蝉のエネルギーが
ミクロの振動をマクロの声に変えて
電気ドリルの荒さ、速さで
私の深部に迫ってくる
羽毛のないひな鳥の無邪気さで
すべてをさらけだしていた頃
後ろを向くと人差し指があった
アセチレンガスの匂う
人の途絶えた夜店で
薄手の仮面を買った
標的を失った人差し指は
磁石の針のように
しばらく揺れていた
仮面は買い換えるたびに
だんだん厚くなっていった
油蝉が鳴く
わたしの深部にどんどん迫ってくる
貫かれた身の奥から
悲鳴のような声が聞こえてきた
仮面を取ってください
息苦しいです
始めて聞く声だ
一気に仮面をはぎ取った
いつか芝居小屋で見た
自己を喪失して
おじぎをくり返す
紫のちゃんちゃんこを着た
猿の顔があらわれた