誰かがもたれる一本の木
だったこともある
誰かのための優しい雨滴
だったこともある
けれど
もう
床擦れを起こしたような言葉しか
手元になくて
木にも雨にも
なれそうにない
刻々と
酸化し窯変していく体と
背を丸めた心で
たった一枚の葉を
鮮烈に
赤く燃やすことが
こんなにも難しいことだったのか
菱形の寂しさが
コツコツと
胸の壁にあたる
せめて
一日が落ちて行く音を
花芯で捉えて
きのうまでの灰汁を
濾過してみるのだ
まといつくものを脱いでも
女には還れない
という罪だけが
残った
怯えることはない
わたしは罪を抱き
あなたはわたしを抱いて
薔薇のように
腐っていきたい