明るい影ばかりを歩いていると
ふっと
さびしい影に
呼び止められることがある
振り向いて誰がいるわけでもなく
わたしは
コップの中の氷片のように
途方に暮れる
今は
ふつふつと
乳房が漲ってくる
なまめいた賑いの季節ではなかったか
けれど
この静けさはどうだ
このさびしさはどうだ
体内に
ゆっくりと充ちてきたものが
まひるまの五月の
敬虔な祈りだとしたら
長い間抱え込んできた
嫌悪や後悔や
憎しみでさえも
その静けさが
掬い取ってくれるだろうか
樹々が吹き上げる焔は
皮膚を
静脈を
心を
緑に変えていく
しんしんと ただ しんしんと