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「のんべぇたちの攻防」

时间: 2017-07-27    进入日语论坛
核心提示: 町内の公民館で定例の会合が持たれた日の午後、会も終わり腰を浮かしかけたときだった。役員の一人が数本の四合瓶を抱え、 「
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  町内の公民館で定例の会合が持たれた日の午後、会も終わり腰を浮かしかけたときだった。役員の一人が数本の四合瓶を抱え、
 「良かったら、少し味見でもいかがです?」
 と、誘っている。「どぶろく」だった。遠野特区で買い求めてきたとのこと。
 そうと決まると、いける口の数人で手際よく机と椅子が片づけられ、畳敷きの床に思い思いの車座ができた。居並ぶ8人ほどの面々が見つめる中、乳白色を帯びた液体がトクトクと音を立てそれぞれのぐいのみに注がれていく。
 ふわっと、柔らかなアルコールを含む香りが辺りを包んでいった。口に含むと思いのほか甘い。が、キュッとした喉ごしがあらためて酒であることを実感する。どぶろくってこんなに奥深い味だったのかと意外な気がした。
 舌の先から、いつも一緒だった祖父と幼い日の私がふいに浮かんできた。
 子どものころ、育った地域では清酒に対しどぶろくのことを濁酒(だくしゅ)と名付けていた。
 昔から今に至っても、密造酒は御禁制となっている。20年代初めのころ、冠婚葬祭や特別な晴れの日のもてなしには表向き清酒が供されたが、部落の寄り合いや晩酌はもっぱら自家用のどぶろくだった。禁止となっていても清酒は高額で、日々の癒やしにはならなかった。
 そのころのどぶろくは度数もかなり低く、造り手によってはあまりにも雑味で、濁酒も売買さえしなければ案外大目に見てもらっていたらしい。だが法は法であった。時々、お上の通達で役人が村々を回り、密造酒を取り締まり現物を没収し、厳しい叱責(しっせき)があったと聞く。酒税務が来ると、静かな村は一変した。
 「シュゼム(酒税務)来たずョ」
 「シュゼムにめっけられで、もっていがれですまったんだど」
 田植えを前にしてよく晴れた日、祖父が恐れていた酒税務がついにわが家にやってきた。私はまだ学校に上がる前、5歳前後だった。
 役人は祖父を従え、家の中から外へとどぶろくを探しまわる。家族は息をひそめ遠巻きに見守っていた。
 最後に牛舎の前にきた。小屋の隅にわらを束ねて作った小盛りに役人の目が留まる。中のどぶろくが今まさに熟成の時をむかえていた。辺りは牛舎の匂いと、酒の香りが満ちている。中に親子の牛がいた。干し草を伸べると長いまつげの下から、うるんだ黒い瞳で私の手をなめていくおとなしい牛だった。
 造り手の祖父も観念していたらしい。その時だった。2頭の牛はいつにない祖父のようすに何かを察したのだろう、親子は白目をむき角をふり立て役人を威嚇(いかく)していった。結局役人は牛が恐ろしく、没収をあきらめ、
 「今度は見逃すが、ほどほどにしてくれ…」
 と、立ち去っていった。じいさんは危機一髪で牛に救われた。
 互いの失敗談を披露しながら、造り手もやめるどころかあの手この手の仕込み場所も考えた。仕上がりの味にも競っていた節があった。
 近所に遊び仲間のA子がいた。A子のバアチャンの造る酒は、殊のほかうまいとの評判らしかった。なんでも連れ合いのジイチャンが出稼ぎ先の蔵元で手に入れる一握りの「塊っこ」がうま味を醸し出しているらしい。蔵元の酵母菌がうま味のもとかもと、うわさだった。
 その日もA子の家でカクレンボに興じていた。天井が高く薄暗い納屋は隠れる場所に事欠かない、ひんやり湿り気を帯びた土間には使われていない農具や、脱穀を済ませた稲わらが積み上げられていた。隅にひときわ大きな丸いおけが伏せてあり、その裏側に三角のスペースがあった。急いでもぐり込もうとした時、ヒンヤリとした先客がいた。一升瓶に入ったどぶろくだった。
 酒税務をいかに撃退させたか。とか、絶対見つからないと思ったのに。とか、悔し紛れの憂さ晴らしの酒盛りは盛りあがっていく。
 祖父のオハコは、いつも例の牛小屋の件だ。巧みな話術もみがきがかかり、落ちが分かっていてもまるで古典落語のように皆は笑いこけた。時々、小声で話すところをみると、子ども心に「本当は悪いことなのだ」とうすうす分かりかけていた。大人たちが思うほど鈍感ではなかった。
 「やっぱり、特区のはうまさもちがうナハン」
 度数も味も今風になっていた。
 近所のじいさんたちは、いろり端に陣取り時折の煙に目をしばたたかせ、トロリとした白いお酒に目を細めていた。
 私は、祖父の傍らで時々はぜる薪のパチパチという音と揺らぐ炎を見つめていた。薪をつぎ足す父、鍋を気にかけ立ち回る祖母と母。吸い寄せられて、見飽きることはなかった。
 どぶろくにまつわる懐かしい人たちは、優しい情景を伴い淡い水彩画のように次々と浮かんでは消えていく。
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