4メートル20のバーを
どよめき?歓声?拍手
初夏の風が吹き抜ける
陸上競技場の空に
しなやかで強靭な
君の肉体が舞う
高校総体棒高跳びの部
すでに優勝の決まった君が
自己の記録へ挑戦するという
アナウンスが 何度も何度も
広い競技場に響き渡る
しかし
君は顔色ひとつ変えず
ただ前方のバーを見るのみ
4メートル30の未来
音のない世界に生きる君に
私の声援は届かないかもしれないが
この祈りだけは届いてほしい
こつこつと積み上げてきた
修練という名のポールを握り
いじらしいまでに真摯な姿勢で
君は跳び続けるのだ
明日に向かって
まっすぐにバーを睨み
今まさに駆け出さんとす
岡山聾学校陸上部の
若きエースジャンパーよ
君なら超えられるだろう
4メートル30の未来も
その先に広がる
可能性という名の将来も