コマ回し・二重跳び・竹馬・逆上り・クロール。娘は、これまでに多くの壁をクリアした。スポ根番組育ちの昭和型父親のコーチングのもとで。自ら手本を示す→もがいていると「頑張れば出来る」「努力だ」と叱咤激励の嵐→娘の半べそ。この過程は必須である。そして、次なる壁は『一輪車』だった。私の子供の頃は無かった。手本も示せない。それでも、練習法やコツを調べ、さも偉そうにコーチング。あきまりの叱咤激励の嵐と半べそ。黙々と取り組む娘は、この壁もクリアした。多くの日々を費やしただけに、喜びはひとしおだ。もちろん私も。
「よくやった!諦めずに頑張っていたもんな。お父ちゃんの言うとおりだろ。」
「うん。」
感動の結末である。しかし、続きがあった。
「お父ちゃんも、やってみて。努力すれば、出来るよ。」
「エッ!」
毎日5分の努力と継続の日々が始った。昭和型父親なので、『血と汗と涙の取り組み』は、あえて伏す。2カ月が経過し、公園の子供たちが興味を示さなくなった頃である。"ふわっ"と全身にきた。"スゥ~"
「やった!」
この感覚は、あの頃のものだ。娘と同じ感覚を共有したのだ。親としての姿勢を示すことが出来たと1人ゴチになり、美酒に酔う。
「今度は、親子で大技、メリーゴーランド」
数カ月後、娘は器楽部に入部し、アコーディオンと格闘することになる。これには、鬼コーチの出番は無い。これ以降もだろう。この壁は、異なる意味で越えるべき壁だったに違いない。子は、1まわり成長した分、親との距離は、2まわりも離れていくように感ずる。しかし、どこまでも伸びてゆき、決してちぎれることのない、見えない糸を紡いでいきたい。