幼ない日、悲しかった時、悔しかった時、
走って行き、エプロンに顔を埋めて、
思い切り泣けば、それでよかった。
白い大きなエプロン姿は、
探せば、いつも家のどこかにあった。
朝早くから、夜遅くまで
白いエプロンは動いていた。
今、悲しくなった時、いくら探しても、
もう、あの白いエプロンは、どこにも無い。
顔を埋めて、泣くだけでいい。
唯、それだけでいい。
でも、あの白い大きなエプロンはもう無い。
涙ぐむ目に、はるかかなたの空に、
あの、白いエプロンが浮ぶ。
幼ない日の、あの母の、
白い大きなエプロンがほしい。