生き急いできた
一筋の組み紐がある
ほぐしてみれば
霞網にかかった鳥の
羽音のような焦燥を
からませた
女がいたのだ
喜怒哀楽の糸の重なりに
心をさまよわせ
奪い得られぬものを
求めている
暦数十冊
いくつもの「きのう」が
単なる通路でしかなかったという
乾いた事実
足を踏み入れると
誰も彼もが
乱暴に肩を押していく
理由も言い訳も
後悔も切なさも
置き忘れて歩き続ける
夥しい人の群れ
精神に目眩を起こしそうで
呼吸を深くしても
この残照を愛する時は
たぶん もう 来ない
端折った後
残りわずかな朱の紐から
余滴を沸騰させる
獣になりたい