日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日语随笔集 » 正文

「ゆりかごごっこ」

时间: 2017-07-27    进入日语论坛
核心提示: さくらさくら やよいのそらは みわたすかぎり かすみかくもか あの日のことを、八十年経(た)った今も、鮮明に思い出す。
(单词翻译:双击或拖选)
 さくらさくら
 やよいのそらは
 みわたすかぎり
 かすみかくもか
 あの日のことを、八十年経(た)った今も、鮮明に思い出す。大きな農家の庭先で、私たちは「ゆりかごごっこ」をしていた。年長のふたりが向かい合って両手をつなぎ、そこに小さな子を乗せて、「さくらさくら」の歌に合わせて揺らす、という遊びである。
 私の番がきて、その手の上に腰掛けようとしたとき、そこの家のおばさんが、ガラッと戸を開けて外に出てきた。そして「こら、やめろ。その子を乗せるな」と言う。「どうして?」と怪訝(けげん)な顔をする子どもたちに、「そいつはごけのこっこだからよ」と言った。
 ごけのこっこ、って何のことだろう。三歳の私が初めて耳にする言葉だった。家に帰ったら聞いてみよう。私は忘れないように「ごけのこっこ、ごけのこっこ」と、歌うように呟(つぶや)きながら、家に続く坂道をのぼった。
 私の母は五人の子のいる父のところへ嫁ぎ、そして私が生まれた。後家(当時は「後妻」を、このように言うのが一般的だった)の子として生まれたということが、私のその後の人生に、ついて回った。
 小学校に上がると、いじめが始まった。下校時に、笹藪(ささやぶ)に隠れて待ち伏せし、石をぶつける子たちがいた。冬はそれがぎっちりと握った雪玉に代わった。姉のお古を着て学校に行くと、後家の子だから汚いと言い、たまに新しいものを着ていくと、後家の子のくせに生意気だ、と髪を引っ張った。
 私がいじめられたのは、単に母が後妻であるという理由からだけではなかったかもしれない。母は激しい性格の人であった。少しでも口ごたえをすると、そばにある物-茶碗(わん)でも火箸でも包丁でさえも-が飛んでくるので、履物をはく間もなく、裸足で外へ逃げなければならなかった。火傷(やけど)しそうな真夏の土の熱さも、痛みにも似た雪の冷たさも、私の足裏が覚えている。
 母の激しさは家の外にも向かっていた。周りに合わせず、感情のままにものを言うので、近所との諍(いさか)いも多かったようである。
 そのような母を私は、恥ずかしく思い、反発し、憎みさえした。母がそんな人間だから、私はこんな目に遭うのだと。私は母を反面教師とし、「ごけのこっこ」と呼ばれる悔しさをバネに、生きてきたように思う。
 母への見方が変わったのは、母が九十歳を超えた頃だった。施設の庭を母の車椅子を押しながら歩いていた。庭の隅の数本の桜の木々が、絶え間なく花びらを散らしていた。木の下に車椅子を止めて、今来た方を見ると、散り敷いた花びらの上に、車の跡が二本くっきりと沈んで見えた。なんだか交じり合わなかった私たちの人生のようだと苦笑しかけたそのとき、思い出したのだ。
 小学三年生の春だった。学校帰りの道で、突然男の子たちに取り囲まれ、押さえつけられた。怖くて悲しくてあーんと泣いた私の口に、道に落ちていた乾いた馬の糞(ふん)を入れて、「ごけのこっこ、やーい」とはやし立てながら逃げていった。村の財産家の息子が、お菓子や飴(あめ)で言うことを聞く子分たちに命じて、やった仕業であった。
 ゲーゲー吐きながら泣いている私を見て父は、かわいそうにと涙をこぼした。母は、いくら何でも許せない、と言って、私の手を引いてその子の家に怒鳴りこんだが、「子供のけんかに親が出てくるなんて、みっともない」と嗤(わら)われ、相手にされなかった。私たち母子は、手をつなぎ、しょんぼりと家に帰った。
 一つ思い出すと、また一つ、と母が私のために憤ってくれた場面が浮かんできた。
 それまで私は、早くに亡くなった父の優しさだけを懐かしみ、徹底して母を認めなかった。母は乱暴でがさつでおおよそ母性的な人とは思えなかった。しかしあの日私の手を引いて、身分違いの家の主人に立ち向かわせたものは、子どもを守ろうという母性でなくて何であろうか。
 若くしてたくさんの子どもたちを育てなければならなかった母は、ゆりかごを揺らすようにゆったりとおだやかに、子どもに接することができず、不器用に激しく揺さぶり続けていたのかもしれない。
 母は風に流れる桜を見ていた。私はなぜか泣きたいような気持ちになっている自分に戸惑い、再び車椅子を押して、歩き始めた。
 それから五年後、母は亡くなった。炎がふっと消えるように、実に静かに。あの激しかった母の最期とは思えぬほどに。
 今私は、「ゆりかごごっこ」のゆりかごに乗れなかった三歳の私に、言ってあげたい気がする。ごけのこっこ、でいいじゃないの。あなたのおかあさんは、不器用だけれどもたしかにあなたを愛していたのよ、と。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%