにきた警官だろう。」
「いや、ちがいます。あの人は、どっかへいって、懐中電灯をかりだしてきて、また穴の中へはいっていきました。ついさっき、そこから出ていったのは、べつの巡査です。」
「おかしいね。ぼくはさっき、地下道の中で、こちらからはいってきた警官の人数を、ちゃんと、かぞえておいた。たしかに五人だった。その五人はここにいる。そのほかに、ひとり出ていったとすると、五人が六人にふえたことになるね。いったい、きみたちは、そのひとりで出ていった警官の顔を、よく知っているのかね。」
「いいえ、知らない人です。きょうは警視庁と所轄(しょかつ)警察のものと、ごっちゃになっていますので、顔を知らない人も、たくさんいるのです。」
「ふうん、それで、その巡査は、どこへいったのだね。」
「わかりません。その人は、中村警部さんの命令で、近くの交番へ電話をかけにいくのだといって、むこうへ走っていきました。」
「そりゃ、へんだぞ。ぼくは電話をかけろと、命令したおぼえはない。」
 中村警部が、びっくりして、どなりました。
「で、その巡査は、手になにか持ってなかったかね。」
 明智がたずねますと、警官はうなずいて、
「持ってました。なんだか、ふろしきづつみのようなものを、わきの下にはさんでいました。」
「わかった。そいつが二十面相だよ。」
 明智がしずかにいいました。
「エッ、その警官が二十面相だって?」
 中村警部が、びっくりして聞きかえします。
「うん、そうだよ。そのほかに考えようがない。あいつは、こんなときの用意に、警官の制服を手に入れて、トンネルの中のどこかへ、かくしておいたのだ。
 さっき、ぼくの懐中電灯をたたき落としたのも、あいつにちがいない。まっ暗になって、みんなが、どうし打ちをやっているすきに、あいつはガウンをぬいで、警官の服にきかえたのだ。そしてガウンをまるめて、ふろしきづつみのようにして、こわきにかかえ、なにくわぬ顔で、出ていったのだ。
 二十人からの警官がきているのだから、みんな顔見知りとはかぎらない。制服をきて警官の帽子をかぶっていれば、仲間だと思ってしまう。それに、もうこんなにうす暗くなっていて、顔もはっきり見えやしないのだからね。」
 明智の説明に、中村警部は「ううん。」とうなってしまいました。警官に化けて逃げだすなんて、なんという悪知恵のはたらくやつでしょう。
「だが、それなら、早く手配をしなけりゃあ。非常警戒をしなけりゃあ。」
 中村警部があわてるのを、明智はしずかに、手でおさえるようにして、
「中村君、だいじょうぶだよ。安心したまえ。これがあいつの奥の手なら、ぼくのほうには、それより上の奥の手が、ちゃんと用意してあるんだ。あいつは、きっと、つかまえてみせるよ。」
 明智は、さも自信ありげに、きっぱりと、いいきるのでした。

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