そう思い続けていた青春時代。外面のいい父は、家では些細なことで母を怒鳴り散らす半面、外では年上の女性に可愛がられる性格だった。母が人前でけなされる姿を許せず、男性コンプレックスから結婚コンプレックスにつながっていった気がする。
しかし、歳月を経て、気づけば自分も結婚し、2児の母に。そして、夫はうつ病に。病気のせいか、些細なことで怒り、感情のコントロールができなくなる。物を壊す。
「何だか父さんと似てる。同じような人と結婚したね。」と母と話したものだ。そして、父は夫のそんな姿をみて、「まったくあいつはしょうがないな。」と、怒っていた。
時を同じくして、父はがんを発症。肺から転移してがん性髄膜症に。薬が効かなければ余命2-3カ月と診断された。脳に影響するので、ぼけてしまう可能性が高いとも。
見舞った病室で、父がぽつりと言った。
「うつ病っていうのは、神経の病気だろ。気持ちが自分の思うようにならないんだよな。自分が病気になってみてわかるけど、かわいそうだな。今までつらく当たって悪いことしたな。」
その時から、何だか父に対するわだかまり
がすっと消えていった。
幸い、まだ抗がん剤が効いてくれているが、副作用に苦しむ様子は見るに忍びない。残り少ないであろう、共に過ごせる時間を大切にし、親孝行したい。
「結婚なんて絶対しない。」と思っていた私も、今では「子ども達は宝物。結婚してよかった。」と思っている。照れくさくてなかなか言えないけれど、近々ちゃんと、「父さん、ありがとう。」って言いたい。
神様、私たち親子に最後の時間を与えてくださって、ありがとうございます。