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一寸法师-转嫁罪业(03)

时间: 2021-09-29    进入日语论坛
核心提示: 又しても明智の思わせぶりであった。田村検事はもどかしさに、ガタリと足を組み直した。「明智君、いやに気を持たせるじゃない
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 又しても明智の思わせぶりであった。田村検事はもどかしさに、ガタリと足を組み直した。
「明智君、いやに気を持たせるじゃないか。まずその犯人を明かしてからにし給え」
「さては」明智は愉快相にニコニコして、「君にもまだ見当がつかないと見えるね。併し、まあ順序よく話させてくれ給え」
「どうも、君の話は小説的でいけない。なるべく簡単に」
 磊落(らいらく)な田村氏は笑いながら友人の揶揄(やゆ)(むく)いた。
「私が最初、この事件にある不調和を見出したのは、この化粧品のクリームの瓶からです」明智は台の上の白いポンピアン・クリームの[#「ポンピアン・クリームの」は底本では「ボンピアン・クリームの」](つぼ)を取り上げた。「音楽家が不協和音に敏感な様に探偵は事実の不調和に敏感であることが必要かも知れません。往々にして些細な不調和の発見が、推理の出発点になるものです。これは三千子の化粧台から持って来たのですが、御覧の通り外の瓶には皆指紋があるのに、このクリームだけはふき取った様に、何の跡も見えません。一番油じみ易いクリームの瓶にです。ところが、外側は注意深くふき取ったにも拘らず、千慮(せんりょ)一失(いっしつ)でしょうか、中のクリームの表面に、実にハッキリと指紋が残っている。そして、その指紋は(ほか)の瓶のや、例の切断された腕の指紋とは、全く別のものなのです。
 これは右の人さし指の指紋です。こちらの水白粉の同じ指のと比較しますと、不思議によく似てはいますけれど、ですから肉眼で見たのでは区別がつかぬ程ですが、レンズで見ればまるで別人の指紋であることが分ります。三千子という人は非常なおしゃれで、化粧台には、この外にまだ沢山の化粧品があったのですが、妙なのは、それには少しも指紋がついていない。一度でも使用した化粧品の瓶に指紋がついていないというのは、一寸考えられないことです。使用するたびに瓶をふく訳でもありますまい。これは何か(ため)にする所があって、態と指紋をふきとったのではないでしょうか。すると、ここにある分だけ拭取ってなかったのはなぜでありましょう。それはこの分に限ってそうしてはならなかったからです。つまりこれだけは三千子の持物ではないのです。巧に用意された偽証なのです」
 紋三は何だかうれしい様な気持だった。彼の想像の当っていたことが、段々明かになって行くのだ。
「その証拠には、この指紋の残っている化粧品は、贅沢屋(ぜいたくや)の三千子の持物としては、少し地味な好みですし、この過酸化水素キュカンバーだとか、過酸化水素クリームなどは、どちらかといえば油性(あぶらしょう)の人に適当なものですが、三千子は反対に青白いすさんだ皮膚だったということですから、全く使用しなかったとは断言出来ませんけれど、少しふさわしくない感じです。それから色白粉(いろおしろい)ですが、青白い人は薔薇色(ばらいろ)のを用いるのが普通であるにも拘らず、ここにある水白粉は赤ら顔に適当な緑色のものです。又花つばき香油なんていうものは、洋髪には余り使いません。つまり、どちらから観察しても、これらの化粧品は三千子さんの常用したものではない。どこか外の所から持って来て三千子さんの部屋へ置いたものに相違ないのです」

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