それは、「にゃんここ」。今年中学生になった次男が幼い頃使っていた言葉なのだが、「ネコ」のことでも、「なんのこと?」がうまく言えなかったわけでもない。
実は、お母さんのこと(私の妻のこと)を、「にゃんここ」と呼んでいたのだ。おなかが空いた時も、何かを見つけた時も、スーパーヒーローを呼び出すように「にゃんここ」とお母さん(私の妻)を呼んでいた。何年か前、小学生になった次男に聞いてみたら、予想通り全く覚えていなかった。
どうして「にゃんここ」? 私はこの謎を時々思い出し、時々楽しいモヤモヤを抱えて日々を過ごした。
子供は大人をまねしながら言葉を覚える。それがうまく言えないから楽しい。例えば、エレベーターを「えべれーたー」と言ったり(エレベーターでエベレストを昇る人みたいだ)、「電子レンジ」を「でんちでんち」と言ったり(乾電池で動いていると思っているのかも)、楽しい言葉に変換してくれる。
妻の名前は「かず子」。語尾は合っているが、「かず子」と「にゃんここ」では違い過ぎる。「にゃんここ」に似た言葉で妻を呼んだこともない。では、どうして「にゃんここ」?
そんな時、ふと頭に浮かんだことがある。そういえば、妻のお母さん(おばあちゃん)は、妻のことを「ねえ、かず子」や「なに、かず子」と、必ず頭に何かの言葉をくっつけて呼んでいた。これが「にゃんここ」になったのなら…。あくまで想像だから違うかもしれないが、この発見に、モヤモヤが多少晴れ、晴天とはいかないが、時々晴れくらいにはなった。
何はともあれ、子供が持っている特殊な言語変換装置は、私達大人をとても幸せな気分にしてくれる。