通過するだけで満足していた
小さな駅で
何か買いたいと思い始めた
もう訪れることはないかもしれない
目立たない駅だ
日向の匂いのする駅舎に
カレンダーが掛かっていた
形のない三十日を
未整理のまま
積み上げてきた悔恨
破り捨てられた一枚を
裏返しにすると
ただの
白い紙だろうか
途切れた感覚をつなぎ
言葉を探して
空洞を埋めようとしても
褪せかけた私の身体に
発車をつげるベルが
微熱のように
広がっていく
ああ 買う時間がない
これでいい
これで充分なのか