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妖怪博士-名侦探的惨败

时间: 2021-10-26    进入日语论坛
核心提示:名探偵の敗北 さすがの明智探偵も、ふいをうたれて、手むかいをするすきもなく、二十面相の命ずるままに、洞くつの奥へ奥へと進
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名探偵の敗北


 さすがの明智探偵も、ふいをうたれて、手むかいをするすきもなく、二十面相の命ずるままに、洞くつの奥へ奥へと進むほかはありませんでした。探偵の背中には、二十面相のピストルの筒口が、ピッタリおしつけられているのです。少しでも立ちどまったりすれば、その筒口から、いつ弾丸(たま)がとびだすかもしれないのです。いくら名探偵でも、これには手むかいのしようもありません。
 そうしてふたりは、だんだん洞くつの奥へ進んでいきました。二十面相は明智探偵の懐中電灯をうばって、それでうしろから道を照らしているのです。おそろしい岩はだがつぎつぎと行く手にあらわれてきます。ある場所では四つんばいにならなければ通れないほどせまくなり、またある場所では、からだを横にしてやっとすりぬけるような細い道もあり、それがグルグルとまがりくねって、どこまでもつづいているのです。
 やがて、五、六十メートルも歩いたかと思うころ、にわかにあたりが広くなって、例の洞くつの中の大きな部屋のような場所に出ました。
「さあ、見たまえ、きみのかわいい少年たちが、あのへんにかたまって、べそをかいているから。」二十面相は、にくにくしく言いながら、懐中電灯の光をサッとそのほうにさし向けました。
 すると、その光の中に、広い洞くつの向こうがわの岩はだがあらわれ、そのすみに、ひとかたまりになって、力なげにうずくまっている十一人の少年たちの姿が、つぎつぎと照らしだされました。
 少年たちは、きのうから、たべるものも飲むものもなく、空腹と疲労のために死人のようになって、そこにうずくまっているのでした。むろんはじめのうちは、どうかしてここをぬけだそうと、まっくらな迷路の中を、気ちがいのように歩きまわってみたのですが、いつまでたっても、同じような岩穴をグルグルまわっているばかりで、あの板の橋のかかっていた大穴のところへさえ出られないのでした。
 そのうちにからだは綿のようにつかれはて、おなかはペコペコにへってしまって、さすが勇敢な少年たちも、もうそれ以上歩きまわる力もつきてしまったのです。でも、少年たちは、けっしてこれが運のつきだとは思っていませんでした。
「きっと明智先生が助けに来てくださる。明智先生はなんでもおわかりになっているのだから、ぼくたちが、こうしてひどいめにあっていることも、先生は知っていらっしゃるにちがいない。」口にだしてはいいませんでしたが、みんなそう考えて、今にも明智探偵の、あのニコニコした顔が、あらわれるのではないかと、そればかりを念じていたのです。
 ちょうどそこへ、洞くつの向こうがわにとつぜん人のけはいがして、パッとまぶしい懐中電灯の光がさし、二十面相のにくにくしい声が聞こえてきました。
「おい、子どもたち、きみたちの尊敬している明智大先生のご入来(にゅうらい)だぞ。明智先生は親切にもきみたちを救いだすために、はるばる東京からお出かけになったのだ。だが、お気のどくなことに、先生は、この二十面相のとりこになってしまわれたのだよ。ワハハハ……、さあ、明智先生、かわいい部下たちにあってやるがいい。そして、みんないっしょに、この穴の中で餓死するんだね。二十面相をとらえようなんて、だいそれたことを考えるやつは、しまいにはこんなめにあうんだよ。自業自得というものだ。ざまをみるがいい。ハハハ……。」まるで地獄の底からでも聞こえてくるような、ものおそろしい声が、洞くつにこだまして、ガーンガーンとひびくのです。
 少年たちはそれを聞きますと、号令でもかけられたように、すっくと立ちあがり、声のするほうをにらみつけました。いくらおなかがすいていても、うらみかさなる二十面相の声には、こぶしをにぎって立ちあがらないではいられません。
 なかでも、団長の小林少年は、明智先生と聞いて、もうじっとしていることはできませんでした。いきなり、おそろしい二十面相がいるのもわすれたように、明智探偵とおぼしい黒い人影にむかって、とびついていました。
「先生。」小林君が、明智探偵に近づいて、手さぐりでその腕にすがりつきますと、
「おお、小林君か。」と、明智探偵もなつかしそうに、その肩をだくのでした。
「ウフフフ……、師弟の対面というやつか。悲劇にでもありそうな場面だね。まあ、せいぜい手を取りあってなげくがいい。きみたちは、もう二度と日の目を見ることはできないのだからね。この洞くつに生きうめ同様になってしまうのだからね。」二十面相の老案内人は、そんなことをつぶやきながら、さもきみよさそうに名探偵と少年助手の黒い影を見まもっています。もうとくいの絶頂なのです。長いあいだ苦しめられた明智探偵と、その片腕といわれる小林少年を、しゅびよくとりこにしてしまったのです。これがうれしくなくてどうしましょう。
 ほんの十秒か二十秒のあいだでしたが、さすがの凶賊(きょうぞく)も、自分の成功によったようになって、ついピストルを持つ手もとがおるすになってしまいました。ゆだんをしたのです。まさかおなかのすいた少年たちに、そんな元気が残っていようとは知らず、とんだゆだんをしてしまったのです。
 そのとき、相撲選手の桂君を先頭に、五人の少年探偵団員が、暗やみをさいわい、地面をはうようにして、音もなく、二十面相の足もとへ近づいていました。そして、相手がいい気になってしゃべりながら、ピストルを持つ手をダランとさげているのを見すまし、いきなり、五人がひとかたまりになって、その手にとびついたのです。
「あ、痛い!」二十面相はふいをうたれて、思わずさけびました。それも道理です。五人のうちのひとり篠崎君などは、大きな口をあけて、賊の手首にかみついたのですから、いくら怪盗でもかないません。痛さにたえかねて、ピストルをにぎる指がゆるむのを、力の強い桂君がうむをいわさずもぎとってしまいました。
 機敏(きびん)な明智探偵が、このさわぎをぼんやり見ているはずはありません。探偵は二十面相がおそわれたと知ると、すぐさまポケットのピストルを取りだして、賊の胸にねらいをさだめました。小林少年もリスのように、びんしょうでした。賊がおどろきのあまり取りおとした懐中電灯を、すばやく拾いあげて、そのまるい光を、サッと二十面相の上半身にさしむけました。だれもものも言いません。ただ、やみの中にはげしい息づかいが聞こえるばかりです。
 二十面相は思わず両手を高くさしあげて、だんだんあとずさりをはじめました。その姿を追って、懐中電灯の光が、それから、明智探偵のピストルの筒口が、じりじりと、せまっていきます。
 十歩、二十歩、賊は洞くつの岩はだにそって、カニのように、横に歩いていきましたが、ふと気がつくと、その懐中電灯に照らされた、老人の顔が、なぜか、ニヤニヤと、きみ悪く笑っているではありませんか。
 おや、これはどうしたというのでしょう。ピストルをつきつけられて、絶体絶命の怪盗が、さもおかしそうに笑いだしたのです。
 それを見ますと、明智探偵も少年たちも、ハッとして立ちすくんでしまいました。二十面相がこんな笑い方をするからには何かわながあるのです。ゆだんできません。
 立ちすくんで、じっと目をこらしているうちに、おお、あれはいったいなんでしょう。二十面相のうしろのやみの中から、ぼんやりと、何か大きな物があらわれてきたではありませんか。
 明智探偵には、その奇怪な物の姿が、きゅうにはなんともけんとうがつきませんでしたが、少年たちは一目でそれを見わけることができました。コウモリです。あのいやらしい大コウモリです。人間ほどの大きさの怪獣が二ひきも、化け物のように姿をあらわしたのです。
「先生、あれは人間です。人間がコウモリに化けているのです。」小林君が、明智探偵の手首をにぎってささやきました。と、そのときです。探偵たちのうしろの暗やみから、
「アッ。」というするどいさけび声が聞こえてきました。その声のちょうしが、どうやら最年少の羽柴壮二君らしいのです。
 明智探偵と小林君は、ギョッとして、声のしたほうをふりむき、懐中電灯をさしむけました。
 すると、どうでしょう。その電灯の光の中に、ゾーッとはだ寒くなるような、おそろしい光景がうきあがったではありませんか。コウモリは正面の二ひきだけではなかったのです。そこにも一ぴき、大コウモリが、あとあしで立ちあがって、羽柴少年を手もとに引きよせ、そのひたいにピストルの筒口をあてて、今にも引き金をひこうと身がまえていたのです。
 いや、そればかりではありません。その大コウモリのうしろのやみに、まだ二ひきの怪物がぼんやりと見えています。前後あわせて五ひきのお化けコウモリです。しかも、それらの怪物が、みな一ちょうずつのピストルを前あしの指にはさんで、明智探偵や少年たちに、ねらいをさだめているのです。
 コウモリがピストルを持つなんて、なんだかおかしい話ですが、それらの大コウモリは、みな二十面相の部下の人間が変装しているのですから、ピストルのねらいをさだめたところで、少しもふしぎではありません。
「ワハハハ……。」とつぜん、二十面相がたまりかねたように、笑いだしました。すると、その声が洞くつにこだまして、あちらからも、こちらからも、ぶきみな笑い声が聞こえてくるのです。
 いや、こだまばかりではありません。五ひきの大コウモリが、声をそろえて笑っているのです。あのいやらしいまっかな口をひらいて、白い牙のような歯をむきだして、げらげらと笑っているのです。
「おい、探偵先生、おどろいたかい。ワハハハ……、おれがたったひとりぼっちだと思っていたのかね。きみたちのような大敵を相手に、いざというときの用意をしておかなかったとでも思っているのかね。さあ、そのピストルと懐中電灯をこちらへわたしたまえ。え、いやかね。ハハハ……、まさかいやとはいうまい。あの子どもの命と引きかえだからね。さあ、わたせ。わたさなきゃ、おれのあいず一つで、あの子どものひたいに穴があくんだぞ。」
 あの子どもとは、いうまでもなく、一ぴきの大コウモリにおさえつけられた羽柴壮二君のことです。いくらくやしいといって、羽柴君がうち殺されるのを見殺しにするわけにはいきません。明智探偵はさもざんねんそうに、無言のままピストルを賊にわたしました。小林君も、それにならって、懐中電灯を賊のほうへさしだしたのです。
 二十面相は、ピストルと懐中電灯を受けとりますと、またげらげらと笑いだしました。
「ワハハハ……、探偵さん、二十面相の腕まえがわかったかね。じゃあきみたちはそこでゆっくり考えるがいい。一月でも二月でも、一年でも二年でも、ウフフフ……。」といったかと思うと、パッと懐中電灯を消して、そのままどこかへ立ちさっていくようすです。
 あとにはただ、目がつぶれてでもしまったような、真のやみがあるばかりでした。そのまっくらやみの中に、バサバサと大きな鳥の羽ばたくような物音が聞こえるのは、あのぶきみな五ひきの大コウモリが、やはりどこかへ立ちさっていく物音にちがいありません。
 少年たちが持っていた三個の懐中電灯は、とっくに、賊のために取りあげられていましたし、今また明智探偵の懐中電灯もわたしてしまったのですから、探偵と十一人の少年は、もうおたがいの顔を見る望みさえなく、ただ手さぐりでやみの中をはいまわるほかはないのでした。光があってさえ、まよいやすいこの迷路を、目のふじゆうな人のような手さぐりで、どうして遠い入り口までたどりつくことができましょう。いや、たとえそれができるとしたところで、途中には板の橋をとりさられた大穴が、みんなを一のみにしようと口をあけているのです。
 ああ、日本一の名探偵も名少年助手小林芳雄君も、それから、十人の勇敢な少年探偵団員も、このおそろしい鍾乳洞の奥に生きうめになってしまう運命なのでしょうか。暗やみの中で手を取りあいながら、飢え死にをしなければならないのでしょうか。

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